第11話 シオンの責任感:年上としての世話焼き

小春の「事件」は、すぐにシオンの耳にも入った。執務室で報告を受けたシオンは、深くため息をついた。彼の体からは、「困惑」と「疲労」、そして微かな「責任感」の香りが立ち上っていた。

(またか……。あの娘は、本当に予測不能だ)

シオンは、小春が純粋で悪意がないことは理解していた。しかし、王族としての立場、そして周囲の目を考えると、小春の無邪気すぎる行動は、時に大きな問題を引き起こしかねない。彼は小春より12歳も年上だ。異世界から来た世間知らずな子供を、自分が保護し、導かねばならないという使命感を強く感じていた。

その日の午後、シオンは自ら小春の部屋を訪れた。小春は、リリアに選んでもらった、この世界の貴族の娘が着るような、シンプルなドレスに着替えていた。しかし、そのドレスもどこか着慣れない様子で、小春の「居心地の悪さ」の香りがする。

「小春」

シオンの声に、小春はびくりと肩を震わせた。

「シオン王子! どうされましたか?」

「今日のことは、リリアから聞いた。何故、そのような格好で食堂に降りた?」

シオンの声は、いつになく真剣だった。彼の体からは、小春に対する「心配」と「諭すような気持ち」の香りが漂う。

小春は、顔を俯かせた。

「ごめんなさい……。まさか、あんなに怒られるとは思わなくて。現代では、普段着で食事に行くのは普通だったから……」

小春の声は、申し訳なさそうに震えていた。彼女の体からは、「反省」と「しょんぼり」した香りがする。

シオンは、そんな小春の姿を見て、胸が締め付けられる思いだった。彼女に悪意がないことはわかっている。ただ、この世界の常識を知らないだけなのだ。

「いいか、小春。この城では、厳格な規律がある。特に、王族や貴族たちが集う場では、服装や振る舞いがその者の身分や家柄を示す。お前の無意識の行動が、他者から見れば、無礼と取られかねないのだ」

シオンは、諭すように丁寧に説明した。普段、こんなに長く、誰かに何かを教え諭すことなど滅多にないシオンだ。彼の体からは、「忍耐」と「教え導こうとする気持ち」の香りがする。

小春は、シオンの真剣な言葉に、顔を上げた。彼女の瞳は、純粋に理解しようと努めている。

「そうなんですね……。なんだか、日本と全然違って、難しいです」

「難しいと感じるのは当然だ。お前は、見知らぬ異邦から来たのだからな。だが、この城で暮らす以上、ある程度の常識は身につけねばならない。お前の身の安全のためにも、だ」

シオンはそう言って、小春の頭に、不器用に手を置いた。その手から伝わる温かさに、小春は少しだけ安心した。シオンの体からは、「心配」の香りがさらに強くなった。

「私が、できる限り教えよう。分からないことがあれば、私に聞け。リリアにも、改めて協力を頼んでおく」

「シオン王子……ありがとうございます!」

小春は、シオンの言葉にパッと顔を輝かせた。彼女の体から、満開の花畑のような「喜び」の香りが立ち上る。シオンは、その香りに、なぜか心地よさを感じ、彼の体からも微かな「安堵」の香りがした。

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