第43話 巡回の途中にて
正直、緊張や警戒していたことは認める。
貧民街を少し離れた次の街では案外とひとのいい人達の集まり。
貧しくも、健気に生きているひとたちだった。
「絶対にの口にしてはなりません」って言うお茶をおもてなしとして出された。
これは心に痛かった。
彼らの「せめてものおもてなし」が、私にとって有害なものだった。
これは早急に解決せねば、と思って、その次の街ではお茶とお茶菓子を持参した。
外交役の家がそれに感動していた。
前世の記憶から思いついたことだったけど、王族から贈り物はこちらでも特別。
高級な茶菓子を一緒に食べて、お茶を飲む。
「光栄です、姫」
泣きながらそう言われて、なんとか精神的に持ち直した。
途中、途中、兵士たちに指示して、よもぎを植えておいた。
【よもぎすらない】と言う意見から思案したもの。
次の街には、本当に・・・
なぁんにも、ない・・・
兵士たちも少しの間、唖然としていた。
唯一の食べ物が、虫。
これはどうにかせねば、と皆が話し合った。
やはり『よもぎ』だろう、と言う意見は多かった。
「疾風っ」
そう言って私は風魔法を扇を使って発動し、土を掘り起こした。
ふかふかになった土に、兵士たちが持参してあるすきやくわで手入れ。
そこによもぎを植えて、その集落に「よもぎ屋」をしてくれと頼んだ。
平服して泣かれた。
そして、恒例のリンゴの木の植林と〈サカス・サカエル〉。
「奇跡だっ」と歓声が上がった。
食用の見映えする花の苗も用意してあったので、兵士たちに植えさせた。
「心に花を」
ひとりごとをつぶやいたのに、周りにいる兵士たちが自然と言葉を反芻した。
「「心に花を」」
「心に花を!」
集落のひとたちがその言葉を聞きつけて、大声で喜んでいた。
その言葉を胸に生きます、と、集落長から泣きながら言われた。
野菜や果物の苗は、当然喜ばれた。
故障した機械の修理を、技師たちがしてくれた。
老朽化した家の解体と新しい家の建築に、数日しかかからなかった。
その間、天気は曇りで風は涼しいし作業がしやすかったと報告があった。
次の街では案外と普通っぽい環境に見えた。
ただ、田舎としては、だ。
やはり彼らいわく「何もない」。
「質素な暮らしを選んだし貧しくはないが、余分なことをする金がない」。
それは手紙で読んであって、対策を考えてあった。
フードファイト。
兵士たちが特設舞台と観客席を作り、村のひとたちは興味津々。
内容は彼らの健康を考えて、「ふりかけおにぎり」。
料理番たちが、「型があってよかった」と言った。
――そんなに、素手でにぎったのイヤなんだ?
うん、まぁ、それはいいか。
フードファイトは大盛り上がり。
そのあと望むひとに残りのおにぎりを無くなるまで別けて終了。
よもぎを植林していた兵士たちと合流。
ご褒美に、ナイスの缶詰を開けてもいいことになった。
兵士たちは季節はずれな「ナイス」に、感動。
「姫の慈悲に感謝します」と代表が報告をくれた。
なんたって、ナイスの缶詰を作ったのが姫―つまり私―だって知れている。
「よもぎを植えてる時に幸せなんです。確実に何かの役になってるって」
それを聞いて感動して、泣きそうになった。
――前世のおじいちゃんとおばあちゃん、ありがとう。田舎で暮らせてよかった。
それからもよもぎの植林は続けて、難しかった野いちごなんかも植え始めた。
野いちごの葉は、乾燥させてお茶になる。
実ももちろん美味しい。
今までは道が不潔だったので、水たまりなんかも危険な油が浮いていたり・・・
その対処にルシーナがあたっていた。
道の舗装、ってことだ。
それから、缶詰は料理番が洗って、技師たちに贈った。
技師たちは魔法石指輪「藏之助」と呼ばれる魔導具で亜空間に缶詰を入れた。
目の前で見ていたけど、発動に「ヴン」って音がしていた。
「この旅に同行できてよかったって思ってますからね」
「そう思ってくれて嬉しいです」
「あんたさん、聖女さんやからって、なにかあったら自由同盟国においでぇな」
「ははは。ありがとう。身体にいい茶葉でも持参します」
周りのひとたちの小さな笑い声。
サクラ君と言えば、実は兵士長次席なんだけど氷魔法を皆のために使いっぱなし。
なんたって、ラク・フレイアは暑がり。
サクラ君の氷魔法と、兵士たちの風魔法で一行は案外と涼しい旅をおくっている。
ただ、技師たちが「ラク・フレイアの暑がりが気になる」と言っていた。
不思議に思っていたけれど、ラク・フレイアの機械化された身体はすでに寿命近く。
それを知ったのは、旅の途中。
不用意にいじくると寿命を縮めかねないくらいには旧式ならではの複雑さらしい。
技師が、あとどれくらい持つのか分からないと言う。
壊れたら、ラクの生身の部分も処置をしないと寿命を迎えると診断された。
それでも旅に参加する、とラクは言った。
瘴気に見合って分析できれば、瘴気を払えるかもしれない、と。
――
―――――・・・
次の街からはフードファイトのうわさがすごかった。
ラクは嬉しそうにニコニコしている。
約百五十年、軍人をしてきたひと。
軍人としての任務で神父もしてきたひと、ラク・フレイア。
技師たちが、自由同盟国に連絡をしたい、と郵便鳥さんの予約をとった。
その内容は図面。
ラク・フレイアの旧式の身体の部品を、新しく作り直したい、と言うもの。
間に合うのか分からないが作ってみる、と返事が来た。
郵便鳥さんは、フードファイトを閲覧したあと、「感動した。行く先はまだまだや。頑張るんやで」と言って空に飛び立った。
なんだかありがとう。
サクラ君も郵便鳥さん見れて喜んでるし。
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