第2話 匂いフェチな茜、我慢など出来ない
「ここだよ。ボロいアパートだけど許してね」
「別に大丈夫だよ、私が迷惑掛けているんだから……。それより高校の目の前に住んでいたんだね」
「あ~そうそう。通学するのにも便利だしなぁ。それと俺のパーカーなんて着てて暑くないかな?」
カンカンと金属の階段を上がりながら辰馬は茜と会話する。ここまで走ってきてもプロボクサーの辰馬にとって肉体的には特段問題なかった。しかし、それ以外に問題があったのだ。
(白石さん、凄くいい匂いするし、なんだか暑くて顔が火照っているのか凄くエロい)
「え、少し暑いかな……でも、着ていたいんだもん」
「そ、そうか……臭くない?」
「え、全然臭くないよ、それどころか、いい匂いしかしないもん!」
お姫様抱っこされている茜は更に辰馬に顔を近づける。フードであまり見えなかった彼女の顔がハッキリと視界に入る。
そして端正過ぎる茜が、辰馬の数センチほどまでに近づき心臓が高鳴る。ここまで緊張したのは、国際大会の決勝戦以上の経験であった。
(か、可愛い!す、吸い寄せられそうな瞳。そして瑞々しい唇……吸い寄せられそうだ)
茜の魔性の魅力に堕とされそうになりながらも辰馬は堪えるようにして、彼女から顔を逸らす。そうでもしないと耐えられないからだ。
「そ、そっか、なら良かったよ。あ、それと俺のポケットから鍵出してドア開けてくれるか?」
「え~と、これかな……」
「それそれ」
茜がガチャガチャと鍵で解錠させてドアを開く。
――スンスン
「凄くいい匂いする……なんか良い柔軟剤使っているの?」
「え、全然……男の部屋だし汗臭いだけだと思うんだけど……」
「そんなことないよ。凄く甘い香りがするよ」
「そ、そうか?なら良かった?」
「うん♪」
辰馬から見ても嘘を吐いているようには見えなかった。ましてや臭いのなら態々匂いについて話すこともしないだろう。
そして彼女をベッドまで連れて、ゆっくりと下して座らせる。
「これ、かなり痛かったでしょ?」
「……え?あ、う、うん……痛かったよ?」
茜はベッドにある辰馬の枕を手に取る。辰馬が彼女の足について質問しても上の空のように返答する。まるで痛みなど感じておらず、それよりも、もっと気にするものが出来たかのようであった。
「そうだよな……」
(ガーゼと消毒液はあるし……それよりも先にシャワーで体洗って貰った方が効率的か?二度手間になるしな)
――クンクン
茜が辰馬の枕の匂いを嗅いだ。それもエアコンなど無く扇風機しかない部屋で沢山寝汗も掻いた上、最近洗濯していなかった枕である。
「ちょ、ちょっと白石さんっ!」
「やっぱりそうだ♪凄くいい匂いがここからする~スンスン」
一心不乱に辰馬の枕の匂いを嗅いでおり、そして布団を手繰り寄せて辰馬の匂いに包まれるようにする。
目は蕩けており口元も人気モデルの彼女らしからぬ緩み切っていた。
まるで発情した猫のように茜は自分を制御することが出来なかった。
(こ、これが学校一の美少女で日本でもトップクラスに有名なモデルの白石さんの姿なのか……信じられない!)
目の前の光景が夢であるのかと何度も思ったが、現実である。
このまま茜の痴態を見ていると自分の理性が飛びかねないと判断した辰馬は逃げるように、買い物へ行くと告げる。
「し、白石さん、お、俺……買い物行ってくるね!」
「え、うん♪いってらっしゃ~い。私は……ふふっ、少し楽しんでるかも♪」
「……ッ!いってきます!」
何をとは辰馬は訊けなかった。それを知ってしまったら己を止められないと考えてのことだった。
そして素早く買い物へ行く準備をして、辰馬は部屋を後にする。
――そして、この時の行動が辰馬の人生を決定づけるモノになる。
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