第6話 家を修理しよう



「こりゃあ、廃墟だなぁ」


「廃墟言うな。オレん家だ」


 エトナがツッコミを入れる。


 俺に雇われてくれたムキムキお姉さんこと、冒険者のアイシャ。

 俺の寝床を心配して見に来てくれたのだけど、第一声はそれだった。


 アイシャはエトナの家を指さしながら、説明する。


「屋根はともかく、壁が崩れてんのがマズいよ。外から丸見えだし、いくらでも侵入し放題じゃないか。こんなところで男が寝泊まりしてたら、夜中にさらわれるぞ」


「う……そりゃ、まぁ。不便だとは思ってるけどさ」


 押されるエトナ。

 そうだよな。実際に危ないとは思っていても、俺たちは大工じゃない。

 どうしようもないんだよな。


「アイシャおねえちゃん。どうしたらいい?」


 ピリカが不安そうに尋ねる。

 素直な九歳児の不安顔に、アイシャの表情がほころんだ。

 意外と子ども好きなのかもしれない。


「任せな、土魔法は得意だ」


 そう言ってアイシャは、崩れた壁の下の地面に、手を突いた。


「――『ストーンウォール』!」


 かけ声と共に、土の地面がせり上がり、石になって大きな壁になった。

 天井までは囲えていないが、あっという間に壁が修復された。


 アイシャは自慢げに言う。


「あたいは『防壁』のアイシャ。防御系の土魔法は得意なんだ。腹いっぱいで体力さえありゃあ、このくらいはなんでもないさ!」


「アイシャおねえちゃん、すごい!」


 喜ぶピリカに、ふふん、と胸を張る冒険者。

 すごいな、これが魔法か。

 たぶんこういう防壁を作って、相手の攻撃を塞いだり、進路を妨害して有利に戦うんだろうな。


 冒険者ってすごいな。


「すげぇ! アイシャ姉ちゃん、オレにも魔法や剣を教えてくれよ!」


「ああ、良いぜ。妹ちゃんやカイトを守れるようにならなきゃな!」


 エトナの頼みを快く引受けるアイシャ。

 ともあれ、これで夜も安心して眠れるようになった。


 崩れたままの屋根は……トタン板とブルーシートでも買って、そのうち塞いでおくか。


「カイトの食糧が行き届けば、『魔力暴走』で壊れた街も、復旧が始まると思う。それまであたいの防壁で我慢しな」


「ありがとう!」


 エトナとピリカが、揃ってアイシャに礼を言う。

 俺も感謝の言葉を口にした。


「ありがとう、助かるよ。欲しいものはあるか? 何でも言ってくれ」


「じゃあ、ギョウザとハンバーガーと……コーラももらえるか?」


 モールを操作して、言われた通りの品物を注文する。

 餃子は十二人前、ハンバーガーセットは五セット、コーラは2リットルボトルを二本分……と、たぶん手で持てないな。


 モールサイトで、登山ででも背負える形の箱形リュックを購入する。

 使い方を説明すると、その作りと頑丈さに、アイシャが驚いていた。


「何だこりゃ! 両手が空いてるのに、こんなに楽な袋は初めてだ! まるで、何も背負ってないみたいだ!」


 いやいや、五キロ分くらいは荷物が入ってるよ。

 軽く感じるのはわかるけど、そこまで軽いと思うのは、鍛えてるからだろう。


「そのリュックもやるよ。普段使いにでもしてくれ。その四倍の重さくらいは入るから」


「良いのかよ、ありがとう! こりゃ、張り切って護衛しないとな!」


 嬉しそうに帰って行くアイシャ。

 彼女の家も、この近くにあるんだそうだ。


 ここら辺は庶民街らしくて、ここに家を構えている住民層の家が建ち並んでるらしい。

 だから住民がたくさん来たんだな。


 離れたところには、飲食店のある宿屋街があるらしいけど、今回の大飢饉で、開店休業状態らしい。

 食糧自体がないからな。


 俺のネットモールで料理を出し続けてると、街の店が全部潰れそうなんだけど。

 今はそんなこと言ってられる状態じゃないのでガンガン配れ、とエトナが教えてくれた。


 あと、他にも領主を含む小さな貴族街があるそうなんだけど、そっちはあまり立ち寄らない方が良いとか。


 貴族相手はイヤだな。

 目をつけられて、利用されるだけかもしれない。


 そんなこんなで家の中に入ると、俺はブルーシートとトタンを購入した。

 ホームセンターは便利だな。


 ブルーシートは四隅にヒモが付いているタイプで、ビニールヒモも追加で購入して、何とか屋根を覆い尽くした。


 トタンもビス留め用の穴が空いているので、そこにヒモをくくりつけて、ビニールシートと連結した。

 上に重しの石をのせて、完成。

 当面はこれで、雨風はしのげるだろう。


「ありがとな、エトナ。おかげで今日はゆっくり眠れそうだ」


「屋根に登るなんて簡単だよ。これでも女なんだから、力仕事はオレに任せてよ!」


 えへん、と笑うエトナ。

 この世界の女性ってのはすごいな。とび職みたいな身軽さだったよ。


「じゃ、テント出そうぜ、兄ちゃん」


 何でやねん。

 やりたいことはだいたいわかるけど。


「いや、ほら。ピリカも見てるしさ。見られるのは恥ずかしいって言うか……」


「おねえちゃん、ずるい! あたしも見たい!」


 エトナをぽかぽか叩くピリカ。

 光景自体は微笑ましいんだけど、お前らの歳でする話じゃないな?


「……そう毎晩やっても仕方ないだろ。今日は大人しく寝ないか?」


 俺がそう提案すると、エトナはこの世の終わりのような表情になった。

 そこまで絶望しなくても。


「に、兄ちゃんは……オレじゃダメか? もっと、年上の頼れる女が良いか? アイシャ姉ちゃんみたいな、さ」


「そんなこと気にしてたのか」


 アイシャが現われて、俺を取られるとでも思ったんだろうか。

 取られるもなにも、所有された覚えもないんだけど。


 でもまぁ、仕方ないっちゃ仕方ないのかなぁ。

 エトナの初体験の相手でもあるわけだし。

 別に嫌ってるわけじゃないんだぞ、ってちゃんと伝えないとな。


「お前らが嫌いなわけじゃないから、安心しろ」


「じゃ、じゃあ……今夜も、おねがい」


 こりゃダメだ。

 覚えたてで、完全にそれしか考えられなくなってるな。


 男子中学生ならそんな時期だろうけど、エトナは女の子だろ?

 内股を濡らしながらモジモジさせるってどうなんだ?


 いや、でも日本の女子も、目覚めるのが早い子は早いからな。

 興味を持つものなのかもしれない。


「……わかったわかった。ちょっとだけだぞ。ゴムは着けるからな」


「うん! ちょっとだけ、ちょっとだけだからさ……!」


 お願いされると弱いな。

 もう、エトナがエロ親父にしか見えなくなっていた。



 大丈夫か、異世界の女の子。


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