こころ星ー南堀江公園通り物語ー

森田さとみ

――陽ちゃんとの出逢い――

 仕事を本格的に始め出し、忙しくしている時期、1978年(昭和53年)の春も終わ

りの頃、私がKBS京都に出かけようとしている時、友人の男の人が何の連絡もなく、

朝早く息せきって家にやって来た。


 「会ってほしい人がいるので、今からすぐに、僕の車に乗って、心斎橋の近くの作

曲家の先生の事務所に行って欲しい」と言う。


 〈ごめんねジロー〉やロート製薬のテーマの

 ♪ロート、ロート、ロート…ロート製薬♫のテーマ曲を作曲している先生だと言

う。


 『〈ごめんねジロー〉?なんて下品な曲!!気が進まない…』


 私は、時間的に、とっても無理だと断ったが、どうしも後に引かない。


 仕方なく、車に乗せられ、心斎橋の近くの堀江にあるビルの一室の事務所に行っ

た。


 そこには、私からするとオジサンたち2,3人が居た。

 その中の一人が、突然、私に向かって

 「今度、秋に大阪大衆音楽祭と云うのがあるので、作詞してみないか?」と聞いて

来た。


 作詞には、興味はあったが、その時は、京都へ行く時間が気になっいて、それどこ

ろではなかった。

 会うだけあったので、その男の子の役目は果たせただろうと、

 「考えておきます」などと適当に返事して、慌てて外へ出た記憶しかない。

 

 その時の事を陽二さんは、すごく印象的に覚えていて、後になって何度も何度も言

った。

 東京から大阪に戻って、仕事が出来る女の子を何人も紹介してもらっていたが、 

今ひとつピンと来る子が居なかったそうだ。


 そこへ、無愛想でふてくされた私。


 陽二さんにとって、それは、すごい衝撃だったそうだ。


 ムッとした顔で入って来て、返事も愛想がなく、今まで会った事のないタイプの女

の子だったそうだ。


 でも、それが衝撃で、新鮮で、輝いて見えたそうだ。

 云うなれば、一目惚れだったと言う。


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