第28話 憤怒の大罪人から生き残るには

「大罪人って...もしかして七柱の大罪人?」

「うむ、魔界では七柱覇王セブンズロードと呼ばれているが、下界の人間はそう呼んでおるんじゃったな。そう、我は憤怒の王の娘で、それを継ぐ者と覚えてくれると助かるのじゃ」


 っと、クロエの問いに、腕を組んでドヤ顔で自分の紹介をする。


「それで憤怒ちゃん、名前は?」

「だから、真名は明かせぬのじゃ」

「また何故に?」

「本来の力が解放してしまう。そうすると上のアホどもに気づかれて、小童殺されるの思うぞ?」

「は?」


 何で俺殺されるんだ?上のアホって誰だよ。


「アリス、よく聞いて...今ボクたちがやってること...禁句よ」

「禁句??何が?」

「大罪人と関わる事は、六大禁句の内3番目に罪が重いとされている...」

「??」


 また知らない単語が出てきた...


「それで、その禁句を犯すと何が起きるんだ?」

「天界の使者が殲滅しにくる。あるいは神自ら...」

「ふーん」


 こんな子供の様な子と関わるだけで、神様は殺しに来るのか...器の小さい奴なんだな。


「それはどうでも良いや。俺は神なんて嫌いだし」

「アリス!あまりそんな事言ったら」

「分かってる、分かってる。どうせ神の侮辱は禁止なんだろ」


 イッシュを見ていたら、この世界の神の信仰は異常だ。


「わぁあ!可愛い子じゃん!」

「おい!余を子供扱いするんじゃない!何をするんじゃ!余は偉大な堕天の王じゃぞ!」

「子供扱いって、子供だろ?堕天ちゃん」

「ちゃん付けをするな!」

「えぇ、2人とも...」


 ことの重大さを理解してない2人に、クロエは珍しく戸惑いを見せる。アリスやリンに頭を撫でられる憤怒ちゃんは、慣れない対応に少しばかり困っている。


「もうどうでもいいや...」

「んぎゃあ!!余は堕天の王なのに!!」


 2人の行動に、色々と考えるのが面倒になり、クロエも憤怒ちゃんを撫でるのに参加する。


「それで名前はどうするんだ?憤怒ちゃん?堕天ちゃん?なんて呼べばいい」

「うむ、それは我が剣となる小童が決めろ!かっこよくて良い名前がいいのじゃ」

「えぇ...俺そう言うの得意じゃないんだけどな」


 うーん、実に困った...仮に犬を飼うとしたら、ポチって命名するほど、そういうネーミングセンスはないんだけどな...黒い翼...カラスみたいだな...あっ!


「ラヴンはどうだ?」

「何か意味はあるのか?」

「ああ、黒い鳥の別名みたいなもんだけど、その鳥は俺らの国では最強の象徴の名だ」


 まぁ、カラス自体ってより名前の方だけどな...


「最強の象徴!!ほーう!気に入ったのじゃ!余はラヴン!そう名乗らせて貰うのじゃ!」

「そんで、ラヴンは俺に何を差し出し、俺はアンタに何を差し出せば良い?やっぱり名誉か?」


 ラヴンは悪魔...いや、堕天?まぁ、どっちでも良いが、こういう契約は何か代償を得るのが相場と決まっている。ソロモンの72体の悪魔の様に名誉を広げればいいのか?


「名誉?そんなのは要らぬのじゃ。余が欲しいのは感情じゃ。怒り、憎悪を食わせろ。食えば食うほど余は強くなるのじゃ」

「つまり、俺が怒ればラヴンは強くなるってことか?」

「うむ、そうでもあるが。別に小童自身の感情じゃなくとも良いのじゃ。相手に憎悪を抱かせて殺しても構わぬのじゃ」

「えぇ、殺すのはちょっと...」

「嘘つけ」


 隣にいるクロエがポツリと言葉をこぼしていたが、あえて聞こえないふりをしよう。


「まぁ、別に殺しはしなくとも。主に向けられた憎悪が強い程魂にこびりつく事もある。それでも余はパワーアップするのじゃ!どれどれ、今どれぐらいこびりついているか見てやろう!」

「おいおい、俺は真っ当に生きてるんだから、誰にも恨まれる事はしてないぞ...?!!」

「安心するが良い、痛みは感じないじゃろ?」


 急にラヴンはアリスの心臓を貫く様に手を、体の中に突っ込む。ビビるアリスだが、痛みは感じなかった。


「...お主、どんな生き方をしているんじゃ?」

「どんな?って普通に?」


 こいつアリスの記憶を読み漁っても、普通に魔法の修行をしているだけだしな。特に誰とも関わりはない..,


「一体何人、人を殺した?ここまで増幅した呪いは...てか、なんじゃお主?魂と身体が別人んむ?!」

「...そう言うことね」


 こびりつくって魔力とか身体にじゃなくて、魂にってことか...


