散りゆく青に、さよならを

椎名類

ひとひらの花弁

 透ける指先から赤い花弁が落ちていく。

 自らの輪郭が空間に溶けていくように、物質としての役割を放棄するように。


「お願い。もう一度だけ」


 ひとひらの赤を口に含んで、花弁が溶けたら。

 きっと彼女は消えてしまうだろう。

 切なる願いを抱いて、彼女は青春をやり直す。


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