祈るということ(6)
「なぁ、真っ先に出てったウチが言うのもなんだけどさ、あの場所から全員離れても良かったのか?店長1人だけだと何しでかすかわかんねぇだろ?」
「その辺は大丈夫だと思うよ。念のために改竄することはボクの魔法により不可能だと釘を刺しておいたし、警察がすぐ来るだろうから逃げる時間もないはずさ。」
“カモミール"の少女らが向かおうとしている慰霊碑のある場所は人気がなく入り組んでいるような所が大半であり、今回教えられた場所も例外ではなかった。そのため、彼女達は自らの足を使って移動していた。
正直なところ、ナガメ以外の2人の足取りはあまり芳しくなかった。ホマチは昨日の今日に続く長時間の徒歩移動に伴う純粋な足の痛み、体力の限界である。ナガメの魔法により、疲労軽減等の効力を受けてはいるが、それも完全に疲れを消せるわけではない。一方シグレは体力的には大丈夫だが、さっきまで起きた出来事の数々による精神的な疲労が大きかった。
「それもあるけど、ハァ、私たち現場に居合わせたのだから事情聴取とか...フゥ、あるんじゃないの?」
「それを受けるのは別にあの場じゃなくてもいいかなって判断したのと...。」
「と?」
「なんでかなぁ、なんとなく早く慰霊碑の場所まで行きたくなったんだよ。て、理由になってないか。」
うまく言葉で説明できないナガメだったが、シグレとホマチがそれ以上つっこむ事もなかった。
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「お、やっと着いた。ここだね。」
「ハァハァ、全く...時間がかかるのもそうだけど、歩く場所が悪すぎるのよ。」
人気がないということは、手入れもされておらず、ツタや草などの植物が生い茂り、周りの建物なども腐食し倒壊しているのでほぼ廃墟である。
「おぉ...やっぱすげぇな。」
慰霊碑と呼ばれる目的地、そこは彼女らと同じ第四次世界大戦時の戦争孤児を悼むために建てられたものである。
たどり着くまでの入り組んだ道がまるで嘘かのように開けた場所があり、その中央には古びた像が建っておりその形は何処となく、母親に抱かれる赤ん坊を彷彿とさせる見た目をしている。
普通の慰霊碑ならば人々の目につくような場所に作られ、尊い犠牲を忘れないためにも長い間手入れされてされいていくのが自然であるが、シグレらと同じ第四次世界大戦に巻き込まれた孤児の為に建てられた慰霊碑は異例であり、建てられてから綺麗に保たれることはなく、放置され、その慰霊碑の周りもまるで無意識の内に忘れられたかのように古びた空間になっていくのだ。皆、これらが何の為に建てられたかは覚えている。が、切り取られたかのようなこの空間に立ち入ろうとする者は居ない。
少しばかり神聖さの様な雰囲気が感じられるこの場所で、シグレが毎度のことながら感動するものがある。眼前に広がる幾千の小さな光たちだ。まるで蛍火の様なそれがどういう物質なのか、何故発生するのかは判明していない。分かっているのは慰霊碑の周りかつ、夜にのみ発生すると言うこと。
「まるで霊魂の様だわ。」
思わずホマチも呟く。
「ボクはあながち比喩じゃなく本当に魂達が集まっているんじゃないかと思う時があるよ。だからこそあの子らの存在を忘れない為にも手を合わせたくなってしまうんだ。それにね、何だか心が落ち着いて軽くなる気がして、色々なことを思いながら祈るようにしているよ。」
そう言ってナガメは一際光が濃い慰霊碑の前に立つと、手を合わせ、目を閉じる。
「ウチらもやるか。」
「リーダーが祈ってるんだもの、私達がやらないわけにはいかないわ。」
シグレとホマチも同じように祈る姿勢に入り、目を閉じる。
2人はナガメほど積極的に弔おうといった気持ちはあまりない。特にシグレはチームの目的ならば従うといったくらいの気持ちで動いていた。幻想的なこういう場所が嫌いなわけではないし、慰霊碑に祈る行為への理由もシグレは納得している。だが、それで死んだ者たちが蘇るわけではないと割り切ってしまっている部分もどこかあった。しかし、今回ばかりは心を整理するという意味でも、いつもより深く祈りに集中していた。
【昨夜から今までの事を思い返してみる。昨日襲ってきた”ミラー”との対峙、店での強盗、名前を聞くことのできなかった少女の死、様々な出来事から連なる頭の痛みと
———彼女は...テンコは銃で撃ち殺された———
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