第2話

「ウィンドボール」


あれから早くも2週間が経ち、威力はまだまだお粗末ではあるものの長々とした詠唱無しでウィンドボールが使えるまで成長した。

今日も早朝から鍛錬に励んでいる。


「だいぶ体に馴染んできたみたいだな」


誰でも使える超簡単魔術とはいえど、魔術の才能が無い自分がここまで簡単に扱えるようになることに違和感を覚えているというか、なんだか現実味がないな...


「さて、そろそろ剣の強化に移っていこうか」


「お、ついに!?」


最初は乗り気じゃなかったものの、こうも簡単にウィンドボールを使いこなせるようになってしまえば、調子にのってしまう。

僕でも出来るんじゃないか、と脳が錯覚を起こすのだ。


「筆記試験に向けた勉強もしているようだし、ある程度は分かっているだろうが改めてやり方を説明する」


いくら勉強したとはいえ、いざ実践となればやっぱり出来る人の口から直接教えてもらった方がいいからね。


「基本的な流れ・仕組みとしては、剣を握った状態で剣に魔力を流し、属性を付与する。通常、炎に適性があるものは炎剣、氷の適性があるものは氷剣へと変化させるのが基本だ。」


そう、実は名前のついた魔法を発動させなくても、魔力に属性を纏わせて攻撃、みたいな事が出来たりする。

それを応用したのがこの剣の強化だ。

ちなみに僕は当然のように魔力を物や人に流し込むなんてことは出来...ない。


「ラタの場合は風剣だな」


まあそりゃそうだろう。ウィンドボールしか使えないんだし。

本当は雷剣とか使ってみたかった...なんてのは言わないでおく


「剣に魔力を流し込む前に、まずは体内の魔力の流れを感じる所からだな」


魔力の流れを感じろ!みたいなの、よくあるよね。魔力を自分以外の物に流すわけだから、当然自分の魔力を感じてコントロールすることが重要らしい。


「魔力の流れを感じるって言ったって、具体的にどうすればいいの?」


魔術の才能がある人達は生まれながらに何となくそういうのが分かるらしいが、僕はからっきしだ。


「そうだな、俺が少しラタに魔力を流す。体内に入ってくる感覚が分かるだろうから、そこから少しずつ流れを掴め。」


「な、なるほど」


僕の体に魔力を流すってのは理解出来たけど、そこから少しずつ流れを掴め、なんて言われたって全然分からないんですけど...?


「それじゃ、手を出してくれ」


「はい」


僕の手の上に父さんが手のひらを重ねると、大きな光と共に魔力が...なんてことはないけど、確かに魔力が手のひらを通じて体全体に行き渡るのがよくわかる。

なんだかむずむずするような、くすぐったいような、でも不快感はない、そんな感じだ。


「体に流れていく感覚が何となく掴めた気がする。くすぐったいね、これ」


「ああ、魔力の性質や相性によっては、流されると激痛を感じることもある」


「ひえっ」


な、なにそれ

魔力を流すだけで相手を倒せるような化け物も存在すると...?


「魔力の流れが掴めたら、それをコントロール出来るようになる必要がある。そうだな、魔力を自分の手のひらに向かって流すよう、意識するんだ」


「わかった、やってみる」


とは言ったものの、よくわからないな

確かに魔力の流れを感じることには成功したが、だからといってコントロール出来るかどうかはまた別の話である。


「上手くいかないか?」


「うーん、手のひらに向かって流すイメージがいまいち...」


「ウィンドボールを使う時のことを思い出せ、発動させるのをウィンドボールから魔力に置き換えるようなイメージだ」


ウィンドボールから魔力に置き換えるようなイメージ...

お?なんだか分かってきた気がする

手に向かったかどうかは分からないが、何となく魔力の流れが変わったような、そんな感じ。

後はこれをどうにか手に集中させるように...


「できた!」


ウィンドボールを意識しながらやってみた結果、右手に魔力が集中しているのが分かった。

にしても凄いな、これ


「よし。そこまで出来たら後は魔力のアウトプットだが、手のひらに集中させられたなら簡単に出来るだろう。さあ、剣を手に取って、魔力を流してみろ」


剣を握り、魔力を手から剣に流すよう意識する。

お、これはさっきより簡単かもしれない、少しずつ手から魔力が抜けていってるのが分かる。

そうすると、剣が薄く光り出した。強い魔術師が魔力を流すともっと強そうに光るんだろうけど、僕だとこれが限界っぽいな。


「順調みたいだな」


「こっちはさっきより簡単かも」


「魔力を流せたら今度は属性付与だ、ウィンドボール発動と同じように風を操れば、自然と魔力に属性が付与される、やってみろ」


ウィンドボール発動と同じ感覚で、風を発生させるよう僕の魔術(笑)を使うと、少しづつ剣の周りに風のオーラのようなものが出てくるのが分かった。


「できたああああ!!!」


「良くやった、ラタ。ここまで出来れば上出来だ。もっと早く教えていた方が良かったかもしれないな」


「早速試し斬りしてもいい!?」


「ああ、好きなだけ斬ってこい」


「うん、行ってくる!」


父さんに許可を取って、的が並んでいる所まで足をやると、早速斬りかかる。


「!?」


凄い、普通の剣と全然違う。

切れ味が格段に上がっているのはもちろんのこと、風属性の剣ということもあってか、振るスピードも上昇している気がする。

これなら刃こぼれすることもなさそうだ。

僕の強化でこれなんだ、父さんみたいに強い魔術師がこれをやったらとんでもないことになるんだろうな...

父さんが僕に稽古をつけくれる時はただの木刀を使うので、僕は父さんの強化した剣がどんなものかを未だに見たことがない。

いつか見てみたいなあ...


そんなことを考えながら、次々と的を斬っていく。しばらく試し斬りを続けていると...


「やっほーラタ!今日も頑張ってるわね...って、それもしかして魔術剣!?使えるようになったの?」


この声は...


「おはよう、エリナ。あくまで僕の魔力だから、他のに比べるとまだまだだけどね」


声をかけてきたのは、幼なじみのエリナ・アクアエルだった。








お読み頂きありがとうございます!今回訓練描写を簡単に書いてみて、今後戦闘描写を上手く書ける気がせず絶望してます🙂






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