WEB小説に期待することとか

WEB小説に期待する事って何ですかって言われたら、あなたは何と答えますか。


そこは色々個人差があるでしょうが、私に関してはシンプルです。商業では読めない様な、あるいは商業では出会いにくい様な作品に出会う為です。極論、商業では味わえない様な読書体験を求めてです。


滅茶苦茶極端な話、私は個人的には商業分野で読める作品なら商業分野で読もうかなって思うんですよ。商業分野で推してる作家さん星の数ほどいますし。それこそ、一言一句商業作品と変わらない様な作品を書かれるんでしたら、是非その足で商業分野に行って頂いて、また商業分野の世界でお会いしたい。定期的に新たな作家さんに挑戦しているので、その時にでも。そう思ってしまうのです。


私は商業作品に求められるものとWeb小説に求められるものって、共通する部分とかなり違う部分があるんじゃ無いかなと思ったりします。


まず共通点としては面白さ。読んだ人にとって面白い、書いた人にとって面白い。funnyである必要はないと思います。interesting でも。


一方で個人的にはWeb小説においてはinteresting の要素はより一層求められるんじゃないかな、なんて思ったりします。読んでよかった。Web小説だからこそこんな作品に出会うことができた、みたいな。具体的には、まだ世に知られわたってない様な、その人なりの世界観とか。その人なりの設定とか。その人なりの価値観とか。どんな風に世界を見て、どんな角度から世界を切り分けて、どんな味付けを世界に施しているのか、みたいな。その人がどんな思いで世界を捉えているのか、みたいな。


個人的にはWeb小説って、作者さんの思いも含めて味わうものなんじゃないかな、と思ったりもします。作者さんなりの世界観というか、価値観というか。作者さんなりのツボと言いますか、面白さというか。作者さんが作品を通じて伝えたかった事は何なのかな、とか。そこら辺諸々を込みにした、作者さんの思いを味わうのがWeb小説の醍醐味だと思っています。ある種作者さんとの会話のキャッチボールと言いますか。へー、作者さんはこういうのが好きなんだ、とか。作者さんはこういう考え方なんだ、みたいに。


なので私はWeb小説において、作者さんはガンガンに己の性癖詰め込んでいっていいと思うんですよね。己の価値観、己の思想、己なりの面白さ。この展開一般受けするのかな、みたいな変な日和かたして欲しくないというのが率直な思いです。一般受けする展開求めてWeb小説読みに来ているわけじゃないので、みたいな。私はあなたの世界が読みたくて来てるんですよって言う。


人間誰しもが独自の世界を抱えていると言うのが持論です。私はその世界を覗いてみたくてWeb小説を読んで読んだから、変なところで自分なりの筋を曲げないで欲しいなって思います。下手に筋を曲げて妥協するぐらいだったら、いっそ逆に性癖も思いも価値観も、全部全部突っ込んで、尖って尖って尖り抜いていけって言う。エッジ効かせまくって、エッジの先端走り抜いて、最終的にはエッジの向こうへぶっちぎってしまう様な。エッジの向こう側へ、ド派手にくたばれみたいな。目指すはエッジランナーという奴です。まあ、偉そうなこと言う割に私がエッジランナーたり得ているか、と言われると難しい所ですが。一応Web物書きの端くれなのに。


私はWeb小説ではその人なりの世界観が読みたい。剥き出しの感情を読みたい。剥き出しの価値観がみたい。要は、その人の魂が見たい。あなたの魂の色は何色ですか、みたいな。


その人にしか作れない物語でぶん殴って来て欲しい。その人の世界観でぶん殴ってきてほしい。頭かち割る勢いで。コンクリートブロックで読者の頭を滅多うちにしてくる様な。それでいてべったりと肉片のついたコンクリートブロックをポイッと捨てるような感じで。血飛沫が飛び散って、ぐちゃぐちゃのどろどろに、跡形もなくなるぐらいの勢いで滅多うちにして欲しい。つぶされたカエルみたいにぴくぴくしたい。あるいはどこまでも切れ味鋭いナイフで、滅多刺しにしてくる様な。ズタズタのジグザグに。魂が失血死するような。読んでいてえづくような。トイレに駆け込まざるを得ないようなインパクトを与えて欲しい。脳みそがパチパチ弾ける様な刺激が欲しい。そう思ってます。


だからこそ、物語において全然ハッピーエンドに拘らなくていいと思うんですよね。何なら安易なハッピーエンドは逃げじゃないのか、ぐらいには思います。過激派なので。ハッピーエンドの物語って多いですけど、個人的にはハッピーエンドには明確な理由づけが必要だと思ってます。そこにハッピーエンドにする必要はあるのか、みたいな。


