心に秘めた恋心【初BL】

あおい

第1話


「ずっと前から気になってて、よければ付き合ってくれないかな?」


この時から人生が変わり始めた…


モノクロのだった世界に1つまた1つと美しい色が加わる。



****



僕の名前は沙來さく


4月生まれの僕だけど、元々はお医者さんから女の子だと伝えられていたらしく両親は女の子の名前を用意していたらしい。

でもいざ生まれたら男の子だったから急遽名前を考えて、女の子だったら付けられる筈だった【さくら】から取って沙來になったらしい。



今僕は高校2年生で公立の学校に通っている。成績も別に良くもなく悪くもなく基本的に真ん中ぐらいを常にキープしている。友達もいないわけでもなく、数人だけど話す人はいる。


あまり目立つことが好きじゃなく、逆に誰の注目も集めないように生きていく方が好き。


今日もいつもと変わらず友達と教室で話していると少しだけ廊下がざわつき始めた。


「何かあったのかな?」


そういいながら廊下の方を見る友達につられて、その視線の先に目を送るとそこには、キラキラとしたオーラを纏った人がそこにはいた。



水瀬碧人みなせあおと先輩。

僕の1個上の高校3年生。常に成績が学年1位をキープしていて、噂によると日本の有名企業の息子さんだとか。そしてそれに加えて先輩はイケメンなのだ。今モデルの仕事をしているんだと言われても全然違和感がない。そのぐらいかっこいい。


だから、僕が学校内で見かけるといつも女の子に話しかけられているし、先輩の周りには常に人がいるそんな印象がある。



けど今その先輩は、1人で1つ下の学年のそれも僕の教室に来ている。



『水瀬先輩だ。ここにいるなんて珍しい。』


「お前、先輩の名前知ってるんだ。」



廊下の方にいる先輩に視線を送りながら、一言零すとそれを聞いた友達がさも意外かのように聞いてくる。


そう、僕と先輩は実は面識がある。というか、僕が一方的に知ってると言った方が正しいかもしれない。



***


あれは僕が1年生の頃。図書委員だった僕は放課後先生から頼まれた本の整理をしていた。一緒にやっていた同じ図書委員の子は仕事を放棄して先に帰っちゃったんだけど、本が大好きな僕は特に押し付けられたと思うこともなく楽しみながらやっていた。そんな時、踏み台を使って少し上の棚に本を収納している時に持っていた本を1冊落としそうになって、無意識にそれを手で追いかけていると踏み台から足を滑らせてしまった。終わった…っと思って来る衝撃に備えて目を閉じると、硬い床ではなく何故か柔らかい何かに包まれた。


え、なに…?っと思って目を開けるとそこには水瀬先輩が僕を支えていた。


「怪我してない?」


何故か僕の頭を撫でながらそういう先輩にコクコクッと頭を上下に揺らし答える。


「よかった。これ上の棚でしょ?手伝うよ。」


そういうと先輩は踏み台を使うことなく本を棚に並べ始めて、「1人でやる量じゃないよ。今日時間あるから残りも手伝うね。」と言って結局最後まで手伝ってくれた先輩。


その時以来先輩との関係はない。気になって後から友達に聞いて知った僕と違い、あの時別に自己紹介をする訳でもなかったから先輩は僕の名前も知らないだろう。それにあの日の記憶も別にないと思う。


僕はあの日以来、ことある事に先輩を見かけては視線で追っていた。そう、僕はあの日をきっかけに先輩のことが好きになってしまっていた。僕みたいな平凡な男にも気にかけてくれる優しくてかっこいい先輩。好きにならない方が難しい。


けどこの気持ちは別に先輩に届けたいとかは思っていない。流石に自分の身の丈は理解してる。平凡でなんの取り柄もなく、そして同性。別に同性でも恋愛したり結婚したり出来るけどそれ以前に僕が先輩の隣にいたらなんの得にもならない。だからこの気持ちは絶対に外には漏らさないって心に誓ってる。





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