第2話

***


「沙來?」


『あ、ごめん。去年1度だけ話したことあるんだ。』


先輩との出会いを思い出していたら目の前の友達を心配させちゃった。



「へ〜それにしても、2年の教室にわざわざ来るなんてどんな用事なんだろ。」


『さぁ?』


先輩の方を視線を送っていると、こちらを見た先輩と視線が合う。


「涼風くん、水瀬先輩が呼んでるよ。」


先輩と目が合うと同時にクラスの女の子から声を掛けられる。


『僕?』


「うん。涼風すずかぜくん呼んでくれる?って言ってたから間違いないよ。」



先輩が僕の名前を知ってるなんて驚いた。涼風沙來すずかぜさくこれが僕のフルネーム。先輩に認識させることなんて一生ないと思っていた僕の名前。今初めてこの名前でよかったと思えた。



少し緊張しながら、席を立ち教室中の視線を浴びながら先輩のところに向かう。


「久しぶりだね、涼風くん。」


『お、お久しぶりです。僕に用事ですか?』


「涼風くんに話したいことあって。よければ、今日の放課後一緒に帰らない?」


『分かりました。僕でよければ。』


「ありがとう。じゃあ放課後迎えに来るから教室で待っててね。」


そう言うと、先輩は3年の教室に戻って行った。



僕は先輩の背中見えなくなるまで見送ると、自分の席に戻った。


『ねぇ、僕今日が命日かもしれない。』


「は?そんな馬鹿なこと言ってる暇あったらさっさと次の準備しろ。次小テストだぞ。」


さっきの先輩の出来事なんて一切気にしてない友達は古典の単語帳を開きながら今回の範囲をブツブツと呟き始める。





****



帰りのSHRも終わってクラスのみんなが帰り、部活をやっている友達を見送った僕は1人緊張しながらこれから来るはずの先輩を待っていた。


「お待たせ。SHR少し長引いちゃって遅くなっちゃった。」


ドアを開けて、真っ直ぐ僕の机の方に来ると前の友達の席に先輩が腰掛ける。


『全然大丈夫です。そんな待ってないので。』


正直緊張のしすぎで自分がどれだけ先輩のことを待っていたかなんて定かではない。


「ありがとう。」


先輩が僕の前の席に座っている。夢なのかと勘違いしてしまいそうだ。


「早速だけど、先に話しちゃおうかな。涼風くん、こっち見て?」


緊張のあまり下の方に向けていた視線をゆっくりと上げて先輩と目を合わせる。




「やっとこっち見てくれた。あのね、ずっと前から君のことが気になってたんだ。


よければ付き合ってくれないかな?」



僕は今先輩に告白をされた?


先輩はこんな平凡なこの僕をパートナーにしたいと思ってくれたの?


こんな隣に置いておいて一切の得にもならないこの僕を?



「ダメかな?大切にする自信はあるよ。」


首を傾げ眉毛を八の字にして困ったような顔で僕の顔を覗く先輩。


そんなの…僕答えは1つしかない。


『僕でよければお付き合いさせてください。』



軽く頭を下げて言うと同時にその言葉を聞いた先輩が立ち上がり僕を抱きしめた。



「嬉しい、ありがとう。」



夢でもいい、なんでもいいからこの奇跡を一瞬でも味わいたい。



****


付き合った日が金曜日だったこともあり、土日を挟んで月曜日学校に行くと既に僕と先輩が付き合ったことが学校中に広まっていた。


常に話題の中心の先輩が付き合ったらそりゃすぐに広まるよね。そう納得し、様々な痛いほどの視線を感じながら席に座って本を読んでいた。


「完全に注目の的だな。」


目の前の席に座りお腹が空いたとパンを食べていた友達が教室を見渡しながら声をかけてくる。


『なんか居心地悪い。』


「だろうな〜うわっ、隣のクラスの女子今絶対お前のこと睨んでた。」


笑いながらそんなことを言う友達は僕が先輩と付き合ったと伝えると、「その先輩見る目あるな」と謎の言葉を残すも付き合ったことを称えてくれた。平凡の僕を選んでるんだから、先輩はどちらかと言うと見る目はないと思うけど…



「お前これから大変だな〜。その先輩とやらが好きだった人大勢いただろうからそいつらに目の敵にされる生活か。」


『学校辞めたい…』


「別れればいいじゃん。」


『折角の奇跡なんだ。僕から手放すなんて嫌だ。』


「ふーん、なんか複雑だな。まぁ頑張れよ。」


『ありがとう。』



少し雑な気もするけど、気にかけてくれるのは優しい。友達が少ない僕としては有難い限りだよ。



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