特別任務 その3 ランディの姉

「えっ!」


 ラッティから姉の名前を聞き、驚くランディ。


「ど、どうして姉の名前を……」


「だって、テンペスティアって......。テペアの本名と同じなんだもん! 怪盗テペア! 本名、リーン・テンペスティア!」


「怪盗テペアって……。四天王の一人の……? ……えぇぇぇぇーっ!!!!!」


 衝撃の事実とランディの声に驚くビヨンド。


「よく見たらテペアに所々似てるなぁ。そっかぁ、だから強くなりそうって思ったのかなー」


 ランディに歩み寄り、頭を撫でながら話すラッティ。


「お姉ちゃんが、怪盗……? しかも、四天王……?」


「あれ? もしかして知らなかった? 君のお姉ちゃんはすごいよー。突然現れて、豪快かつ仕事が早いベテランだよー」


「だ、だってお姉ちゃんは......」


 困惑して上手く話せないランディ。


「事情はわからないけどさ。君のお姉ちゃんはよく家族のことお話ししてくれてたよー。特に、妹の君のことをね。少なくとも、家族のことを蔑ろにはしてない感じだったよ」


「お、お姉ちゃん……」


 あまりの嬉しさに涙を流すランディ。

 先ほど慰めてもらったお礼に、慰めてあげるビヨンド。


「でも、確かテペアさんって行方不明なんですよね?」


「えっ......!」


 驚くランディ。


「あ、そういえばランディは知らないんだったっけ......」


「大丈夫だよランディちゃん。君のお姉ちゃんはヘマするような怪盗じゃないから、きっとどこかで上手くやってるよ!」


 ランディを慰めるラッティ。


「よーし! じゃあ私がお姉ちゃんに合っても恥ずかしくないような立派な怪盗にしてあげるね!」


「はい、お願いします!」


 ランディは、元気にそう言った。



 医務室を出るビヨンドとラッティ。


「あ! そういえば!」


 ビヨンドが突然何かを思い出す。


「ラッティさん。ラヴァが言ってたんですけど、最強の怪盗の証ってなんですか?」


 ラヴァが言っていた最強の怪盗の証のことを思い出す。

 四天王であるラッティなら何か知っているかもしれないと思い、ラッティに聞いた。


 だが、ラッティは頭の中にハテナが浮かんでいるかのように、困った顔をしていた。


「んー?何それ?」


「え、ラッティさんでもわからないですか......?」


「うーん......? あ、もしかして......」


 ラッティは、首にかかっている何かを取り外す。

 どうやら、ペンダントを身に着けていたそうだ。

 紐の先端には、赤い水晶が取り付けられていた。


 ペンダントを手に乗せ、ビヨンドに見せる。


「なんですか? そのペンダント」


「これって学園長から配られてる四天王の証なんだけど......。実力に関係ある物ってこれくらいしかないなぁって......」


 ビヨンドは、ペンダントを見つめる。

 よく見ると、アクセサリーにしては水晶の形が歪だった。

 まるで、一度砕かれたかのように。


「それってラッティさんが砕いちゃったんですか?」


「配られた時から割れてたよ。学園長が言うには、元々は一つの水晶で、それを割ったらしいんだけど......」


「割って、四天王に配ったってことなんですかね? それを完成させるとなると、四天王を全員倒す必要が出てきますし、盗むのも難しいですよね? やつらはそれを狙って......」


「なるほどねぇ......。つまり、私たち四天王と、同じものを持っている学園長が重点的に狙われるかもしれないと......。でも......」


 顎に手を置き、真剣に考えるラッティ。


「どうしたんですか?」


「このペンダントの話ってここ最近......。いや、数年はしてないはずなんだよね。それなのに、なんで知られてるのかなぁって......。......ま、いっか」


「え、いいんですか?」


「だって、考えたところで私たちが狙われることは変わりないし、どう漏れたかよりも、これからどうするかの方が大切でしょ? だから、この話は終わり!」


「......確かにそうですね」


「じゃ、ビヨンドちゃん。今度こそあいつらに勝てるように、お互い頑張ろうね。じゃねー!」


 ラッティは、手を振りながら走ってどこかへ行ってしまった。

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