1話 ウザい後輩
仕事の最終日の金曜日。
昼休みに俺は、二階の談話室兼休憩スペースのソファアに座り、早々に昼飯を済ませてスマホを弄っていた。
視線をスマホに落としていると「佐藤先輩」と俺の名前を呼ぶ声に視線を声の主へと向ける。
そこには、月曜日から入社してきていた、春風さんがニコニコして立っていた。
「佐藤先輩、昼休みにスマホでなに見ているんですか?」
「ああ、春風さんか。WEB小説を読んでいたんだよ」
「WEB小説を......」と少し考えてからニヤリとニヒルな笑みを浮かべる。
え?なんだ??俺は、嫌な予感がした。
「あー、さては、官能小説を読んでいたんですねー。いやらしーw」嘲笑混じりに言ってくる。
「な、何を言っているんだ君は......」少なくとも職場で口にしていい言葉ではない。
正直、予想外の言葉に少し引いてしまう。
「え?」違うんですか?!」外したのが意外とでも言いたげな言いようで口をあんぐり。
「いったい、どこに確信を持っていたの!違うからね!!」慌てて否定するとそれがトリガーだった。
「でもー、その焦り様は、まるで官能小説がどんなジャンルを指しているのかは知っているようですねー」まるでか弱い子を見つけて意地悪するいじめっ子のような絡み方だ。
「っ......」
「読んだことあるんですかー先輩♡」多少興奮気味に、詰め寄る。
なんで入社仕立ての新人にこんな仕打ちをを受けないとないといけないんだー!
どう応えたらこの場を乗り切れる!?最適解を頭の中で巡らせる。そして導き出した。
「べ、別にー、自分でもWEB小説を書くから、その勉強がてらに読んでみただけだしー」
「へー、官能小説がお勉強ですかー、ところで捗りましたか?!」
「な、なに訊いているんだ君は!!」動揺して、声を荒くなってしまった。
「なにって、小説の勉強のことですけど、なにを想像したんですかー?!もう、先輩のえっち!」
「そうだ!先輩、わたしがお勉強を教えてあげましょうか?!先輩が知らないことを手とり足とり教えてあげますよ?」
「き、君って子はー!!」
まるで、男女でする○○〇みたいな言い方に動揺するのは俺が童貞だからだろう。
キモいオタクだからだろうか?分からない。だけど。この子の悪態だけは分かった。
春風さんは、まるで経験があるような言い方に俺は不覚にもドキドキする。
先輩、今なに想像しました?えっちなことだと思ったでしょー?ざーねんでしたーww」
「っ......」
俺は、ただ仕事から解放されて、疲れを癒すために読書がしたかっただけだった。
それなのに、春風という邪魔が入ったことでそれがままならなく思うようにことが運ばないで、もどかしい。
それと同時に、春風さんのことを元気で真面目な可愛い後輩からウザくて可愛くない後輩へと彼女への印象が更新されたのだった。
***
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