魔法少女は共闘を諦める!?
「うわー正気の沙汰じゃありませんね、あれ」
一方的
側から見ればひたすらに攻撃を仕掛けているダムドが優勢に見える。
だがダムドの高速回転するチェンソーの刃は、炎城にかすりもしない。
風圧が髪を揺らすほどの紙一重で、全て避けきり、距離を取る。
特筆すべきは、その武器の使い方か。
炎城の武器は、二丁拳銃。
ただし、本来の攻撃的な、手数を増やす意味での両手持ちではなく、消極的に、相手との距離と取るためのニ丁拳銃であった。
後ろに飛び退きながら、適当に二、三発打ち込む。狙いも何も無い、乱雑な発砲は当然のように当たらない。が、確実に近づきにくくはなっていた。
そもそも、炎城に弾を当てるだけの技量などない。
拳銃自体、そもその両手で扱う事を前提とした武器なのだ。必然、片手で扱えば反動を抑えきれず、弾丸はブレまくる。
だからこそ、炎城は銃を牽制に使っていた。
「なら!」
ダムドの姿がブレる。『変身』による肉体強化と『飛行』の魔法を応用し、即座に炎城の死角に回り込む。
その瞬間、ぐるりと炎城の右手が真後ろにいどうし、銃口がダムドに合わさった。
「!?」
即座に放たれる、
炎城はダムドの方を見ていない。それどころか、
口や顎を使い、片手だけで完璧に、装填を済ましていたのだ。
二丁使うのは、単純に手数を優先するのと、手数を途切れさせない為。
「うわ、あれえげつないですね、対空、対死角、対持久の回避特化戦闘。あれ、
勿論、欠点はある。
すでに二十近い弾丸を放っているにも関わらず、ダメージは頬のかすり傷と、
極端に低い命中率。だが、命中はしている。
ダムドにとってそれは大きな問題だった。
ポタポタと、肩口に空いた穴から鮮血が溢れる。
「やはり、対魔法少女対策としてかなり有用な戦術ですね。こういう『奪う』ダメージは」
骨をへし折る、肉をちぎる、内臓を潰す、頭蓋を割る。
そういった趣旨の攻撃は魔法少女に通じずらい。『変身』の魔法により彼女達のコスチュームと肉体は、その強度を大きく高めている。
骨は鉄骨のように、肉は針金の塊のように、内臓は厚いゴムに包まれたように、頭蓋は鉄板のように。硬く、壊れにくい。
だからこそ、魔法少女相手には、『奪う』ダメージがよく通る。
食料を、水を、酸素を、居場所を、睡眠を、奪う。
今回、ダムドが奪われているのは血液。肩から流れる血は、彼女の生命活動を僅かながらに侵していた。
『変身』の肉体強化でも、血の量は変わらない。失い続ければ気絶するし、それでも失えば死ぬ。
「はぁ、はぁ」
ダムドが奪われているのはもう一つ、体力。
勿論、『変身』の肉体強化は、単純な筋力だけの強化に留まらず、感覚器官や持久力も強化している。
だが、炎城とダムドでは戦闘スタイルがまるで違う。必要最低限の動きで攻撃を回避する炎城と、その隙を突こうと、大きく動き続けるダムドでは消費するエネルギー量がまるで違う。
肩から流れる血も、よりダムドの体力を奪う。
失血量としては5%に満たない程度。まだ、呼吸のしづらさは、『気のせい』程度だろう。だが、ここからさらに血を失い続ければ、呼吸はより苦しくなる。
一方的にダムドを追い詰める炎城の戦法であるが、弱点はもう一つある。
現在、ノリノリでバトルに参加したはずのパラメデスが、こうして商品を床に寝かせて、その周りで番をしているのは、炎城の適当射撃があまりに連携に不向きだったためである。
飛んでくるのだ、後ろから、弾丸が。
「普通に無理です」
だからこそ、パラメデスはこうして商品の警護に回っている。
パラメデスが警戒するのは、ダムドの
パラメデスには、唐突に虚空からダムドが現れたように見えた。
万が一、瞬間移動が可能な魔法をダムドが使えるなら、商品の警護に回るのは必然。
だが、そんなパラメデスの心配は杞憂に終わる。
ダムドが、別のカードをチェンソーにかざした。
「『再変身』『
手札のめくり合いは、始まったばかりだ。
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