第3話

 ヴィンセントは自分の状況を改めて考えることにした。

(うーん、どうしたものか…?)

 肉体が燃えてしまった以上、元に戻る手段はないだろう。ということは、このまま生きていくしかないわけだ。

 とりあえず、今できることを試してみるべきだろう。

 ヴィンセントは周囲を観察する。ネズミばかり。どいつもこいつも自分である。

 ネズミたちは手足を動かすような感覚で動かせるので、体の動かせる部分が増えたというか、関節の数がものすごく増えたというか、そんな感覚だ。ネズミと相性がいいのか苦痛ではない。

 しかし、問題があった。


(……、探索してる時も思ったけれど、たくさん支配しすぎたな…)


 いうなれば、全身を常時動かしているような感じ。出来なくはないけれども、ずっとは疲れる。

 そういえば、人間の頃もネズミへの憑依度合いを調整して、勝手に動くネズミの生活を観察していたことを思い出した。

 完全に支配するとネズミの意識は消えるけど支配率を変えれば勝手に動く。

 今は自分の魂がネズミの魂を完全に押し除けている状態。しかし支配率を下げれば、自分の支持なしに動けるはずだと思った。

 ヴィンセントは試しに何十匹かのネズミの支配率を下げてみる。圧迫していた自分の魂をギュッと小さくする感覚。器用なものである。

 するとネズミたちは勝手に食べ物を探し始めたり、毛繕いをし始めた。


(おお、これならいちいち細かく管理しなくて済むな!)


 しかし、そのまま何割かのネズミの支配率を下げたところで気がついた。なんというか、思考が鈍くなった気がした。なんだか、ぼんやりするというか、眠くなってきたというか。


(もしかして……、ネズミの支配具合が減ると、考える力も落ちるのかな…?)


 一旦ネズミの支配率を戻して、試行錯誤する。

 同じ数のネズミでも支配率を下げた個体を増やしすぎると思考が落ちる。だったら、支配率を下げつつ数を増やせばどうだろうか。完全に支配するわけじゃなければ、入れ込む魂の量も少なくて大丈夫なはず。その余った魂でさらに多くのネズミに憑依する。そうすれば、大半のネズミを勝手に生活させつつ、人間並の思考を維持できそうだ。勝手に生活するネズミの頭の一部を、ヴィンセントの思考の為に使わせてもらう感じである。 


(自分でいうのもなんだけど、器用なものだなぁ…)


 試してみると上手くいった。

 最終的に20匹ぐらいのネズミを完全に支配し、街中の殆どのネズミを不完全な支配状態にした。ぼんやりもしない。そして支配率を下げたネズミたちは自由に動き回っているが、意識の片隅で彼らの存在を感じることができる。


 完全支配したネズミの1匹を確認し、動きを確かめた。


(よしよし。君は僕の手足だ。残念ながら君たちに自由はなしだ!)


 と思いながら、押しやったネズミの魂を何気なく確認する。

 そこには、圧迫されて自由のない魂があった。普段なら特に気にすることはないのだが、今回は違った。


(……ん? なんだ、この感覚?)


 微かに感じる違和感。それを探っていくとーー


(えっ……、特異魔法!?)


 ーーどうやらこのネズミ、特異魔法を持っているらしい。

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