第23話 料理人を集めよう!



 食糧を配ってるうちに、提案されたことがある。


「野菜が欲しいんだ。あんたのとこみたいな料理を、自分たちでも作ってみたい」


 なるほど。一理ある。

 というのも、この世界、肉が美味いらしいのだ。

 豚肉や鶏肉より魔獣肉の方が美味いらしく、ベテランが魔獣狩りに行ってる今、美味い魔獣肉が手に入る。


 なので、野菜や小麦、調味料を入手して、食事を作りたいらしい。

 いつまでも俺の料理に頼り切ってるわけにもいかないそうだ。


 この街にも料理人や、家庭料理を作る人はいるからな。

 美味いものが作りたい、というのはわかる。


 食べる、以外の行動に気を回す余裕が出てきたのは良いことだ。


「良いぜ。といっても、こっちで使える野菜があるかは知らんが。色々出すから、どんなのが料理に使えそうか、言っていってくれ」


「わかった。こっちも料理人だ、素材の味の見極めは任せてくれ!」


 奮起する女料理人。やる気があるのは良いことだ。

 活気がよみがえりつつあるってことだからな。


 使える野菜は結構あった。

 まず里芋。これは確認済み。キャベツ、長ネギ、ニンジン、ほうれん草。


 カブはあったが大根はなかった。

 カブと勘違いしたままかじって、大根の辛みに女料理人が驚いていた。


 ピーマンはないが、パプリカはある。

 香味野菜の類いはあるようだ。


 タマネギもあったが、こっちにあるのはエシャロット、西洋タマネギっぽい。

 やけに大きいな、とびっくりされた。

 エシャロットは小粒だからな。


 セリ、セロリ、冬瓜もある。

 茎に似ているルバーブという野菜はないか、と聞かれたが。

 一応探してみたらあった。西洋野菜売り場を見れば良かったな。


 香草類も購入できるが、香草はもう生え始めているらしい。

 残っていた種が家庭菜園に生えているそうだ。


「調味料も試してくれ」


 調味料を色々試す。

 醤油、みそは大豆発酵食品なので、こちらの文化圏にはない。

 ただ、発酵臭自体は一応受け入れられた。

 バターも発酵食品だからな。クセのある匂いだ、と説明したら理解してくれた。


 塩、砂糖、コショウ。

 砂糖やコショウは貴重品らしく、喜ばれた。

 調味料だけでも提供して欲しい、と言われた。


 穀物酢は顔をしかめられたが、味付けの入った調理用酢は受け入れられた。

 塩や糖類の入ってる、カンタンに料理に使える酢だ。

 穀物酢ほど酸味が強くない。


 意外だったのが、『みりん』が受け入れられたことだ。

 とても甘口の酒の味がする、と言われた。

 確かに本みりんは酒類だ。

 アルコールも入っているし、日本酒を原料にした調味料だからな。


「ダシは知ってるか?」


 粉末カツオだし、粉末鶏ガラスープ、練った形の中華合わせ調味料。

 どれも初めての味だったらしいので、全部くれと言われた。


 日本のネットモール、何が多いかって、調味料の販売点数がめちゃくちゃ多いんだよな。

 マニアックなものまで含めれば、とんでもない種類がある。


 一味唐辛子やすりごまも勧めた。

 辛みには慣れていないらしく、一味の刺激にびっくりしている。

 ゴマはあるらしく、なじんだ味だったが、すったゴマは初めてだったらしい。

 こちらも喜ばれた。


「この辛いものは面白い。味が引き締まる。もっと色々ないか?」


「辛いものってったらワサビとカラシかなぁ」


 チューブのものを購入すると、地獄のような試食になった。

 さすがに刺激が強すぎたらしい。


 なので、もう少し刺激がマシな西洋ワサビことホースラディッシュと、練り辛子より辛みの数段マシなマスタードを用意した。


 マスタードは辛い、と思われがちだけど、実は違う。

 練り辛子とマスタードは、使っているからし種の種類が違うのだ。


 練り辛子はオリエンタルシード、西洋マスタードはイエローシード。

 別の種類の種粒を練ったものだ。

 イエローシードは、オリエンタル種に比べて、圧倒的に辛みが穏やかだ。


 有名なディジョンのマスタードなんかはイエローの方だな。

 ソーセージやポトフにつけて食べると、まろやかな辛みで食べやすい。


「このマスタードってのいいな。ソースにも使ってみたいね」


「良いんじゃないか? ハチミツと合わせても美味いぞ」


 いわゆるハニーマスタードソースだな。

 塩気のある加工肉料理にも合う。


 あと、調味料と言ったらやっぱりこれだろう。

 マヨネーズ、ケチャップ、お好み焼きソース。


「……単体で舐めても美味い。なんだこの調味料は……! かけるだけで美味いんじゃないか!?」


 そらそういうもんだからな。

 マヨネーズも日本だと調味料だと思われてるけど、発祥国では立派なソースだ。

 マヨネーズソースという、もっとも基本的な『ソース』として扱われている。


 なので、マヨラー的にはちゃんとソースをかけた料理を食べているんだ、という豆知識。

 俺はそこまでマヨネーズ中毒じゃないけど。


 他のも野菜類を煮詰めて作っているので、それ単体で立派な『料理』だ。


「欲しけりゃ全部持ってってくれ。何なら、料理を配るのを手伝ってくれ。何もすることがないよりはマシだろ?」


「そうだな! 明日から隣で作らせてもらうよ! 火口を借りても良いかい?」


 火口ってな、火元のことだな。

 カセットコンロがあるから問題ない。

 露店調理は十分に可能だ。南区でだって、肉を焼いて食ってたからな。


「もちろんだ。作業テーブルも用意するぜ」


「そうとなれば、肉屋にも声をかけてこなくちゃな! 魔獣をさばいてそのまま料理しよう。祭りみたいで盛り上がるぞ!」


 それは良い。

 露店解体、露店調理だ。

 そのまま焼いて、できたての焼き肉を食べるだけでも充分活気が出たんだ。

 まともな料理ともなれば、もっと盛り上がるだろう。


「じゃあ、他の料理人にも声をかけてくれよ。今はまだ、金を取ってる場合じゃないだろ? 金が出回ったときのための宣伝とでも言って、料理できる奴を集めてくれよ」


「良いね、待っててくれ! 声をかけてくるよ!」


 今、このときに限っては商売敵も何もない。

 商売にならない状況だからな。


 だから、女料理人は知り合いの料理人や肉屋を呼びに、駆け去って行った。


 しばらくして戻ってくると、十人ほどの料理人と肉屋が集まってきていた。

 元々この辺で露店をしていた奴もいるようだ。

 災害のせいで店はガレキに変わったらしいが。


 集まった料理人たちに俺は言った。


「全員分の材料や調味料を用意するぞ! 存分に腕を振るってくれ!」


「ありがとうよ! 助かるぜ!」



女料理人たちは、嬉しそうに歓声を上げていた。


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