SS2「スペックで人を見ないでください」

「……志望理由を、お願いします」


なんかもう、どうでもいいけど面談っぽいことは聞いておこうと思った。

テンプレなろう系を拗らせすぎた“勇者様”だろうが、ここは一応、一次面談会場だ。


「この魂が次なるステージを欲しているのだ。“強さ”では届かない領域──その先に、私は行かねばならない」


「はい、意識だけが先行してるパターンきた」


「私が持つ力……この全能に近い能力は、次元そのものを穿つ。ゆえに、選ばれし者として──」


「中略していいですか?」


「許可する」


偉そうに言いやがって。

何様だ。

消滅さすぞ。


「……ちなみに、今までどんな世界で活動してたんです?」


「一つ目の世界では、スライムを数百年かけて討伐し、絶大な力を得て村を救った。二つ目では、影の実力者となり、世界を覆う闇から払った。 三つ目では、魔王の娘と婚約した──」


「婚約したんだ……」


「四つ目では、女神と魂を融合し、世界を司るユグドラシルと同化した」


「お前、木のままでいろよ」


つっこんでから、私は小声でMiNaに確認する。


「ねえ、これって……面談対象として、有効?」


「表面上は“個人”ですが、データ構造は集合意識に近いですね。一人の人格としてカウントできるギリギリのラインです。おそらく、数多のなろう系作家の魂が融合してできた変異体ですね。どちらかと言うと怨念です」


うわー、めんどくさ。


MiNaが魂ログをスクロールしながら、淡々と情報を読み上げていく。


「ステータスオール+999、スキル無限所持、思考速度:光速、好感度固定化、魅了・洗脳・誘惑・嫉妬無効……」


「ていうかさ、これもう……採用してどうすんの?」


「採用したら世界が“そっち基準”に変わりますね」


「だめじゃん」


「はい」


 私は彼に向き直る。


「……じゃあ、質問変えます。“あなた”が、その異世界で何をしたいのか。答えられます?」


彼は少しだけ、間を置いて言った。


「“まだ見ぬ自分との対話”──です」


「スピかよ」


はい、来ました。

フェーズ入りました。

こじらせ主人公、転生4回目にしてようやく“内面”に向き合い始める。

誰か書いて供養してやってくれよ。


MiNaがポンと一言。


「この人、そろそろカウンセリングのほうが合ってますね」


「それ」


にしても、彼がユグドラシルになった世界はどうなったんだろう。

ここにいるってことは、滅びてるよね?

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