第52話 夏休みの遊びも追い上げです


 無事に感想文も終わらせた翌々日の土曜日。夏合宿以来の武道場での稽古となった。久々に武道場に行くと午前中に稽古をする門下生のほとんどが集まっていた。

 俺は師範代に挨拶をした後、着替えて道場に入ると葛城さんが寄って来た。


「おはよう、和樹君」

「おはようございます。葛城さん」

「ねえ、夏の合宿の時、話した件なんだけど」

「その事ならもうお話したはずです」

「キスもしていないけど好きだって言った子?」

「はい」

 そう言えば夏合宿の後、季里奈としちゃったな。でもこの人に言う必要は無いか。


「ねえ、私ならいきなりでも良いのよ。和樹君なら良いよ」

 何を言っているんだこの人。


 ここで集合の合図が掛かった。良かった。



 いつもの一時間半の自分の稽古をしっかりとした。本当にすっきりする。そして小学生へ稽古をつけてと言っても基本の型のおさらいと応用の型を教えるだけ。それをして終わりだ。


 稽古は本当に気を引き締めてくれる。稽古が終わり、汗を拭いて着替えて武道場の外に出ると葛城さんが待っていた。結構しつこいな。

「和樹君、この後、冷たいものでも飲みにいかない?」

「済みません。家に早く帰りたいので」

「えーっ、いいじゃない。同じ武道場の同期のお願いだよ」

 嫌な突っ込み方をしてくる。でも今日は駄目だ。


「分かりました。今日は用事が有るので来週稽古が終わったら」

「うん、それでもいいわ。じゃあね」


 好きな事を言うと駅の方に早足で歩いて行った。葛城さん、どうしたんだ?彼女と一緒に入門して五年半、今迄こんな事言ったのって一度も無かったのに。


 葛城さんの事は頭の隅に追いやって急いで家に帰った。今日は季里奈と明日出かける場所を決める為だ。


 家に戻ると何故か季里奈が来ていた。

「お帰り、和樹」

「季里奈、どうして?」

「うん、自分の部屋に居ても詰まらないから和樹のお母さんに話したら遊びに来ても良いわよって言われて。だからさっきまで和樹の部屋で本読んでいた」


 母さん、どういうつもりで居るんだ。俺の部屋に勝手に入らせるなんて。

「母さん!」

「あら、いいじゃない。季里奈ちゃんだったら何の心配も無いわ。それとも見られていけない物でもあるの?」

 駄目だ。母さんの季里奈への信頼は俺より凄いかも知れない。


 話すだけ無駄と知った俺は季里奈に

「シャワーを浴びて着替えて来るから」

「うん」

「じゃあ、お昼の用意するわね」

 母さんがキッチンに消えた。


 胴着を洗濯籠の傍に置いてからシャワーを浴びた。熱いお湯で体の汗を流すと段々冷たくする。

 急に冷たくするのは良くない。大人の人はサウナでそういう事をするそうだが、内臓、特に心臓への負担が大きい。今は大丈夫でも将来において疾患を招くかもしれない。


 冷たいシャワーを浴びてスッキリするとタオルで体を拭いて新しい洋服に着替えてダイニングに行った。季里奈がテーブルセッティングをしていた。


「あっ、和樹。丁度お母さんが作ってくれた所」

「おっ、そうめんだ。嬉しいな。でも俺の多くない?」

「その位食べるんじゃないのぉ?」


 どう見ても母さんや季里奈の二倍以上ある。

「ところで父さんは?朝から居なかったけど?」

「早朝にゴルフに行ったわ。アーリープレイとか言って、暑くなる前にラウンドするんだって。もうすぐ帰って来るわよ」

「へーっ」


 俺には全く知らない世界だけど父さんも健康に気を付けているんだな。そうしたら母さんが

「そっちの方が安いんだって」

 俺の考えは見事に打ち砕かれた。


 冷たいそうめんを良く冷えたつゆとショウガで頂くと本当に美味しい。多過ぎたと思ったそうめんはあっという間に無くなった。そうしたら

「はい、スイカ。そろそろ梨に変わるわね」


 良く冷えたスイカも胃の中にしまい込むと

「季里奈、部屋に行くか」

「うん」


 部屋に二人で入ると

「和樹、遅くなったけど、朝の挨拶」


 そう言って俺に抱き着いて顔を上げて目を閉じた。優しい口付けをしばらくした後、ローテーブルに並んで座ると季里奈が


「明日、何処行こうか。でもプールはもう良いかな。海に行ったから」

「そうだな」

 それに季里奈のビキニ姿を他人に見せたくない。


「遊園地はどうだ?」

「遊園地か。でもこの辺で在るんだっけ?」

「近くには無いよ。それに行った事無いし暑いよ」

「じゃあ、他には?」

「そうだ水族館はどうだ。涼しいし気持ちいいぞ」

「うん、そこにしよう」


 早速、スマホで調べると品川と押上にある。季里奈が押上の方を見て

「ねえ、これなあに?」

「ああ、スカイツリーと言って六百三十四メートルあるタワーだ」

「これ昇れるの?」

「勿論、ネットで予約すればいい」


「和樹、これにしよう、これ。水族館よりいいよ」

「分かった。ここからなら電車で一本だ。時間は掛かるけど乗換えが無いのがいい」

「じゃあ、決まりだね」


 という訳で後は事前チェックをしていると季里奈が

「和樹、これは何?」

「浅草寺と言って有名なお寺だ」

「ここは行けないの?」

「いけるけど一日でスカイツリーと浅草寺は無理だよ」

「じゃあ、明日はスカイツリーで明後日が浅草寺ってどう?」


 流石に母さんに援助を申し込まないと財布の中がマイナスになる。でも季里奈が行きたいと言っているし。しかし連日はきつい。


「季里奈、行くのは良いけど、連日はきついよ。せめて一日いや二日は空けないか」

「別に良いけど、何か有るの?」

「何も無いけど。季里奈が疲れると思ってさ」

「私は問題ないよ。全然元気だよ」

「分かった」

「やったぁー!」

 今日、母さんにお願いしないと。


――――


次回をお楽しみに。  

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひ☆☆☆を頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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