私の脳みそは、どこか異常なんだと思ってた。
海音
第1話 一人だけど、独りじゃなかった
私、今パソコンのキーボードを叩いている、小説家の私。今から幼少期の話を書く。
これは、母親から聞いた話でもあり、自分の記憶でもある。
私はひとりっ子。そして、親族の中で“初孫”。
毎年、誕生月には私の実家に両家の親族全員集まって、おじいちゃんがWordで作った『〇〇ちゃん おたんじょうび おめでとう』と書かれたコピー用紙を壁に飾り付けた。
大きな誕生日ケーキ、たくさんのプレゼント。
私はそんなふうに、たっぷり愛されて育った。
だから、おもちゃやゲーム、ぬいぐるみ、人形、絵本……
ひとりっ子の退屈を凌ぐ道具はたくさんあった。
でも、家の中で子どもは私だけ。
両親も遊んでくれたんだろうが、全くそれは覚えていない。
そんな中、ある日突然、家の中に友達ができた。
それは、今もよく語らう母と私の、共通した『違和感』の正体。
私にできた友達は、私の背よりも縦に長い鏡付きのタンスだった。
厳密に言うと、友達は『鏡の中の自分』。
別に、幼稚園に行けば、友達はたくさんいた。
だけど、私を一番分かってくれて、私のほしい言葉をかけてくれるのは、いつも鏡の中の友達。
私は、鏡の前に立ち、母が声をかけるまで会話していたらしい。
「あなたのなまえは?」「わたしはね、〇〇っていうの」
みたいな会話だったと思う。
私は多分、『ごっこ遊び』の延長線上でやっていたのだと思う。
でも、不思議なのは他の記憶は曖昧なのに、このことは自分が妙にハッキリと覚えていること。
そして、母も『娘の笑い話』として、何度も繰り返し語るということ。
それだけ、母にとっても衝撃的だったという証明だろうか。
私の本当の友達は、この頃から自分自身だけだったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます