第18話: フィナーレ: 作者と俳優たち。

残り30分…いや、20分――


あとわずか二十の刻(とき)で、彼女は――自我を失い、悪魔に堕ちる運命だった。



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「何とかしなきゃ……」

マーカスは囁いた。

シンボルともいうべき“ユニティ・クリスタル”の前に立つイリヤを見つめながら。


他の参加者は謎に取り組み、ある者は互いに戦いを続けていた。

だが彼にはわかっていた――なぜかは説明できない、未来の知識なんて持つはずなのに、それを感じていた。

――20分後、彼女は“自分”ではなくなる。30分後には――命を失うかもしれない。

彼は何かを為す必要があった。



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「カルテイ――あの銀髪の少女から離れてくれ」

マーカスは隣の神秘的な“協力者”に向かって囁いた。

「信じてほしい。君のためにも、今は……お願いだ」


彼女は細く目を細めた。表情は冷たいまま。けれど瞳の奥に――“興味”の色がちらりと揺れた。



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マーカスは一段と早歩きになった。

イリヤはクリスタルの前に立ち、バリアを見つめている。


その時、会場に響く声:


> 「問:魔術師と戦士が深淵に立つ。

一人は言葉で世界を支配し、もう一人は剣で静寂を破る。

魔術師が導けば、世界はその声に屈し、

戦士が踏み出せば、静けさは消え去る。

言葉だけでは守れず、剣だけでは築けない。

両者が均衡するとき――秩序が生まれる。

魔法が剣を、剣が魔法を成すのは何か?

それらの調和はどう測る?」




その言葉が響き、静寂とともに魂へも響いた――



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「イリヤ!」

マーカスは叫んだ。

「大丈夫?くらくらしない?なにか……おかしく感じない?」


イリヤは振り返り、怪訝な表情で言った。


「何?驚かさないで。私たちは“対戦者”よ、忘れたの?」


彼女の声が少し震えた。顔が、うっすら赤らんだ。


「もしかして……」


「ちがう違う!そういう意味じゃないの!」

マーカスはそう必死に言った。

「ただ……今なぜか“怒り”とか、“影”を感じなかった?」


「何それ?からかってるの?」


マーカスの拳は固まった。頭の中では、「どうやって説明すれば? 何も知らないくせに?」と叫ぶ声があった。

残り時間は10分――十の刻。彼女は、自らの手で壊れていく。気付くことなく、そして失われる。


これは――“ただの友人”の話ではなかった。

これは――“彼女”を救う物語だった。



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「システム!“ライター”はあと何回使えるの?」

マーカスは思わず心で問いかけた。


> システム:残り2回。ただし……魔力が足りるか?




「ステータス見せて!」


[ステータス表示]


> 力:30 +8 敏捷:23 +4 耐久:40 意志:34 知力:55 +11 明晰:15




「魔力量は?」


> システム(ややあっさり):気づいたか?

マナ:250 / 300 魔力オーラ:110 / 110

「レア使用特典:マナ+200」





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「いいぞ……これなら。」


イリヤは彼の方をじっと見つめていた。

不安と困惑の入り交じる瞳。


> システム(皮肉っぽく):

「今、まるでヒーロー小説の展開ね。

都合のいい“ご都合主義”、ベタ展開ですって?」




だがマーカスはそれを無視した。

“生きる”より“救う”ために――



---


「イリヤ。お願い。静かに立って。目を閉じて。今、やらせてくれ。」


彼女は驚きながらも、マーカスの真剣な眼差しに頷いた。

「わかったわ。でも……変なことしたら、鼻へし折ってやる。」


微笑む。


「約束する。礼儀正しくやるから。」



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> “WRITER”




彼は手を振り上げる。魔法陣が空気を切り裂き、文字が舞う――

イリヤは初めてそれを目撃した。瞳が見開く。


> [イリヤは徐々に落ち着きを取り戻す。半ば進行していた“悪魔化”は止まりつつある。

外には、試練監督・イリマ・デラールが入場する気配。]




魔力量:270 / 500


> システム:

「巧妙だ。悪魔化を阻んだわけではないが、“先延ばし”に成功したのは評価する。学習してるね?」





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だがイリヤは大きく震えた。ほとんど叫ぶように言った。


「…何か…頭が…“みんなを殺せ”って……」


マーカスは彼女の前に立った。「時間がない……でも、僕は“書く人”だ」と。



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「怖がらないで――もしそうなったら、僕が……書き直す。」


彼の声は静かだった――そして、初めて“確信”に満ちていた。


「試練の外で、僕が……知りたい。何が起きているのか」


会場の外から、イリマの声。


「ふふ、待ちきれなかったのね」

クナイツ教授も微笑みながらカップに戻った。

「さあ――そろそろ“星たち”の本性を見せてもらいましょうか。」

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