魔女は笑う

◾️□ ◾️□ ◾️□


(ミ ツ ケ タ)


(ここが)


(ターニングポイントだ)


(介入できるのは)


(三度だけ)


(一度目は成功し、救世主は降臨した)


(二度目は、ここだ。)


(コレで、世界は書き変わる)


◾️□ ◾️□ ◾️□



「よっと、よっ、ほい!」


そんな、警戒な掛け声と共にボールが何度も宙に浮く。声の主は、二十歳ほどの女。

紫がかった黒い髪を一本のおさげにし、ビジネスカジュアルな服を着た、知的な印象を持つ顔立ちの女だった。

女は楽しそうにホールを蹴り上げ、重力に従って落ちるボールをまた蹴り上げる。女は所謂、リフティングをしていた。

額に汗を浮かべながらも、本当に楽しそうにボールを蹴る姿は、とても爽やかであった。しかし、実際に見るものが『爽やか』という印象を持つことはないだろう。

理由は三つ。

時間が夜であり、場所が人気のない深夜の学校の校庭であり、そして何よりボールがである為だ。


それはあの『最優』の魔法少女の首。


ゴロテスが取引に乱入した際に、有耶無耶になっていたもの。勿論一連の騒ぎの後に、ゴロテスや情報屋は首を探したが、何故か見つからなかった。

それが今、ここにある。

何度も何度も、女によって足蹴にされている。


「楽しそうね」


そんな女に、声をかける人影があった。


月明かりに照らされる顔は


彼女こそ『最優』の魔法少女『ハイエンド』


黒く長い髪、ハイライトのない黒い瞳。黒を基調としたセーラー服の、14歳ほどの少女。


闇から生まれたような、そんな魔法少女である。


「はじめまして、勤勉の魔女さん」

「………そっかぁ」


『勤勉の魔女』と、そう言われた女は、ピタリと生首のボールを足先で止めて、ハイエンドの方をじっと見つめ、それから納得したような声を上げた。


「なるほど、全然先の展開が霞んで見えないと思ったら、君が原因かぁ。あー、そっかそっか。その領域は、確かに私のチカラの外かぁ」

「話が早くて助かります」


すんなりと、魔女と魔法少女は通じあう。明らかに、何か認識できない理を前提として会話していた。


「なるほど、それで? 私に何か仕事を持ってきてくれたのかい? 極めて重要で、嫌になる程大変な仕事を、私にくれるんだろう?」

「えぇ、貴方にはちょっとした『事件』を起こしてもらいたいんです」

「……なんでもいいの?」

「えぇ、お好きなように」


その言葉に、魔女は三日月のような笑みを浮かべた。

同時に、グシャリと片足でホールドしていた生首を踏み潰す。目の前で自分の生首を踏み潰されたハイエンドは、変わらず無表情のまま出会った。


「さてと、じゃあこれから書き換わるねぇ」


□ □ □


「みんなー! ありがとー!」


満員のライブ会場で、マイク片手に声を張り上げる魔法少女がいた。


愛と花のアイドル魔法少女『まじかる⭐︎ショコラ』


□ □ □


「マスコットは、私たちの味方なんだろうか」


一人、疑問を抱いた魔法少女がいた。


戦争と破壊の魔法少女『ピース』


□ □ □


「魔法少女学園を断罪しよう」


魔法少女学園の罪を知った魔法少女がいた。


刃と物質の魔法少女『パレット』


□ □ □


「…………」


そして、同盟を創りし魔法少女は、沈黙を続ける。


◾️◾️と◾️◾️の魔法少女『◾️◾️◾️◾️◾️』


□ □ □


魔女は、ただ笑った。

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