一目ぼれした相手が次に会ったらもう一人増えてました。
みそとんこつみたいな人
プロローグ
ある春
俺は恋に落ちた。
桜がきれいに咲き、ちらほら見える新入生たちが着慣れていない制服を着て、意気揚々としながらもどこかぎこちなく歩いている。
「はぁー」
そんな中今年から高2になる俺、白石直人(しらいしなおと)は肩をガックシ落としてだらだらと歩いていた。
何が新学年だ、何が入学だ、学校の何がいいんだよ。
俺はいかにも不快そうな顔で歩道を歩く。
俺は満開の桜なんて眼中にない。
ただのいつもよりうるさいだけの歩道ってだけ。
俺があくびをしながら早く行こうとすると
「あのっ」
後ろから誰かの声が聞こえた。
俺が振り向くとそこには
美しい女性がいた。
髪型は長く肩にかかっており、すらっとした鼻にぷっくらとした唇。誰がどう見ても美人だ。
多分そこらの女優と肩並べれるぐらい。
制服を見た感じ新しいし一年生だろうか。
風になびく髪が俺にはスローモーションに見える。
それと同時ににっこりと笑みを浮かべた彼女はまるで天使のようだった。
俺は思った。
これが運命ってやつか…
その瞬間世界が急に明るくなり、桜の花がひらひらとまぶしいぐらいに落ち、人ごみにまぎれた新しい制服のにおいなど初々しい感じがした。
「では私はここで」
彼女は先に歩き出し、ぼーっとしていた俺の横を過ぎさりまるで桜のようないいにおいを残していく。
俺はしばらく周りの目なんか気にしていないように立ちつくしていた。
ようやく歩き始めてもしばらくずっと感じたことのないものに浸っていた。
*
俺は教室に入ってからも空に張り付く雲たちを眺めていた。
「運命…」
俺は周りに聞こえないようぼそっと言う。
俺はあの人と出会ったことで世界がまるっきし変化していた。
生きる希望が生まれたような気さえした。
しかそんな熱もホームルームも近づいてきて生徒がどんどんと教室に入ってくる頃には冷めていた。
よく考えたら俺とあの人が付き合えるわけなかった。
それは彼女が高1であるということ。
この学校はあまり学年同士でつながる機会はないし基本的に部活動の後輩ぐらいとしかかかわらない。
まあでもクラスの中心的存在な奴らは必然的に後輩が寄ってくるけどね。
とりあえず死ね。
まあそもそもこんな陽キャを恨んでるような典型的な陰キャがあの子と…なんて無理だろう。
「ハァ」
俺は大きくため息をする。
よく考えたらハンカチ拾ってもらっただけだし相手も覚えてなさそう…
俺はどんどん希望を失ってしまう。
心なしか世界もまた暗くなってきた。
そんなふうに俺が一人で勝手にふてくされていると
ガラララッ
「始めるぞー」
先生が入ってきた。
俺は「もうHRの時間かー」とか呑気に思っていた。
が
そのとき
ガタイのいい先生がドアから入ってくるその後ろに
”ちらっと見える一人の女性”
廊下でばれないように立っていたが俺の席からはよく見えた。
俺は息をのむ。
「え…」
やがて先生が黒板の前まで行くとともに俺はそれが誰だかわかった。
なんと、さっき俺の恋した彼女だった。
転校生だったのだ。
しかも俺のクラス。
「まじで?」
おれは小声でそういう。
「運命じゃん…」
俺はまた人生が輝き始めた。
先生が転校生がどうのこうの話していたが俺はさっぱり聞いていなかった。
「どうしよう」「まずは話しかけるところからだよな」「いい感じになったら告白して…」
「ベストカップル成立」
さっきまでのネガティブさが嘘かのように俺は頭の中で理想像を思い描いていた。
今日ちょっと情緒不安定化もしれない。
しかしまた俺の情緒は揺らぐ
先生に入っていいいぞと言われた彼女は、
カツカツと入ってくる。
入ってきた瞬間クラスは「おぉ」といった雰囲気になる。
まあこんだけの美少女が来たんだしな。
すると、
そんな彼女の後ろからもう一人影があった。
もう一人いるのだろうか
その瞬間もう一人の顔をあらわになる。
なんとそれは…
またしても俺の恋した彼女であった。
俺は今度は眉間にしわを寄せる。
俺は理解が追い付かずフリーズしていた。
やがて彼女たちが前に立ち自己紹介を始める。
「えっと…北海道から転校してきました。朝比奈柚(あさひなゆず)です。」
「私も同じく北海道から来ました。朝比奈柊(あさひなしゅう)です。」
「「よろしくお願いします」」
あぁ双子か
よく考えたらわかることだがさっきの俺には到底そんな冷静に考えれるような状況ではなかった。
って双子…?
待ってさっき俺が恋に落ちたのはどっちだ?
確か髪がロングで…
二人とも一緒だ。
身長は俺より低くて…
二人とも同じ身長。
「どうしよう…どっちかわかんねえ」
多分朝のハンカチのことは相手は覚えてない。
手がかりを失った俺はどうすればいいのだろうか。
ふられるとかじゃなくてどっちか分かんないなんて…
高校二年生にして初恋を経験した俺、しかし相手が双子でした。
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