第8話 パーティーの始まり
パーティー当日。
アイリスの準備が終わる頃に迎えにやって来たのはパートナーのカイだった。
「アイリス、よく似合っている。綺麗だよ」
朗らかに笑うカイにアイリスはほんのり頬を赤く染め上げた。彼女が身に纏う美しいドレスはカイからの贈り物。用意したのはそれだけじゃなかった。ドレスに似合うネックレスやイヤリングも彼の贈り物だ。
「カイもよく似合ってるわ」
久しぶりに見るカイの正装姿その中央に位置するネクタイはアイリスがプレゼントした物だった。
アイリスからの褒め言葉にカイは嬉しそうに笑う。
「じゃあ行こうか」
馬車に乗り込むとアイリスはふとあのことを頭によぎらせた。
「実はハリー殿下からドレスが届いたの」
「は?」
昨日、王城からの使いが公爵家を訪れた。困ったような顔をする彼から渡されたのはハリーからの贈り物。婚約解消は皆が知るところになっているからこその使いの表情だったのだろう。
「彼の名前が使われているけどきっと彼が用意した物じゃないわ」
昔からそうだった。贈り主はハリーの名前が使われているが実際に用意しているのは全くの別人。彼がそんな気の利いたことが出来るわけないとアイリスもよく知っている。
それでも幼い頃はハリー自身からの贈り物だと思っていた。ある時を境にそれが勘違いであったと知ったけど。
婚約を解消したのだからもう贈らなくても良いのに。きっと手違いが起きたのね。
アイリスは内心そう思っていた。
「贈られてきたドレスはどうしたの?」
「手違いだと思って送り返したわ。それに私にはカイから貰った物があるもの」
「そうか。良かった」
安心したように息を吐くカイを見てアイリスは眉を少し下げた。不安にさせるくらいなら言わなければ良かったと。しかし後々知られる方が誤解を加速させそうだとも思ったがゆえに伝えたのだ。
アイリス達が王城に着く頃にはほとんどの学生が入場を終えているようで玄関先には疎らにしか人が居なかった。
「少し遅れちゃったかな」
「気にしなくて良いわよ」
普段のパーティーならば下位貴族からの入場が義務付けられているが今回は学院主催の緩やかなパーティーだ。貴族の堅苦しい決まりは平民達にとっては厄介なものになると分かっている。その為、自分の好きなタイミングで入場出来るようになっているのだ。
「入りましょうか」
「そうだね」
二人が会場に入ると貴族達の視線がこちらに向いた。鋭い物ではなく温かく見守るものようだ。中には同情するような憐れんだものまである。どうやら王妃様の作り上げたシナリオが良い作用をもたらしているらしい。
仕方ないとはいえあまり注目も浴びたくないとアイリスはカイと一緒に壁際まで寄った。しばらくすると会場内が大きくざわつく。
皆の視線の先を追ってみるとそこにいたのはハリーだった。
「あの子がマイラか」
「ええ、そうよ」
ハリーの隣に立っていたのは平民の少女マイラだった。彼の髪色である金のドレスを身に纏っている。
可哀想に。あれだとドレスに着られちゃってるわ。
アイリスは心の中でマイラを憐れんだ。
「ハリー殿下、何か探してるね」
カイの呟きを聞き取ったアイリスがマイラからハリーに視線を移すときょろきょろと周りを見回していた。確かに何かを探すような動作だ。
私には関係ないわ。
どうでも良いと興味をなくした瞬間、さらに会場がざわつく事態となった。
「おい!アイリス!」
ハリーがアイリスの名前を叫んだのだ。
顔を上げるとずかずか近づいて来るハリーの姿にアイリスは困惑する。
「アイリス!どうして僕と入場しないんだ!」
は?どういう事でしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。