第7話 キャンプファイヤーをしよう



 搾り取られた翌朝、つやつやテッカテカのエトナに先導されて、大通りに向かう。

 もうちょっと手加減してくれ。


 大通りに着くと、人だかりができていた。

 昨日より多い。


 たぶん、昨日の料理配布が話題になったのか。

 それとも、他の区域からも噂を聞きつけてやってきてるのか。


 まぁいいや、とりあえず配ろう。


「ガレキ類はこっちにまとめてくれ。どんどん出していくから」


 どさどさと持ち込みのガレキが積み上げられる。

 ありがたい話だ。


 ちなみに、そこら辺から拾ってきたからなのか、誰も所有権は主張しない。

 いいから使え、と言わんばかりに積み上げられていく。

 その心意気が、嬉しいよ。


「とりあえず、パンと飲み物は出すか」


「やぁ。おはよう、カイト!」


 少し遅れたアイシャが護衛に来てくれた。

 助かる。


 アイシャはずっと年上の女性を連れていて、支えていた。

 家族に食わせたいって言ってたから、この人がアイシャの母親かな。


「そう、母さんだよ。直に食べさせたくてね。昨日の食事で立てるくらいに回復したから、連れてきたよ。良いだろ?」


「護衛のやるこっちゃないと思うが……守ってくれりゃ良いよ。好きなだけ食べてきな」


 母親が休めるように折りたたみ椅子を購入してやる。

 これからお世話になる仲だ。別に拒否する理由はなんもない。


 アイシャは脇に立ち、列の整理を手伝ってくれている。


 並んでる中にはまだやつれてる人もいる。

 まだ一度も配られてない人か。


「エトナ。向こうで、急ぎの人にだけパンと飲み物を配ってくれないか。列を分けた方が良さそうだ」


「わかった、先に食わせた方が良い奴も多いな」


 ベーカリーのパンを五万円分くらい注文し、箱を別のところに運んでいく。

 ドリンクサーバーを追加購入して、スポドリをぶち込む。

 持ち帰り用にボトルのスポドリも五箱くらい開けておいた。


「まだ一度も食べてない奴、パンでも良いから先に何でも食べたい奴は、こっちに回ってくれ。奪い合わなくてもどんどん出すから、焦る必要はない! 好きに食べてくれ! 持ち帰りも自由だ!」


 そう言うと、人だかりの半分ほどが別れてくれる。

 エトナの列と俺の列で別れ、その中央にアイシャが陣取って列を仕切っていた。


「こっちは食べたいものの注文を受け付けるぞ! 小麦、肉、野菜! 味の濃いもの、薄いもの! 好きな好みを教えてくれ! こっちも量はあるから、焦るな!」


 準備が終わると、ゆっくりと列が進み始めた。

 アイシャが列をさばく際に、「何度並んでも良い。腹いっぱいになるまで食べられる」と、住民たちをなだめていた。


「兄ちゃん、パンが足りねぇ! 次をくれ!」


「あいよ。――すまないな、料理はちょっと待ってくれ」


 パンを追加で十万円分購入する。

 出てきた段ボール六箱は、アイシャが運んでくれた。


「悪いな、待たせた。どんなのが食いたい?」


「昨日のギョザをください、できるだけたくさん!」


 じゃあ五箱で二十人前出すか。

 受け取った女性はほくほくで、そのまま近場で箱を開けて食べ始めている。


 地面で食べさせるのもなんだな。


 俺は合間に、大型のレジャーシートを用意した。

 食べ終わった人に、それを広げて四隅に石を置いてくれ、と頼んでみる。


 土の上で食べなくてすむので、レジャーシートも好評だったようだ。

 持ち帰りたがる奴がいたので、たぶん家が壊れてるんだと思う。


 ヒモ付きのブルーシートを適当に購入して積み上げて、持ち帰り自由だと言っておいた。

 こっちも喜ばれた。


 餃子、ラーメン、ハンバーガー、お好み焼き、知ってる奴は色々頼んだ。

 肉だけ食べたい、という人も多くいたので、他のメニューも出す。


 『マサチューセッツフライドチキン』のパーティーバレルだ。

 骨が多いけど、住民は骨付き肉に慣れてるらしい。

 そりゃそうか。骨を外してパック詰めしてる肉なんて、現代文化だもんな。


 お中元用のハムセットを出して、ぶっといハムを配ったりもした。

 骨なしだと教えると、周りのネットを噛みちぎって、そのままかぶりついていた。


「うめぇ! 塩が利いてる、こりゃ良い!」


 お気に召したようだ。

 そこからはハムを頼む奴も多かった。

 隣の列でパンで腹を満たした女の子たちも合流して、ハム祭りになる。


 お中元用の詰め合わせセットを渡して、分け合ったり、持ち帰り用にしたり。

 追加はどんどん出てくるので、別に不満を言う奴もいなかった。


 高級ハムだから、そりゃそうだろう、とは思う。


「カイト……後で、あたいにもくれよ」


「何セットでもやるよ。好きに持ってけ」


 ガスコンロとフライパンも出してやったので、レジャーシートの上で、プラナイフで切り分けて炙り始める奴らも出てきた。


 すっかりキャンプ状態だ。

 段ボール箱を分解して、たき火にしてる奴もいる。

 串が欲しいと言うので、バーベキュー用の金串も出した。


 一応、武器にもなるものだからアイシャが警戒していたけど、他にもにらみを利かせる女性たちが現われて、平和なキャンプファイヤーになった。


 紙だけだとすぐに燃え尽きるんで、大袋に詰められた備長炭も放りだしておいた。

 炭じゃない焚き木も出してるから、火は付くだろ。

 着火は魔法で何とかしてくれ。


 たき火ができるなら、と芋も出した。

 ジャガイモとサツマイモだ。

 アルミホイルで包んで焼けば、そのまま食べられるだろ。


「なんだ、この芋? 見たことねぇな」


 エトナが首を傾げる。

 ジャガイモないのか、この世界。

 聞いてみると、この世界にあるのはタロイモっぽい芋らしい。要するに里芋だ。


「うめぇ! 植えても大丈夫なのか、この芋?」


「処理を間違えると毒化するから、まだやめとけ。後でちゃんと注意しながら広めるから」


 アイシャもジャケットポテトをお気に召したらしい。

 塩とバターを出して配ると、住民から泣いて喜ばれた。

 じゃがバターだな。


 この土地の主な調味料は、塩、バター、香草らしい。

 バターは、ヨーロッパ圏だと、日本の醤油並みになんでも使われるからな。

 なじみのある味に安心したんだろう。


 昼間だというのに、たき火を囲んで歌い出す奴らがいた。

 完全にお祭り状態だ。


 酒はあるが、酔っぱらいが現われるとこの場の治安が悪化しかねない。

 代わりに、コーラとサイダーの消費量が激しかった。


 エールより甘い飲み物を片手に、飲んで食べて住民はご機嫌だ。


「こんなにお腹いっぱい食べられるのは、久しぶりだよ!」


 だろうなぁ。

 街の崩壊、食糧不足。災害に耐えてきたんだもんな。



 好きに飲んで騒いで、食ってくれ。

 でも、暴力沙汰はダメだぞ。


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