不老不死 伝説の男の生き様

@Dangonodansan

第1話 門

「五十嵐さん、伊東の地にて新たな門ゲートが発生しました。対応をよろしくお願いいたします。」


「由香ちゃん。 了解」


悠は、急いで準備を整えた。彼の腰には、短刀と手にショットガンを持ち、いかにも異質な存在だった。


悠は、緊急ヘリに飛び乗り、三島の地からゲート発生地である伊東公園まで30分ほどで移動した。


減りを降りると、ヘリポートには女性が待ち構えていた。


「五十嵐さん、よろしくお願いいたします。」


その女性は、五十嵐に向かって頭を下げた。彼女は、悠より身分が低いのだろう。S級である悠に頭が上がらなかった。


「君の所属と名前と階級は?」


JMC所属 A級隊員 笠松 凛 です。よろしくお願いいたします。


「笠松君ね。現状を教えてくれ。」


「現在、門は静寂を奏でています。ただ、A級のゲートなんですが出現するモンスターがC級ゲートのモンスターしか出現していません。」


「どういうことだ。門に異変が起こっているのか?」


「はい、今回五十嵐さんを派遣させてもらったのはそういう理由です。」


門から出現するモンスターは、その門の魔力値によって変化していく。そのため、強い魔力値の門には高位モンスターが出現する仕組みだった。そのため、A級ゲートは、A級相当のモンスターが出現するのが普通だった。ただ、最近は、ゲートの異常値を観測されることも多かった。


「ゲート内部を見せてくれ」


ゲート外部は結界魔法を施してあり、半径約10メートルほどの半球の透明のガラスのようなものが取り囲んでいた。


ゲート内部に入ると、悍おぞましくどこまでも闇に吸い込まれてしまいそうな穴が存在した。半径4メートルほどで底が全く見えないので深さ分からなかった。いわゆるブラックホールに類似した存在だろう。


ゲート内部には、他の隊員2名がいた。


「お疲れ様です。よろしくお願いいたします。」


2人とこちらを見るとすぐに挨拶をしてきた。


「おう、よろしく」


「君たちの名前と階級は?」


「萩原当真です A級です。」「今村 久です同じくA級です。」 

「あの伝説の五十嵐さんにお会いできて光栄です。」


「よろしく、二人とも」


悠は軽く挨拶をかわし、ゲートの状態を確認し始めた。


門の異変は一見では確認できなかった。ただ、A級ゲートとして登録されている割にこのゲートの魔力は、C級の門と勘違いをしてしまうくらい低かった。


「このゲートが出現してどのぐらいたつ?」


「今でちょうど4時間というところです。」


「ここまで出現したモンスターは?」


「羅犬2匹というところです。」


悠は、状況を確認したが違和感しかなかった。ゲートが出現してから4時間もたって2匹のモンスターしか出現しないという事は異常だった。A級ゲートなのに、出現したモンスターは羅犬というC級モンスターだったのだ。


「そっか。計測器の故障とか?」


「計測器が故障になったとは思えません。今まで、計測器の故障なんて聞いたことありません。」


確かに彼女の言っていることが間違っているとは思えなかった。ただ、この異常な環境では今までの常識はすぐに変わってしまう。だからこそ、専門家の詳しい調査が必要だった。


「今村君さ 国家魔法当局に電話つないでもらえる。五十嵐より緊急って」


「畏まりました。」


今村君は電話かけてから5分ほどして、こちらに携帯を渡してきた。


「五十嵐さん申し訳ないのですが、相手が五十嵐さんに代わってほしいそうで、」


悠は、しょうがなく電話を受け取った。


「こちら五十嵐、 何か聞きたいことでも?」


悠は、自身が作業をしている間に任せた仕事が戻ってくることを嫌っていた。そのため、少し不機嫌な様子だった。


「悠さん、お久しぶりです。担当の山下です。覚えていらっしゃいますか?」


その細くどこか優しく包まれる声には聞き覚えがあった。


「山下さん? どこかでお会いしましたっけ?」


昔の知り合い?と電話しているようで心が少し明るくなっていった。


「モルゲートアンに所属していた山下です。忘れてしまったんですか?」


モルゲートアン悠は懐かしい名前を聞いた。3~4年ほど前退魔組織ランキングには必ずトップ5には入っていた会社だった。だが大規模な上位メンバーの離脱により失墜した。


その中のアイドル的存在だった。若干15歳でA級ライセンスを取得し、天才と呼ばれた存在。悠は、彼女と何度か一緒に仕事をしたことがあった。今回のように、A級の現場に緊急事態が起こり、S級である自分が出動した。


「今思い出したよ。 天才少女か」


「はい、天才少女です。 そんな昔の恥ずかしいことを言わせないで下さい。」


彼女はバリバリの天才少女という決め台詞を言って見せた。彼女の中には、まだ天才少女という肩書が残っているのだろう。


「それで要件は?」


「局長に詳しい内容をお伺いしろという風に言われてしまいまして」


「局長か」


嫌な思いでしかない局長なら、言ってきそうなことだった。


「ゲートの異常が発生している。 A級ゲートなのにC級のモンスターしか出現しない。しかも、モンスターの出現率が低い。魔力計測値もA級を示していて、異常はない。これ以上の追加情報はない。」


