第13話 メロリンコルン大量消費


【 薬酒は、うすめたらよかったのだと認定されました。】



 そんな手紙が来たのは、メロリンコルン業者から。


 メロリンコルンは、薄いピンク色をした多輪花弁の甘い芳香をする植物らしい。


 薬酒にメロリンコルンを入れる割合が全体的に減って・・・


 そしてメロリンコルン業者が困っているらしい。


 余っている、と。


 文句と言うより依頼で、メロリンコルン活用法があるなら教えてくれと言われた。


 メロリンコルンは最近出回り始めた食用花。


 加熱することで食せることが分かったんだそうだ。



「ジャムなんてどうかな?」


「「ジャム?」」



 自室にてサクラ君とラク神父に相談してみた。


 なかなか田舎にはジャムはない。


 前世の記憶から言ってみたのだ。



「それ、ええなぁ」


「メロリンコルンの花弁はジャムにしてもきっと美しい」



 その件を手紙にして返す。


 異世界にも郵便屋さんはあるらしい。


 ただ、郵便鳥(ゆうびんちょう)って言う、鳥は知らなかった。


 大きめの鳥で、ちょっとおっかなびっくりしてしまった。


 斜めがけのカバンを持っていて、中にはお届け物を入れるらしい。


 料金の支払いも、その郵便鳥にする。


 一体どんなシステムなのかが分からない・・・



 うーん・・・でも、喋る鳥とかあちらにもいたなぁ。


 小さい頃、近所の女の子が飼っていて、家まで見に行ったことがある。


 それ以来、ちょっと鳥が怖くなるくらいに喋る鳥だったなぁ。


 飼い主さんと会話してたし、歌をたしなんでいるし・・・


 声が独特だし・・・


 嫁にならないか、って言われて怖くなったんだった。



 それを話したら、サクラ君とラク神父は苦笑した。


「そういうのはなぁ、お腹空いたら食べたらいい」


「え?・・・今、誰が言ったの?」


「じゃあな」


 郵便鳥さんがそう言うと、空に羽ばたいて行った。



「えっ、えっ・・・ええーっ?」



「郵便鳥はんが喋るって珍しいんやで?」とサクラ君。


「貴重な体験をしたなぁ」とラク神父。



「え・・・あ、貴重な体験なんですね・・・」



 ――

 ――――・・・


 後日。


 手紙への返事が来た。


 郵便鳥さんは、斜めがけのカバンの中の瓶詰めのピンク色のジャムを示した。


「サンプルらしい。あと、お手紙あるよ」と郵便鳥さん。


「素晴らしいな」と立ち会いのラク神父。


 

 サンプルのジャムを、皆でパンに塗って食べてみた。



「う、うーわー。何このお口の中に広がる香りと甘みぃ。感動駆け抜ける」


 そう言ったのは村の子供たちのリーダーのヤホン君。



 ヤホン君は言の葉、すごい。


 前に『ハナバチ』って言い方のきっかけになった子だ。



 サクラ君は「美味しいけど好みじゃない」と言った。


 ちょっと残念。


「美味しいのになぁ」とラク神父。


「なんや、戦いたくなくなるやろが。この味ぃ」


「分かる分かる。素晴らしいな」


「なんなんや・・・伝説の兵士やのに・・・」



 手紙を読んでみると、1枚目はお礼状で2枚目は更なる依頼だった。


 これを先に読んだ担当が、先にジャムを食べるのをうながした。



 相談か依頼ってことになるのかな?


 薬酒にはメロリンコルンの種を使う場合もあったんだけど、大量に残ったと。


 どうも開発はできるけどインスピレーションは来ないらしい。


 これは極秘であるのだけど、メロリンコルンの種は炒ると食べれるらいしい。



「あ。これは本当ですよ。昔は炒ったやつを袋に入れて非常食にしていました」


 と、ラク神父。


 さすが百五十年生きていると、知識量も違うのね。



「なんで今は伝承されてないんじゃ?」とサクラ君。



 ラク神父は苦笑したあと言った。



「あんまりにも口の中に入れると危ないんです」


「何が?」



「炒り方によっては発芽するんです。体内で」


「はぁっ?」



「うっわ、こっわー」



「それから、この間、謎が解けましたが、接種のしすぎは呼吸が荒くなるんです」


「・・・なるほど、身体がびっくりする、ってやつか」



「炒り方に気をつけたらいいんけ?」


「味も香りもいいのになぁ・・・」



 数秒の間にぱちくりとしばたいて、私は言った。



「向こう側での知識なんですけど、『シードケーキ』って可能ですか?」



「「・・・『シードケーキ』?」」



「そうだ。お手紙で提案してみよっと」




 まずメロリンコルンの種を炒って、生地に混ぜて練って、オーブンで焼く。


 成功したらとってもいいものだと思いますよ、と添えた。


 それから、炒ってあるメロリンコルンの種を市販してみたらいい、と。



 ――きっとこの世界にも、お料理好きはいるはず。

 


