第42話 敬語
「じゃあ、日程とか色々聞いておくわね」
「ありがとうございます。その時に叔母も一緒に行くと伝えて貰えたら」
「わかったわ」
綴のお母さんに無事要件をつたえることができ、また夜来家でご飯をご馳走になった。
今日はご飯、みそ汁、ふろふき大根、野菜炒めだった。
綴のお母さんが帰ってくる時間までこの家にいると100%の確率でご飯をご馳走になる。
だから、今度ご馳走になる時はお詫びとなる品でも持ってこようと思った。
「じゃあ、お邪魔しました」
「尊ちゃんまた来てね」
「尊バイバイ」
私は手を振りながらリビングをでて、綴と一緒に外にでる。
「じゃあまた学校でね、あと週末忘れないでね」
そう言って私はまたねと声をかけ数歩歩いたところで、大事なことを言い忘れてたので踵を返す。
「言い忘れてた」
「今日学校でさ、私放課後先生に呼び出されてたじゃん?」
「?そうですね」
「追試合格だって」
「しかも追試者の中で1位」
私は両手でブイサインをした。
綴はほんとですか!?おめでとうございます!と自分の事のように驚いてくれた。
その事が嬉しくて、キスしたくなったけど今日は我慢した。
「あのさ、合格できたからさ1つお願い聞いてくれない?」
「え、な、なんですか?」
「私に出来ることですか?」
「うん、簡単なこと、だと思う」
「ど、どうぞ」
「敬語やめにしない?」
「流石にいつまでも敬語だと距離感じるからさ」
「日和には普通にタメじゃん?」
「まぁ、姉妹だから普通だけど、だからさ私にもタメできて欲しいなって思った」
「どう?」
「ぜ、善処します」
敬語を使われたので少し顔をしかめると
「ぜ、善処する、ぜ、ぜんしょ……わ、わかった」
と、ぎこちないけど、敬語無しで喋ってくれた。
無理矢理言わした感すごいけど。
まぁいいや、敬語使われる方が嫌だから。
「お願い聞いてくれてありがと」
「今度そこまた明日ね」
「うん、また明日」
そう言って朗らかな笑顔を浮かべる。
綴は私が曲がり角で見えなくなるまで小さく手を振り続けていた。
私も角を曲がる直前、綴の方に向き手を大きく振った。
すると綴もブンブンと両手で大きく振り出した。
可愛いなぁと家に着くまで、先程の綴をずっと思い出しながら帰路に着くのだった。
次の日になり、みんなで昼食を食べる。
その時に綴と話していると、琴花が
「え、綴敬語やめたん?」
と、驚いた顔をしたので私はドヤ顔をキメて、余裕の笑みを浮かべる。
「んはは、いいでしょ?」
「ずるい、ウチにも敬語無しで喋ってぇや」
「え、い、今はちょっと……」
断られた琴花はガーンとショックを受け項垂れたので、肩に手を乗せてどんまいと言うと、このぉ!と半泣きでつかみかかってきたので、琴花の両手を掴んで動きを止める。
凛とルナは私たちのじゃれ合いを横目に、いつか私たちにも敬語無しで話してねと大人の対応をしていたので、それを見た琴花は静かに椅子に座り、私を睨みながらご飯を食べだした。
綴は琴花を気にかけ、
「ルナちゃん達にも言いましたけど、ちゃんといつか敬語無しで喋るので、もう少し待ってもらえると……」
「いつかっていつや」
「えっ……?い、いつかです」
「5日?」
「さ、流石に……」
「……なんで尊だけにタメなんや!」
「え、だって恋人だもん」
「と言いたいところだけど普通に慣れの問題じゃない?」
「慣れたら敬語無しで話すでしょ」
「あと、私からしたら恋人の特権としてちょっとの間だけでも優越感に浸りたい」
琴花はこれ以上文句は言えないという感じで少し不貞腐れた。
琴花って結構普通かと思ってたけど、ルナより全然言動が幼いんだよな。
というか、ルナって普通に凛と同様、結構周りのこと見ててめっちゃ空気よんでる気がする。
今更気づいたけど、人ってちゃんと見てないと分からないものなんだな。
琴花たちと友達になれて、それで友達で居続けてくれ本当によかったと思う。
あー、ほんと楽しいな。
気になるあの子 yori @HIDUKI20241107
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