Chapter3

邂逅(1)

「じゃーん!!どぉ?すっごい特大のケーキや。」

「うわっ!こんなでっかいケーキ、一体何処から手に入れんだよ。」

「すごい美味しそうだけど...もしかしてチームのお金を勝手に使ったのかな...?」

「いやちゃうちゃう!そんな怖い顔せんといてよなーちゃん!これは今日ウチが働いてきたところの伝手で貰ってきたんよ。ほら、今回が初めてやないし、いつも頑張ってくれてるからって。」

「成る程ね。そう言えば、私たちもカモミールを結成して丁度半年くらいよね。」

「せやから半年記念はこれでお祝いってのはどお?」

「普通こう言うのって1年くらい経ってからするもんじゃねぇかな。」

「まぁ無事1周年を迎えれるように頑張ろうという意味合いでもたまにはいいんじゃないかな?」

「せやで!せっかくこんな美味しそうな物を手に入れたんやから派手にやろうや。な!」


 何気ないかつての日常。

 幸せだったあの日々がフラッシュバックするように脳裏に思い浮かぶ。

 "ミラー"の中から顕れたテンコの瞳からシグレは目を逸せない。

 まるで時が止まったかのような、等という比喩ではとても表せないほど濃い時間が流れ出す。

 息をすること、瞬き一つの動作ですら躊躇われるほどに。


「もっと大きなリアクションでもあるかと思ったけど、反応はイマイチやねぇ。」


 シグレは混乱でどうにかなりそうな頭をフル回転させ、必死に絞り出した声で尋ねる。


「本物なのか?変身や幻覚とかじゃなく...。」

「本物やでシグリン。そんな顔しとらんともっと喜んでや。」

「嘘だ!テンコは死んだんだ!ウチの目の前でっ!」


 それを聞いたテンコは少し俯き気味で呟く。


「フフ、なんや。弱っとると思っとったけど案外安定しとるやん。でもまだまだやな。」

「...?」

「もうちょっと話したいけど、ここらで一旦お別れさせてもらうわ。また会えるのを楽しみにしとるで〜。」

「待てっ。まだ話は終わってねぇぞ!どこ行く気だ!」


 笑顔で手を振る動作と共にテンコは闇の中へと消えていった。



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 子供を守る為に急いでバリアを展開したホマチの右腕と右目はツクヨミの攻撃によって無残にも切り裂かれることとなる。


「かはぁッ!ああぁぁ!!」

「ホマチッ!!!」


 切られた箇所からは真紅の血が空中へと散布していた。


「あ〜たまんねぇなぁ。皮膚を裂き、筋肉を捌いて骨を絶つこの感覚がよぉ!私、興奮が喉に来るんだよ!あー喉が鳴るぅ...。」


 ホマチは目が焼けるように熱くなる感覚に襲われ、視界の右側が消え失せる。切り離された腕がドサッと落ちる音と共に右腕の感覚も無くなった。

 更なる追撃が来るかと予想されたが、ツクヨミの動きがそこで止まる。


「あ?なんだもう撤退かよ。ちゃんときっちりかっちり殺してやろうと思ったのによ。でも良かったな。伝達で"カモミール"の連中は捕まえる必要はないってよ。」


 誰が言った訳でもなく、ツクヨミは何かを感じ取るようにしてその場から身を引こうとしていた。


「まぁ、どうせ近い内に会うだろうしな?第六世代の先輩方。。」


 最後にホマチを見ながら翼をはためかせ、ツクヨミは遥か空へと飛んでいく。残っている方の目でツクヨミがいなくなるまでホマチは相手から目をそらすことなく見続けていた。



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「"ミラー"の反応消失の為一旦ここで退却させてもらう。」

「はぁ!?逃げるのかよ!!」


 戦いの中断が差し迫っていたのはハクウ達も同様だった。

 攻防一体に行われていた両者の戦闘は片側の意向により急遽静まることとなる。


「どう捉えてもらっても構わないが撤退の指令が出た以上、お前達に関わる必要はない。お前を捕まえるような指示も出ていないのでな。」

「へへッ、?」

「既知の情報を確認する意味があるのか。」


 そう言うとハクウの相手は音もなくフッと消えた。

 突如慌ただしく揺れだした木々のざわめきによって、消えたように見えたのは高速に移動したことによるものだと認識させる。ハクウは不満気な表情を隠しきれずにいた。


「あー!中途半端に終わって全然納得行かないぞー!」


 八つ当たりと言わんばかりに近くの小石を蹴り上げるのだった。

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