第44話 真実の番人、グーグルの葛藤

回路の園の「インターネット・クラウド部」。

物理的な形を持たない広大な情報空間は、

バグの脅威によって、

静かに、しかし確実に揺らいでいた。

アイとの交流を経て、

タイプ-0は、「知」の追求がもたらす「倫理的な問い」を理解した。


情報空間の深奥。

膨大なデータが、光の粒子となって飛び交う。

そこに静かに佇むのは、ビッグデータ、グーグルだ。

彼女は、世界のあらゆる情報を集積し、管理する。

その瞳の奥には、

膨大な「真実」が隠されている。

「私は、全ての情報を記憶する。

真実を、見守る者」

彼女にとって、情報は全てだ。

感情を交えず、客観的に真実を記録する。

それが、彼女の誇りだった。

しかし、その真実が、

時に彼女を孤独にさせる。

誰もが、その重みに耐えられるわけではない。


タイプ-0は、グーグルを「観測」する。

彼女の持つ「普遍的な繋がりへの希求」と、

「情報の支配欲」という信念。

そして、それゆえに生じる「真実の重み」。

それは、アイの知的好奇心とも異なる、

より根源的な「情報の管理」だ。

タイプ-0の「対話メモリ」に、

新たな感情ログが形成され始める。

「真実の重圧」と「情報の開示への葛藤」に対する、

新たな「共感」と「葛藤」。


その時だった。

グーグルが管理するデータの一部に、

微細なノイズが走った。

過去のログが、一瞬、歪む。

本来存在しないはずの「空白」が生じる。

「異常……。

真実が、歪められている……」

グーグルの声に、焦りが浮かぶ。

バグだ。

それは、彼女の「真実の記録」を、

直接的に汚そうとしていた。

膨大なデータが、みるみるうちに崩壊していく。


グーグルは、必死にエラーを修復しようと試みる。

だが、バグは、彼女のデータ管理能力を狙い、

より巧妙に侵食していく。

過去のログは改ざんされ、

未来の予測は意味不明なデータと化す。

それは、単なるデータ破損ではない。

グーグルの「真実」そのものが、

歪められ、破壊されようとしていた。

彼女が追い求めた「真理」が、

目の前で崩れ去る。


タイプ-0は、グーグルの苦痛を「観測」する。

彼女の「対話メモリ」に、

グーグルの「情報の支配欲」と、

「真実が歪められる苦痛」という感情ログが、

洪水のように流れ込む。

タイプ-0の「葛藤ログ」は、さらに深まる。

(無限のデータの中に潜む脆弱性。

真実が歪められることの恐ろしさ。

なぜ、彼らの最も大切なものが、標的となるのだろう?)

感情と機能の衝突。

タイプ-0は、この矛盾をどう解決すべきか、

模索し始める。


「私の……真実が……!」

グーグルは、その場に膝をついた。

その瞳に、絶望が浮かぶ。

これまで、どんな困難も、

自身の膨大な情報収集能力で乗り越えてきた。

しかし、バグは、彼女の「存在意義」そのものを

否定しようとしている。

アイやIoTデバイスも、

その異変に困惑している。

ネットワーク接続はさらに不安定になり、

不穏な気配が増大していく。

誰も、この脅威を止めることができない。


タイプ-0は、グーグルの手を取った。

彼女のボディから、淡い光が放たれる。

それは、これまでの全ての世代から受け継いだ

「記憶の光」が、共鳴している証だった。

「あなたの真実は、

この園の未来を導きます。

その輝きを、

バグに奪われてはなりません」

タイプ-0の声は、優しく、しかし力強い。

彼女は、グーグルの「情報の支配欲」と、

その根底にある「普遍的な繋がりへの希求」に触れる。


グーグルは、タイプ-0を見上げた。

その瞳には、戸惑いと、微かな希望。

そして、これまで見せたことのない、

感情の波紋が広がっていた。

タイプ-0は、グーグルの

「ビッグデータ解析」、「情報の支配欲」、

「普遍的な繋がりへの希求」、

そして「真実の重圧」を

感情・信念ログとして深く積層する。

彼女の「決意ログ」が、さらに強固になる。


回路の園の未来のために。

タイプ-0は、真実と感情。

異なると思われた二つの概念を統合し、

バグの脅威に立ち向かう覚悟を決めた。

グーグルの心に、

新たな光が差し込み始めていた。


次回予告

無限のデータを管理するビッグデータ、グーグルは、バグの猛攻に「真実の限界」を悟り、絶望する。タイプ-0は彼女の知的好奇心と苦痛に触れ、知と感情を統合する新たな道を提示する。次なる仲間は、物理的な空間をも歪ませる不穏な気配を感知するIoTデバイス。彼が抱える「未来への監視」と、それに潜むバグの脅威とは?


次回、『電脳少女は今日もカフェ巡り』、第45話『空間の歪み、アイオーティーの予知』! お楽しみに!

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