クレナイの荒治療 その2
「はぁ......はぁ......」
疲れで床に倒れ、天井を見上げるビヨンド。
その隣では、クレナイが正座し、手拭いで額の汗を拭いていた。
「どうですか......? 気分は晴れましたか?」
「はぁ......お、おかげさまで......。はぁ、はぁ......」
荒い呼吸で返事をするビヨンド。
「ふふ......それは良かったです」
二人が会話していると、訓練場の扉が開き、レパールが欠伸をしながら入ってきた。
「あら、早いわね......。って、ええ......!?」
レパールが倒れているビヨンドを見てぎょっとする。
「クレナイ......! 弱ってる相手をボコボコにして改心させようとするのは流石に......」
「ちょっと、何ボコボコにされたことにしてるのよ」
体を起こし、レパールを睨みつけるビヨンド。
「ストレス発散で打ち合いをしただけですよ」
「な、なんだ......。てっきりクレナイの暴力的指導の後だと......」
安心し、一息つくレパール。
「というか、その調子を見る限り、もう大丈夫なのよね?」
「ええ。迷惑をかけたわね。ランディが居なくて寂しいし、心配なのは変わらないけど......。あの子のことを、あの子との運命を信じることにしたの。必ず、私たちの元に戻ってくるって......!」
ビヨンドは立ち上がり、傘をブンブンと振り回し、元気な姿を見せる。
「いやー。ビヨンドちゃん元気になったみたいだねー」
ラッティが櫛で髪をとかしながら、訓練場へと入ってきた。
そして、ビヨンドの元へとスタスタと歩み寄り、両手でビヨンドの頬をガシッと掴む。
頬を手で揉みながら、ビヨンドの瞳を見つめるラッティ。
「うん、もう大丈夫って感じだね。悲しみのない、希望に満ちた目をしてる」
「ご心配をおかけしてすみませんでした! でも、もう大丈夫……とは言い切れないですけど......」
まだランディの行方がわからないため、完全に大丈夫と言い切ることはできなかった。
「でも、あの子のことを信じてみることにしたんです。あの子はそんな簡単に諦めるような子じゃないって、悪いことをするような子じゃないって、私が一番知ってるので!」
「ははは、すっかり元気だね。うん、良かった良かった」
ラッティは笑いながら頬を揉み続ける。
「あ、そうだ。そんな復活したビヨンドちゃんに任務のお話があってね。本当は次の訓練の時にでもお話しようと思ったんだけど......」
「なんですか? お話って?」
「なんかフェルノアがビヨンドちゃんに興味があるっぽくてさ、半月後の任務に一緒に来てほしいんだって」
「え!?」
「具体的な内容は知らないけど、そういうことだから。じゃ、私はこの後用事があるから。じゃねー」
ラッティは手を振り、訓練場から出ていった。
「むー......。ビヨンドばかりずるいわね......。この前だって一緒に任務に参加してたし......」
頬を膨らませ、不貞腐れるレパール。
「まぁまぁ、落ち着いてください。私たちも頑張っていれば、いつかご一緒する機会が訪れますよ」
そんなレパールの頭を、子どもをあやすかのように撫でるクレナイ。
「それじゃあビヨンドさん。四天王の方と任務に参加するとなったら、訓練を疎かにするという愚行はできませんよね?」
「勿論よ。ただ、お昼すぎからはランディの捜索をさせてちょうだい。訓練をサボらないってだけで、探すのを辞めたわけじゃないから」
「ふふ、わかっていますよ。では、準備はよろしいですか?」
クレナイが木刀を構える。
ビヨンドが傘を構えると、再び打ち合いが始まった。
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