「畏まりました。 それでは、悠さんはその場で監視をお願いできますか?」


「了解」


電話を切ろうとした瞬間だったゲートに異様な黒い影が走った。膨大な魔力を発し、オーラにより結界にひびが入った。


「天才少女。 今すぐ近くのS級を3人よこせ 緊急事態だ。」


悠は柄にもなく電話に向かって叫んでしまった。それほどこの状況に危機感を感じていた。

すぐさま電話を切り、結界の内部へ向かった。


「お前ら、無事か?」


内部にいたA級は、膨大な魔力により酔い倒れていた。

外に残っていた、今村君に彼らを運び出してもらうようにし、彼には、外で結界魔法を常時使用してもらった。


悠は、内部に残り手に持っているショットガンを構えた。彼のショットガンは、魔力を通すことで様々な属性の弾丸となり射出できる。威力は高く魔力量もそこまで必要としないため使えるものにとっては一級品だ。ただ、長距離での対応が難しいため、使っている者は他にいない。


彼は、門からモンスターが出現するのを待っていたが一向に出てくる気配はなかった。先ほどの強い魔力は間違いなくSランクゲートのものだ。


いつSランクのモンスターが出現するか分からないため、悠も結界を張っている今村君も緊張感が続いていた。


三十分ほど経っただろうか、上空に1機のヘリの音が聞こえてきた。

「おーい」

声が知ったので上空を見上げると、上空から3人が飛び降りてきた。


高度100メートルくらいから飛び降りても平気な理由は、彼らが魔法を使用しているからである。


彼らは、結界の外に落下したようだった。結界を今村君に開けてもらい、3人は結界内に来ていた。


「や、ほー 久しぶり悠」


そう話しかけてきたのは、Zion所属 井口 愛海 ブロンドヘアーが良く目立つ女性だった。格好もすごく、どうやってヘリに乗せたか分からないが、手には60㎝ぐらいの巨大なマグナム式のガトリング銃を持っていた。

彼女は、デストロイヤ―と呼ばれるほど跡形もなく相手にとどめを刺すことから、そう言われていた。


井口の後ろに見慣れた人影があった。


「悠さん、お疲れ様です。」


「由香ちゃん、どうしてここに?」


「近くのS級がいないという事で私が派遣されました。」


彼女の実力はS級とは相違ない。ただS級の人数は国で規定されていて、彼女は、抜け人がくるまでS急に昇格することは出来ないのだ。


この国は、S級の人数を増やしてくれないかね~。人使いが荒すぎる。


「これから皆で話すことがあるから、由香ちゃん監視を頼めるかい。」


「畏まりました。」


ゲートを由香に任せ、外に出ると聞きなじみのある声が聞こえてきた。


「久しぶりだな 悠」


そう声をかけてきたのは、ノル デック スタイン所属 猿川 宏。彼の愛称はサル。悠とは長い付き合いであった。彼とは1年ぶりの再会だろうか。正直言うとこんな状況で再開したくはなかった。積もる話は多いが、それよりも事態の究明と対策が先だ。


悠は、井口と猿川をゲート付近のコンテナハウスに呼んだ。

この、コンテナハウスはゲートが発生しやすい場所に元々設置されており、ゲート関係者の休憩場所となっている。


コンテナハウスに入ると、萩原と笠松が寝ていた。


「悠これは、どうなっているんだ?」


「S級レベルの門の魔力値が発生した。彼らは、その魔力に当てられて気絶している。」 


サルは、困惑した様子だった。門からは、とてもS級の魔力値とは思えなかった。しかも、モンスターの出現は確認できなかった。


基本的に門は、発生から2~5時間程度で閉じる。基本的にモンスターの出現は、門が開いている時間は永遠に出てくる。1分で1~3匹が基本である。


だが、S級の門はそうではない。S級モンスターは、その門の発生中に数体しか現れない。簡単そうに思えるが、S級隊員数人で倒せるレベルなのでA級以下の門とはわけが違う。そのため、S級隊員を3名要請した。


「モンスターの出現はあったの?」


「俺が来る30分前はC級モンスターがチラホラ現れた。」


「あのゲートからS級の魔力ね。到底考えられない。」


全くめどが立たず難航していたところに、調査員たち10名ほどが到着した。


研究員たちに今の状況を説明し原因究明を急がせた。

ただ、いつS級モンスターが出現するか分からない場所に調査員10名全員を守り切ることは出来なかった。

研究員を3名にしてもらい

悠、由香、井口の3人で内部の調査員の補佐、猿川に結界の維持を任せることにした。


結界内侵入後、ゲートの調査が始まった。

計測器の確認やゲート内部での魔力値の調査、モンスター出現の調査など複数の調査が行われた。

調査にかかった時間は1。5時間ほどだろうか、幸いだったのは調査中にモンスターは1匹も現れなかった。


調査隊とゲートを後にし、再びコンテナハウスに戻った。

「調査結果、この現象が分かりませんでした。」

「緊急で戻って魔法局で詳しい検査をする必要があります。」


「ただ、確かにこの門はA級を示しています。だけど、モンスターの出現率が少なすぎます。」

「A級ゲートは10分以内にA級以下のモンスターが数体ずつ発生するはずです。この出現率はS級ゲートです。」


研究員たちを返し、ゲートを観察していたが結局ゲートはそのままの状態だった。発生から4時間が過ぎ、自然とゲートは消えていった。何事もないまま終わるのは有難いが、調査結果もまだわからないことが、腑に落ちなかった。


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