第2章 血濡れた拳、愛を込めて復讐を誓ふ

第27話 とんでも召喚魔法から生き残るには

「ええっと...アリス君、数日会わなかっただけで、また包帯増えてる...しかも、より悪化してるし」

「...何も聞くな...何も聞かないでくれ」


 偽赤竜戦でさえ、左腕と左目を覆い隠すように包帯を巻いている。火傷の痕は回復魔法やポーションで治すのが難しいと言う事。不良(金髪)になったレンヤといつも通りに朝食を済ましている。この2日間、会わなかっただけでまた包帯が増えている事にレンヤは困惑していた。


「あはは、この調子にだと、来週あたりはアサシンゾンビみたいになるかもね」

「なんだそれ」


 そのアサシンゾンビってのは知らないけど...はぁー、不便だ


 両足はギブスで固定され、車椅子の生活のアリス。さて、彼に何があったのかと、昨日の朝までに時間を巻き戻そう。


「召喚魔法を教える...」

「わぁーい!」

「よっ!クロエ先生!」


 メガネをかけているクロエに、リンとアリスはパチパチと手を叩く。

 クロエの貯金で本来売っていない山の土地を購入してくれた。なんとガンテツの工房の後ろの山を安い価格で買えたそうだ。だが、本来は人が住む事を想定していなく建物は一軒も経っていない。近くに大量の各多種な木材やレンガが置かれていた事に、アレはなんだ?とクロエに聞いたところ。


『ん、あとはよろしく』


一体何をよろしくされたのだろうか。

 もしかして1人で家を建てろと言うよろしくだろうなのか?まぁ、木材もクロエの言葉も見なかった、聞かなかった事にしよう。まぁ、仮にそのよろしくなら近所に住む便利で優しいドワーフさんを巻き込むとするか。


「召喚魔法は...まぁ使い魔召喚」

「...説明、それだけ?」

「前も説明した...疲れてるから、めんどくさい」


 まぁ、何回も説明されてたし、今頃説明は不要だな。確か、自分の魔力の波長と合う使い魔になるモノが現れると言っていたな。


 そしてクロエは本当に眠そうな顔をしている。

  クロエは確かに魔法の才や魔力量が卓越している。だが、別に完璧ではないらしく、全回復するのに1週間はかかるそうだ。クロエは魔力回復する為に空中にある魔素の吸収が遅く、普通の魔法使いより3倍も遅い。理由は質の良い魔素しか受け付けられない体質だそうだ。


 最も魔法使いが魔素の吸収率が高まるときは睡眠をしている時。クロエがよく寝ているのは、より速く魔素を吸収する為である。


「んじゃ、これ持って」


 クロエは魔法陣が刻まれている羊皮紙を2人に渡す。


「あ、忘れちゃった...アリス、ナイフある?」

「ん?...えっと、ほらよ」


 アリスは、いつも天涯砕きをボックスから出してる訳ではない為、もしもの為にすぐに出せる様に腰に短剣をさしている。アリスは銀の短剣を鞘ごとクロエに渡す。


「まず魔法使いにとって使い魔は自分を強くさせてくれる存在。3年生となると、殆どは使い魔を持っている。そして使い魔にも種類がある。妖精型、悪魔型、特殊型ね。強さとレア的に妖精型が低く、悪魔、特殊って順番」

「精霊はあるのか?」


 精霊と契約して主人公を強くなる、漫画でよくある展開だ。


森人エルフ以外の種族では無理...試した事ないから実際は分からないけど、多分ボクにも応じてくれない」


 そして説明は続く。

  使い魔と契約している魔法使いで、妖精型が64%、悪魔型で35%、特殊型が1%の割合だそうだ。もしイフリートが使い魔契約をしてくれるなら、特殊型となる。


「悪魔には72体の使い魔の種類がある。大体の魔法使いは数字が若い程、その悪魔と契約したがっている」

「へぇー、例えば有名な魔法使いでどんな悪魔と契約してるんだ?」


 悪魔72体?...ソロモン72柱と一緒みたいなものか?


「モロンディアー法国の魔塔の9階層守護者6大賢者の内、2人はマルバスなの」

「ん?使い魔は魔法使いと複数契約できるのか?」

「できる。逆に魔法使いからも使い魔と複数契約できる。まぁ、こっちは魔力消費を考えると、一体の悪魔とだけ契約した方が効率的だけど」

「魔法使いメリットは分かったけど。悪魔...いや、使い魔からのメリットは?なんだ?」


 悪魔といえば何か代償とかあるだろ?


「うーん...あまりそこら辺の知識はないから、よくは分かってないけど。詠唱の言葉から悪魔側はこのユグドラシル...いや、下界って呼んでるんだっけ?この世界で自分の名を轟かせる程パワーアップするんだって...」


 なるほどな。つまり、お前を強くするから、お前を強くした俺の名前を世界に知らしめろ!って事か...悪魔との契約はスポンサーとの契約みたいなもんか。


「ん?てか、悪魔達はどこにいるんだ?この世界ってことは他に違う世界があるってこと?」

「ん...別次元の世界にいる。確か、6つの世界があって、それを第六次元世界って呼んでて、天界、魔界、霊界、竜界、輪界そしてボクらが住む下界。ボクらは下界をユグドラシルって呼んでるけどね。詳しいこと知りたかったら、本を貸す...」

「それはありがたい」


 別に俺は本を読み漁るほど頭が良いって訳じゃないが、この世界の知識があればある程生き残れる確率が上がる。


「うーーん...??」

「ん?」

 

 そしてずっと黙り込んでいるリンの方を、チラリと見ると頭から、2人の会話を聞いていて頭がショートしたのか、文字通り熱気が出ているのが分かる。


「悪い、話を脱線させちまったな」

「まぁ、知は力なりって言うし...良いんじゃない?」

「ん?それ誰の言葉だ?」


 地球にもそんな言葉がある。誰が言い出したのかは忘れたけど...


