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あれから早くも4年が経ち、ある変化が起きる。


鉄雄「あ〜、ダリィ。」


記憶と身体が馴染んだのか、俺は"鉄雄"として自分を自覚した。自覚する事で以前より何かがしっくり来る様になったが、それと同時に性格も変化したらしい。ただ、今も1つ疑問に思っている事がある。


鉄雄「俺ってこんな性格だったかな?」


闇精霊「それを自分で言うってどんな気分なの?」


鉄雄「これでも色々と考えてんだよ?」


水精霊「あ!爺やさん来たよ!」


はぁ、いつもの稽古の時間だ。次期当主って事でいつも剣の稽古に読み書きの勉強をさせられている。

相手はこの家で家長をしている爺さんだ。何でも若い頃は名のある剣士だったとか。と言うか4歳に剣の稽古?正気か?勉強は・・・まぁ、まだ良い。しかし、子供に過酷な稽古。神経を疑う。


鉄雄「ではっ!ぶほっ!うおっ!うぐっ!」


吹っ飛ばされ3回のバウンドの後、しばらく地面を転がって止まる。格好良く受け身を取りたかった。しかし、俺にそんな技術は無い。今は、ただただ身体が痛い。


爺や「坊ちゃま!まだ行けます!立ちなされ!」


いやいや、地面3回バウンドした奴がどうやって平気な顔して立つんだよ?無理だって!


火精霊「その割に冷静だな。」


考えるくらい許してくれよ。だけど、このまま寝てても立ち上がるまで終わらないのが爺やのシゴキだ。仕方ないので取り敢えず立ち上がる。


爺や「さぁ、次っ!行きますぞ!」


鉄雄「いや、もう限界だよ。」


爺や「何を仰るのですか!坊ちゃま!自分の限界を自分で決めてはなりませぬ!」


鉄雄「あのさ、自分が自分で限界を見極めないで誰が調整するんだよ?」


爺や「そういう物はいずれ身体が勝手に付いて行きます。」


今、正に心の折れた俺がそんな根性論でやれる訳無いだろ?この爺さんは何を考えてるのか。

今はこうして虐待・・・じゃない、鍛錬と勉強の日々を過ごしている。とにかく今は追放に関係する精霊降ろしの儀を無事に乗り切る事を考えよう。

そんな苛烈な日々を過ごしていたある日、不意に気付いた事がある。追放のシナリオを変えたとして、その先はどうなるのだろうか?お家騒動は主人公に取って確かにメインイベントだ。しかし、物語の根幹は魑魅魍魎から人々を護るって部分の筈。


鉄雄「あれ?追放を回避すれば大丈夫だと思ってたけど、もしかして普通にこの家を継いでも駄目なのでは?」


闇精霊「え?何が?」


鉄雄「ずっと戦い続ける人生じゃない?」


火精霊「ふむ。魑魅魍魎達はこの世界に生きる人の念から出来ている。」


鉄雄「それって人間が生きている限り戦いは終わらないって事?」


水精霊「うん。」


風精霊「はい。」


闇精霊「だけどほら、鉄雄は良家のお坊ちゃんなんだから。」


水精霊「そうだね。部下達に押し付ければ?大体のお偉いさんは皆んなそうしてるよ?」


それは人としてどうなんだ?

俺は次の日、爺やに話を聞いてみた。


鉄雄「なぁ?」


爺や「どうしました?坊ちゃま?」


鉄雄「もし戦いになったら俺はどうするんだ?」


爺や「勿論、最前線で指揮をして貰います。それに攻め込まれた時には、坊ちゃま自身にも戦って戴きます。それ故の鍛錬です。」


鉄雄「・・・・・。」


思ったより事態は深刻かも知れない。終わらない戦いを続ける人生。流石にストイック過ぎる。連日の鍛錬で音を上げる俺には無理だ。


闇精霊「でも結構付いて行ってるんじゃない?」


それは"鉄雄"のポテンシャルが元々高いからだろ?


水精霊「うわぁ〜、自分で言っちゃったよ。」


鉄雄「俺に安息の日は無いのか?」


爺や「それは・・・・"いずれ"としか申せませぬ。」


闇精霊「鉄雄の安息の日は死んだ時だね。」


鉄雄「・・・・・・。」


火精霊「安心しろ!鉄雄!余程の事が無い限りお前は死なさん!」


その余程ってのは何だよ!確実じゃないなら意味が無いだろ!


風精霊「とにかく先ずは追放のシナリオを回避して、後の事はそれから考えましょう。」


重い空気に心がどうにかなりそうだが、問題を先送りする事で取り敢えずは忘れる。しかし、俺はこの後に起きる出来事でシナリオの力を知る事になる。

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