 その予測は大的中。


 捨てるのはもったいない、を謳い文句にするらしい。


 サンプルを受け取ると、手紙にはこうあった。



 種の分量を調節するのに少し時間がかかりました。


 遅れてすいません。


 感想、欲しいです。


 三日間様子を見て、大丈夫でした。


 発芽しませんでした。




 保存が三日は続くタイプのケーキがいいと思ったらしい。


 そう言えばシードケーキが食感が硬いタイプらしいことを言うのを忘れていた。


 届いたサンプルはマフィン型で、ふわふわとしている。


 口の中に入れてみると、芳醇な味わいと香り。


 見た目も薄いピンク色で可愛い!!



「問題は摂取量だなぁ。こんなに美味しかったら、また発作が気になります」


「制限かけたらいんとちゃうの?」とサクラ君。


「それだ!」



 手紙に、摂取の適量を知っているなら検討してください、と書いた。


 メロリンコルンの種一袋分や、シードケーキを月に何個食べて良いのかを。



 ――

 ――――・・・



 手紙でのお返事はお礼状だった。



 メロリンコルンシードケーキは、月に三つまで。


 そうじゃないと、あっちの意味で死ぬ、とうわさ好きに協力してもらったらしい。


 最初はどうなることかと思ったけど、大成功。


 そんなに貴重なものなら、ぜひ摂取してみたいと新規の客が集まったらしい。


 料理好きな主婦とかが、プロが炒ったメロリンコルンの種に感動して拡散。


 どうやら名物になりそうだ、とのこと。



 そのあと熱い熱いお礼の言葉が書いてあって、感動。


 ただ、「王室御用達」として頑張ります、って書いてあった。



 ・・・ん?


 姫が考えたから王室御用達?


 どういう意味だろう??



 そう思っていると、郵便鳥さんではなくて村人の若衆が駆り出された。


 なんと、取りに来てくれるなら献上するらしい。


 村の人口は百人とちょっと・・・


 全員分を、毎月一回くれるらしい。


 喜び勇んで村を出た若衆は、「本当にもらえた~」と満面の笑み。



「何かあったらと思って護身と自害用にナイフ持ってたけど、使いどころなかった~」


「袋から、すでに・・・良い匂い!」



 群がった村人からの感動の声、沸く。


 メロリンコルンの種でのシードケーキの成功は初めてらしい。



 少し都会から取材が入ったらしい。


 そして「王室御用達」だと・・・取材の時に自然と言ってしまったらしい。


 その件で王宮から手紙が来ていた。



【 あなたが異世界転生者であることはすでに報告を受けています。


  占い婆が言った通りだ。


  折りがあれば王宮に呼びますので、ぜひお顔をお見せ下さい


  王宮より 】



「あなたは・・・もしかして・・・姫、なんですか?」


 郵便鳥さんいそう言われて、「多分」と答えると握手を求められた。


 なんだか断りきれずに握手をする。


「しばらく手を洗いません、ってあっち側の言葉があるんでしょう?」


「えっ?」


「いい、いい」


 そう言って郵便鳥は華麗に空へと羽ばたいた。



 どうもサクラ君いわく、世界で最強の鳥かもしれないらしい。


 なぜか鷹とか鷲とかが近づきたくない雰囲気みたいなのを鳥語で放っているらしい。



 ――こっちの世界、鷹とか鷲はいるのか・・・



 どうも話に聞くに、爪に猛毒を持っている『毒カラス』と言う鳥もいるらしい。


 普段、里に降りてくることも特にないし、この村は生息地について無縁に等しいらしい。



 郵便鳥さんには妙に嬉しそうにするサクラ君を見て、なんだか意外だった。


 小さい頃、珍しい客として里で慕っていたらしい。


 サクラ君は、郵便を里の全員分を受け取る係の家だったんだそうだ。


 だからって、複数いる郵便鳥さんを見分けるのすごいな・・・

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