第2話 男の親友が可愛すぎる件について
窓の外では、桜が春の風にふわりと揺れていた。
新しい制服。新しい教室。始まったばかりの高校生活。
そんな空間では、もうすでに小さなグループができ始めていて、クラスはやけに活気づいていた。
きっと彼らは、これから“花の高校生活”を謳歌するんだろう。
──まあ、俺には関係ないけどな。
そんな眩しすぎる青春の光景を、俺は鼻で笑ってやり過ごす。
「……さっさと終わんねぇかな」
ポツリとこぼした独り言。
そのときだった。
「ゆ〜ういちっ♪ なに黄昏れてんの〜?」
突然、後ろから女の子みたいな声が飛んできた。
振り返ると、そこには見慣れた顔。
中学からの腐れ縁──如月 聖(きさらぎ ひじり)。
雪みたいに白い髪。ふわっと甘い匂い。細い手首。柔らかな微笑み。
──いや、どう見ても“女の子”だろこれ。
マジで誰か、「男です」って設定ミスだって言ってくれ。
こいつとは中学で転校してきたときからの付き合いで、バスケ部でも俺と蓮也と三人で“仲良しトリオ”やってた。
ネクタイをしっかり締めた制服姿に、華奢すぎるシルエット。
……何度見ても、やっぱ可愛すぎるだろ。
「おはよう、聖。今日も相変わらず可愛いな」
「長い付き合いだし、そろそろ実は女の子だって白状してくれてもいいんたぞ?」
毎度俺のくだらないないボケに、聖は今日も真面目にツッコミをいれる
「は!? いきなり何言ってんの!?バカじゃないの!?」
顔を真っ赤にしながら唇をぷるぷる震わせて怒る姿は──うん、やっぱり可愛い。
俺はさらに口を開く
「いや、いつも思ってんだけどさ。
聖ってそこいらにいる女子より圧倒的に可愛いだろ。神様、性別ミスってますよ?って直訴しに行きたいレベルなんだけど?」
冗談っぽく言ったつもりだった。
……けど、本当にどこかでそう思ってる自分がいるのも事実で。
「そ、そういうことをサラッと言うのやめて!」
両手をバタバタさせながらのツッコミ。
……これはもう、どう見ても動揺してるだろ。
でも俺は、そんなふうに焦る聖を見るのがちょっと好きだったりする。
口が止まらない俺は、つい調子に乗って追撃してしまう。
「男子連中、みんなお前の顔面にやられてっからな?でも実際しゃべったら“男”って……そりゃあ、心の傷にもなるって、俺なんかもう傷つきすぎてもう痛み感じなくなってるし」
「いや、それは向こうの勝手な勘違いでしょ!?」
聖が即座にツッコミを入れてくる。
眉をピクリと吊り上げて、まるで“それは違う!”と全力で否定するアニメキャラみたいに。
……でも、その頬はほんのり赤くなっていて、やっぱりどこか照れてるようにも見えた。
「ははっ。でも、それだけお前が女の子っぽくて可愛いってことなんだよ」
ふいにでちまった本音に、俺自身ちょっと驚いた。けど、もう遅い。言葉は空気を伝って、確かに聖の胸を打った。
「べ、別に……そんなの意識してるわけじゃないし……て、てか可愛いくないし!?」
俯き気味に呟く聖の頬が、うっすらと赤く染まっていた。
目を逸らす仕草、揺れる睫毛──
そのどれもが、彼女の動揺を隠せていない。
──ん?てか
今、ちょっと声のトーンが変わったような……?
髪の毛を指先でくるくるしながら、微妙に伏し目がちな聖。
あれ? なんか照れてる?
……って考えてたら、教室のドアがガラリと開いた。
「おーい、みんな席につけー。今日からこのクラスの担任をする遠坂だ、よろしくー!」
ドアを勢いよく開けて入ってきたのは、がっしりした体格に短髪、声もやたらデカい――
うわ、いるわこういうタイプ。“あの夕日に向かって走ろうぜ!“とか言い出しそうな全力体育会系教師だ。
俺がいちばん苦手とする人種だ。
──てかなんだったんだろ、あの聖の一瞬の“声の変化”。
まるで、何かを隠してるような……そんな空気を、ふと感じた。中学時代にも時々感じていた違和感。
でも、そんな俺の思考をよそに、聖はいつもの調子でにこにこ笑っていた。
(あぁ……今日のゆういちも、やっぱりかっこいいな……)
(もし僕が、“本当は女”だって知ったら──どんな顔するんだろう?)
(男のフリして、ずっとそばにいようだなんて……やっぱり僕、どこかおかしいのかな……
ゆういちが悪いんだよ?本当はずっと昔に会ってるのに忘れてるからさ)
(でも……離れたくなかったんだ。あのときの優しさが、嬉しすぎて……)
(“男”じゃなきゃ、自分を偽らないと君と一緒にいられないってわかってたから……だから僕は──)
(……ねえ、ゆういち。君は全部を知ったとき、僕を友達と言ってくれるかな……?)
(あぁ……誰にも君を取られたくないよ……)
その笑顔は、やっぱり“男の笑顔”とはまた違う。
(……まあ、いっか。こいつは昔からの腐れ縁。正真正銘の“男”だし)
──このときの俺は、まだ気づいていなかった。
この“腐れ縁”が、
俺の高校生活を、とんでもなくかき乱してくる存在になるなんて──。
そして何より──
俺の“心”まで、かき乱してくるなんてことも。
※本作は、一部AIの補助を参考にしながら執筆していますが、物語の構想・登場人物・表現の最終決定はすべて筆者が行っています
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