『燈和=フラデリカ』編

第20話 燈和とフラデリカ

 しきる雨が地に届くことはない。

 その一粒一粒が大地に辿り着く間もなく蒸発してしまうからだ。


 ふと、考える。


 -俺のこの想いも、あの雨粒のように届くことも叶わず消えてしまっているのだろうか-


 覚悟を決めなければならない。もう、失敗は許されない。


「さぁ...燈和。今度こそ、やるからな」


「・・・」


 獄炎に包まれた幼馴染に声をかけるも返答は無く、代わりにただただ殺意だけが向けられる。


 距離にして五メートルといったところか。燈和を中心に燃え盛り、渦巻く炎はその範囲を裕に焼き尽くす。

 当然氷戈もその炎に喰われているが、火傷を負うどころか顔色ひとつ変えることはない。


 これは氷戈のカーマ『絶対防御』の力によるものであり、燈和の発する炎の大小に関わるどころか熱によって巻き起こる暴風すらもことごとく遮断する。


「何度言わせる。私は、トウカなどでは無いッ...」


 その美形な顔を恐ろしく歪ませて、告げる。


「私の名はフレイラルダ=フラデリカ!!フラミュー=デリッツの誇り高き焔騎士であり、No.2ツヴァイルの名を冠する者だ‼︎」


「そうか、そうだったよ。も、生きてるんだよな....」


「何をまた、訳の分からないことをッ....!?」


 燈和か、フラデリカか。トウカで、フラデリカか。


 彼女は憎悪の対象に哀れみの表情を向けられ一瞬戸惑うも、その覇気を揺るがすことはなかった。


くぞ、青髪!今こそ、貴様の首を落として姉さんの仇を討ってやるッ!!」


「・・・来いよ。絶対に、おまえを取り戻す!!」


 フラデリカは二刀のレイピアを、氷戈は等身ほどの槍を構え両者臨戦体制へ_


「はぁぁッ!!」

「だぁァッ‼︎」


 『熱き赫』と『凍てつく蒼』の激突の行方は如何に__

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