第4話 (四)六道辻の夢

 かつての日、そして数日、あのバイクの男*******、思い出しては時を過ごした。何もなく、未だに○○大橋での 事故のニュース******* は耳にしない。仮に何か事故があったとしても、報道はされないことも。自殺の名所と言う悪しき噂、さらに広まる事を恐れての配慮として。 


 あの日から、道を訊かれることは、めったになくなった。その代わり、私は夢を見るように、忍び寄る黒い影を見るように―― なっていた。


 黒いバイクの男は私を乗せて、ここ** まで来ると私を降ろし、髑髏の背を向け去ってゆく。

 ここは、三本の道が交わる交差点、通称 六道辻***。道の先、谷に掛かる橋までも、モクモクと繫がる黒い森、その森に囲まれて、駅からも街の灯からも遥かに遠く。

 そして、私はこの辻で待っている。

 

 通りかかる旅人達は立ち止まり、どちらへ渡るべきか考える。

「○○へは?―― どっちですか?――」

 何度も繰り返された言葉、何度も繰り返された問。の人達は、きっとたどり着いていることか――


 そして、思わぬ言葉が――

「あの、あなた*** はどこへ行くのです?」


 えっ、私はいったい? ただの待ち人? 私も一人のただの旅人?

 この道は夢の世界へ続く辻道。

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