 ラヴンが変なことを言う前に口を押さえる。

  そして人差し指を唇に当てて、ラヴンにジェスチャーを送る。ラヴンはウンウンと頷くのであった。


 さて、どうしようか?別に隠している訳でもないけど...なんか、この身体の本当の持ち主が俺じゃないことを、2人に知られるのが怖いって気持ちがある...アリスだからこそ2人は友達になってくれただけで...アリスじゃなく、俺だと知ったら...拒絶されるのが...はぁー、情けねぇな


「さて、ラヴン!前みたいに俺の雷を使わせてくれ!あの快感はやばかったな!」

「...前とは?お主と会うのは初じゃぞ?」

「え?ほら?巨大な化け物と戦った時俺に話しかけただろ?」

「??」


 え?なら俺は誰に話しかけられたんだ?


「まぁ、良く分からぬが。小童の魔力を雷の変質に変えれば良いのだろう?確かに小童の心魔はぶっ壊れてて使えば死ぬ恐れがあるのじゃ!よし!余とリンクするのじゃ!」

「リンクって?」

「余に触れれば良い!小童の魔力を使い、余が変換してやるのじゃ」


 ラヴンは右手を差し出す。

 

 え?もしかして戦う時も手を繋いだままじゃないといけないのか?なんだそれ...


 アリスはラヴンの手を握ると、ラヴンの周りに黒い物体が現れて変わる。それは黒い鳥、カラスの様な生き物に変わった。


「ふむ、余のもう一つの姿はこう想像したのじゃな。もしやこれが小童の故郷で最強の証の鳥じゃな?」

「まぁ、そうだな」


 ラヴンはアリスの右肩に乗る。

  ラヴンに乗られた瞬間、魔力がラヴンの方へ集まっていくのを感じた。


「イメージするのじゃ、怒りを...今、奴を殺したいって気持ちをイメージするのじゃ!それが力の源」


 ビリリッ


 アリスの両足に電気が走る。

  ブフルの時よりは威力は弱いが、確かにアリスは自信の魔力を雷の属性に変換させたのだった。


「これが魔法ってやつか...」


 やべぇ、早速試してみてぇ!


「リン、俺アンタに負けたままだったよな?リンも試したいだろ?新しい剣」

「え?...うん!」

「次は魔法ありの剣勝負としようか」


 アリスの問いにリンは理解する。

  竜剣ヴィクトーリアと竜装ブレイブソウルはリンが触れた習慣にリンの炎と同化したまま、実戦では一度も使用はしていない。リンも新しい武器を使いたいのにウズウズしているのに違いない。


「操作がまだ難しいから、竜剣だけ使うね」

「ああ、構わないさ。ボックス」

「竜剣ヴィクトーリア!」

「ん...一応、結界張るから...本気でやっても良いよ...」

「おいおいおい!何であの女の剣からイフリートの野郎の魔力を感じるんじゃよ!」

「あれ、元はイフリートの魔力から生まれた奴の武器だからな」

「女の手元にあるって事は、倒したのか?」

「うん」

「マジか!」


 アリスの方の上にいるラヴンは偽物とは言えイフリートの魔力から生まれた竜剣の様な武器を生み出せる程のバーナードを討伐した事に驚きを見せる。


「んじゃー、頑張るのじゃー。余は巻き込まれたくないので、避難するんじゃー」

「え?」


 ラヴンはクロエの右肩に移動する。反対の方にはカムイまでが乗っている。


「いやいや、ラヴンに触れてないと俺魔法使えないんだろ?」

「いや、それは最初だけじゃ。もうリンクは繋がっているんじゃから、余が召喚されている限りは魔法は使い放題じゃ。まぁ、魔力が尽きるまでの話じゃが」

「なるほど」


 まぁ、確かにずっと肩にいられちゃ...邪魔っていうより...やりずらいよな。


「宣言通り、次は勝たせてもらうぞ」

「あはは!大丈夫!今回もアタシが勝つ!」

「がんばれ〜」


 クロエは念に念の為に、自分の周りに三重の防御結界を張る。


「さぁ、いざ」

「尋常に勝負だ!」

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