第4話 気絶からの覚醒

「……すぅ」


女性の寝息が聞こえる。

美しい眠り姫。そう評したくなるほどの寝姿。


「ん……」


茜は朝日に寝苦しさを感じたのか、身動ぎして可憐な唇から愛らしい声を漏らすと、申し訳ない程度に身体の上に掛かっていた布団を乱れさせた。


柔らかそうな生のおっぱいが、横向きになって寝ているせいで淫らに歪んでいる。

彼女ほどの美貌の持ち主だ。


世間でも認知度の高い茜の裸体など金を出しても見たいと思う男たちも多いだろう。

それを今は自分だけが独占出来ている優越感に辰馬は浸っていた。


「さて、俺もお腹空いたから何か作るとするか!」


茜を起こさないようにベッドから抜け出してキッチンへと向かう。現在は日曜日の早朝であり辰馬と茜が出会ってから二日以上が経過していた。


彼女が出していた野菜を体を重ねて数時間後に水分補給するために、キッチンへと向かった時に冷蔵庫に入れておいた。そうでなければ腐っていただろう。


プロボクサーとはいえ日本チャンピオンになってもいないので、収入面で余裕は無い。辰馬の生活において節約することは重要なのだ。


「一日以上飯を食べていないからな……ビーフシチューとパスタ作るとするか?」


茜がカレーを作るために、途中まで切っていた野菜を使ってシチューを作る事にした。カレーにしなかった理由としては、パスタを食べたかったからだ。


「誰かに料理食べて貰うなんて初めてだから、少し緊張するな……それも相手が茜さんだもんなぁ……」


辰馬は独り言を呟きながらも手際よく野菜を切っていく。


そしてシチューのソースとして、ウスターソース、バター、料理酒等々をフライパンで煮込んでデミグラスソースを作っていく。辰馬にとって唯一の趣味が料理といえるので、ソースから自分で作っていく。それが彼なりの拘りであった。


辰馬が料理を開始してから一時間弱ほど経ったろうか、長い睫毛が縁取る目蓋をゆっくりと押し上げて、茜は目を覚ました。


「ふわぁぁ……」


 寝返りを打ちながら眠そうな声を漏らして、横向きだった姿勢を仰向けへと変えた。この様子を天井から覗きをしていれば、絶景に違いない巨乳が見えるだろう。


「おはよう」


辰馬はキッチンから彼女へ挨拶をする。かなり疲れていたのか、ジュージューといった肉や野菜の焼いた音にも反応していなかった。


「……おはようございます?……ん~~~」

 

手を頭上に伸ばしてぐ~っと背伸びを始める。身体をピンと伸ばそうとする行為が自然とお尻を浮き上がらせ、おまけに巨乳を更に強調するように突き出させる。


「あれ……辰馬君、ご飯作ってくれているの?」


「そうだよ、茜さん疲れていたよね?」


茜はその言葉にドキッとして肩を震わせた。

彼女の記憶は自分から迫っておいて、辰馬に反撃でもされるかのように蹂躙された光景を思い出していた。そして、何度も絶頂させられたこと。


彼が求めていることに抵抗できず、その求めに応じたいと身体が、そして心が反応してしまったこと。


「うぅ……疲れてたよぉ……」


あまりの羞恥心で顔を真っ赤に染めて俯いてしまう。辰馬の匂いを嗅いだだけで制御出来ない自分の理性と体に恥ずかしさに涙が溢れそうになる。


「だよね。俺も凄い疲れたし、お腹空いちゃった。もう少しで出来る――」


――グゥゥ!


茜のお腹から爆弾でも爆発したかのような大きな音がした。きっと、辰馬が作っている料理の匂いにヤられたのだろう。


「あ……」


茜はカーっと顔を真っ赤に染める。それを楽しそうに笑いながら辰馬は口を開く。


「アハハ、今できるから待ってて」


「……うん、ありがとう」


茜はシーツでチラチラ見ていた裸体を隠しながら、近くに落ちているパーカーを拾った。それは辰馬の汗が染み込んでいるので、臭いはずであるが茜にとってはどんな柔軟剤よりもいい匂いのように感じている。

幸福感に包まれながら辰馬の料理が出来るまで、待っていた。



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