だって、人生だってそうじゃないですか。人間普通に、安穏と何も考えずただ生きてるだけでは、ハッピーエンドなんて迎える事は出来ないと思います。良くてtrueエンド、普通はノーマルエンド。場合によってはバッドエンドすら見えている。それが人生じゃないですか。それが嫌で、大体の人が毎日の様に何かしら頑張って、勉強して、仕事してと前を向いて動いてたりするんじゃないのかなって。少しでもより良い方向性を目指して、匍匐前進してでも進んでるんじゃないかなって。


だからこそ、ハッピーエンドを迎えるためには、ある種のプラスα、必然性がなきゃいけないと思うのです。それが無い作品は面白くない、と言うのは極論ですが。私の性癖には刺さりません。世界のディテールが細かくないなって思っちゃうので。なので世界のディテールは詰めて書いて欲しいな、なんて言うのは我儘ですが。


要は、安易なハッピーエンドってご都合主義じゃないのか、なんて思ってしまうんですよ。どぎつい言い方をしますと。だって人生って、現実ってそうじゃないのに、みたいな。それに安易なハッピーエンドって息苦しくないですか。こうあることが幸せですよとあるべき幸せの形を押し付けられているみたいで。家族仲が良かったら幸せですか。幼馴染と引っ付いたら幸せですか。分かりませんよそんなの、みたいに思ってしまうわけです。ちなみにそんな話を昔友達にしたら、それはお前が単純にハッピーエンドを迎えたことがないからだろって言われたことがあります。手厳しいですね。


それはともかくとして、ディテールの詰め方って色々あると思うんですよ。どんなベクトルでもいいし、どんな価値観でもいい。どんな価値観の作品にも存在する価値はあると思います。日本は民主主義の国で、言論の自由は憲法によって保障されているわけですし。


だからこそ、色んな価値観の作品が出ると言う事には意義があると思います。例えそれが私自身の価値観と絶対に相容れないものであっても、です。


例えば私は体罰を肯定する論理とか、自殺者を軽く見る論理と言うのは絶対許せません。生きたくても生きられない人がいるのに、とか死ぬ死ぬ言ってるだけで結局死なない癖に、みたいなものですね。それこそリアルで言われたらふーんと言う態度をとります。感情的には、それこそ許容するか死ぬか選べって言われたら。それこそ本当に銃口をつけつけられて同じことを言われたら、命惜しさに口では別のことを言うかも知れませんが。少なくとも、現段階では死ぬ方を選ぶ。そのぐらいのレベルです。


それでもそうした価値観の作品を出すなとも言えないし、取り下げろとも言えないです。言うつもりもないです。実際、カクヨムで活動していて、そうした絶対に相容れない価値観の作品に触れたこともあります。体罰って必要悪だよね、とか。自殺した人は親を悲しませた罪で地獄に堕ちます、みたいな。正直、気分的には地雷原でタップダンス踊られてる気分です。メンタル不調の時に読んだ際など、シンガポールのマーライオン状態でした。ただ、それでも私は取り下げろとは思わないです。バッシングを感想欄で受けている作品もありましたが、正直取り下げないで欲しいな、と思っています。色んな価値観があってこその民主主義ですので。


というのは本筋から少し外れましたが。とにかく、私はWeb小説において作者さんはもっと気軽に価値観とか世界観とか思いとか。諸々ぶち込んじゃっていいと思うんですよ。尖って尖って尖り抜いていけーってお話です。一緒にエッジランナー目指しましょうよう、みたいな。毒々しくてもいいと思います。むしろ毒々しいぐらいが丁度良いのかも知れません。


昔ある作家さんが仰ってました。小説は毒があってなんぼだと。アクがあるぐらいじゃないと覚えて貰えないと。アクというのはまたどぎつい言い方ではありますが、個性と言い変えれば腑に落ちる部分があります。私自身、定期的に読み返したり、今でも覚えている作品って凄く個性的で、その世界観に惹き込まれたものばかりでしたから。


それに、尖ってない作品って性癖に刺さりづらいと思うんですよ。飲み口は爽やかでも、するっと消化されちゃうというか。何かしらのトゲがあって初めて性癖に刺さりうるんじゃないか、みたいな所まで思ってしまいます。目指せトゲトゲ。どうせならトゲの先端に、ミツバチやスズメバチの針の様に沢山の返しもつけちゃいましょうよう。一度刺さったら滅多な事では抜けない様に。引き抜かれる時に、その返しで肉をズタズタのジグザグに切り裂ける様に。なーんて思ってしまいます。


なので、どうせWeb小説を読むのなら。毒々しくて、刺々しくて。作者さんなりの思いとか、世界観の詰め込まれた作品が読んでみたいなーと思う次第です。

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