「さぁ?ことわざみたいなもんじゃないの?誰が言い始めたのかは知らない」

「そうか...」


 殻携と言い今のことわざと言い、やはり、俺以外にも転生者はいるのだろうか?もしいるなら話をしてみたい。


「んじゃ、召喚儀式を始める。2人はちょっとおかしいから、何があるか分からないから、1人ずつしてもらうよ」


 それは褒めてるのか?悪口なのか?


「なら、質問魔のせいで退屈になっているリンからやろう」

「え?!わーい!それでどうするの?」

「簡単。その紙に魔力を流すだけ。そしてボクと同じように言って『汝よ我に姿を見せよ、我の杖となり剣となる我が道を導く運命よ。汝の力を我に捧げ、我は汝に名誉を捧ぐ事を、ここで約束の契りを交わす』ってね」

「ええっと」

「大丈夫、ゆっくりで良いよ。ボクの汝よ我に」

「な、汝よ我に」


 リンはクロエの言葉を復唱する。

  そして、詠唱を続けると、持っていた紙が燃えてリンの足元から魔法陣が現れる。


「契りを交わす」

「ん...これで魔法陣に血を垂らせば、現れるはず」


 リンはクロエから短剣を受け取り、手のひらを切って血を垂らす。


 うわっ、大胆にばっさりいったぞ...普通指先をちょこんって切るんじゃないのか?俺は怖くてできないな...


「キュウ?」

「やっぱり特殊型...ドラゴンか」


 現れたのは小さな翼をパタパタと飛ぶ、赤い鱗を持つ赤ちゃんドラゴンだった。


「わぁー!可愛い!」

「キュキュ!」


 赤ちゃんドラゴンはリンに飛びつき、抱っこする形になる。クロエも可愛い眼差しで頭を撫でる。


「俺にも触らせろよ」

「ぐがあ!!」

「んぎゃあ!!!」


 頭を触ろうとした瞬間、赤ちゃんドラゴンは口を開きアリスの頭に火を吹いた。ギリギリ避けたが、毛先が少し燃えてしまっている。


「このクソトカゲがあ!この歳でハゲになったらどうするつもりだ!」

「キュウキュウ!」

「あ?なんだそれは?メンチきってんのか?」


 おっかしいな...なんで初対面からこんなに敵意むき出しなんだ?...あっ、こいつオスか!


「ふーん、なるほどー」

「キュイ!」

「あ、アリス君!乱暴は辞めてよ...?!」


 アリスはドラゴンの首根っこを掴み奪い取り。

  そして見せつけるように、リンの頭に手を回して自分の胸に当てる、舌を出してドラゴンに挑発をした。ドラゴンはリンが近くにいる為アリスに炎を出せなかった。いきなりな事にリンの顔は真っ赤になる。


 こいつ、自分の主人が取られると思って警戒してるんだな?嫉妬魔めー


「何してんの」

「ぐはっ」


 後ろからクロエがジト目で背中を蹴ってくる。


「キュウ!」

「あっ」


 ドラゴンは解放され、リンの胸に飛び込む。


「んで、名前はどうするんだ?」

「名前?うーん...あっ!ジャッカル!」

「ん??!」

「あ、でも長いしなー」

「そ、そうだな。3文字とかが良いよなー」


 ビビったー...急に前世の、愛情を込めてめちゃくちゃ改造した小銃...愛銃の名称を聞くとわな...


「カムイ!ビビッときた!」

「神威か...良いじゃんか」

「よろしくね、カムイ」

「キュウウー」


 リンが頭を撫でる事に、カムイは嬉しそうに尻尾をふる。


「んじゃ、次は俺っと...えーっと、汝よ....」


 リンと同じ行動を取る。

  そして魔法陣が現れ、指先を少し切って血を垂らす。


「?!」


 クロエの指示、リンと同じようと行動したのにも関わらず、リンのようにただ使い魔が現れる事はなかった。魔法陣が暴走したかように回転速度が上がる。

 そして青色だった魔法陣が赤黒くなり、赤い雷が魔法陣からビリビリッ!と走る。


「やっと余を呼んだか、小童よ。待ちくたびたのじゃ」

「...こ、子供が出てきた!」

「うっ...嘘、人型に共通語まで喋ってる...72体の悪魔で共通語を喋るのって上位12体だけ...」


 魔法陣から現れたのはクロエよりもっと幼い、小学6年生ぐらい少女。グレーの髪色に毛先が青みがかった紫を左右に分けてそれぞれを結んでいる。そして彼女の紫紺の瞳は神秘的な宝石のように輝いている。

 何より気になるのが少し尖っている耳に、うさ耳の様に前に垂れている大きな黒いツノ。そして背中には大きな黒い翼があった。


「でもここまでの人型は72体の悪魔にいない...」

「そこの女よ!余は悪魔ではない!堕天の王なりよ!間違えては困るのじゃ」

「...俺の使い魔これ?もっとデカくてかっいいの想像してたんだけど...」


 こう、大きな狼とか、リンみたいな黒いドラゴン、炎を纏う不死身の鳥とか、失われし技術で作られた巨大ロボットとか...


「それでアンタ、名前は?」

「うむ、真名は明かせぬが、我の正体を心に刻み込め、堕天の王であり、そして次期憤怒の王とは我である!憤怒の王の剣よ!」

「は?」

「憤怒?...あっ、もしかして七つの大罪か!」


 おお!聞いたことあるぞ!なんか強そう...ん?


 何故かクロエは震えた手で、アリスの服を掴むのであった。

  表情は怯えている訳ではないが、青ざめた様子である。


「...え?」


 

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