第22話「仲間ってモンでしょ」



「席に着けガキ共、朝のホームルーム始めるぞ」


 チャイムが鳴ってすぐに、担任の女教師が教室に入ってくる。そしてすぐに、開けっ放しになったドアの向こうに手招いた。ガタイのいい、目付きの鋭い少年が入ってくる。


「えー、ずっと病気で休んでいた大昌だが、治ったので復学することになった。まだ体調が万全ではないから体育の授業などは休むことになるが、みんなで適当に労れ」


「心配かけたな」


『大昌くん! おかえり!!』


 彼を慕うクラスメイトたちの声が、鼓膜を重く震わせるほど響いた。やっぱ人望あるじゃん、と苦笑する。勿論、一番叫んでいたのは子分たちだったが。


「朝のホームルームは以上。このまま授業するから騒がず静かにしてろよ」


 と言われて小学生が素直に従うはずはなく、大昌の席の周りの子を中心に彼への質問攻めが始まり、それを後目に普通に授業が始まった。いや注意しろよ。


「…………」


 一瞬、大昌がこちらを向いた気がしたが──彼はすぐに周りへの対応に戻った。



 *



「じゃ、今日も『ナッシュ』に行こうか」


「き、昨日デッキ弄ったし今日は負けないよ!」


 いつも通りの放課後。草汰と翔がワイワイと話す中、聞き慣れた重たい足音が響いてきた。見ると案の定、大昌が立っていた。


「……よう」


「おっす」


 主に耀が睨み続けているせいか、大昌はどこか居心地が悪そうだった。そんな気まずい沈黙を破るように、大昌は「おまえら、いままで悪かったな」と頭を下げた。


「ア、アタシたちは別にいいけど、龍一にちゃんと謝りなさいよ!」


「大丈夫、その辺はこの前お互い解決したから。な?」


「ああ」


 いままで散々揉めてきたからか、耀はまだ納得していないようだったが、草汰は「自分の非を受け入れたならいいんじゃないかな? そこで鬼の首を取ったように文句を言うのも、合理的じゃないし」と納得している様子。翔に至ってはそもそも大して被害を受けていなかったので「気にしなくていい……よ?」とイマイチわかっていない印象だった。


「ふんっ……じゃあアタシも許すわよ! で、何の用!?」


「ちょっと報告があんだよ」


 ガサゴソとランドセルの中からデッキケースを取り出すと、一番上にあったカードを引っこ抜いて、「出てきてくれ」と大昌は言った。するとカードは光り、大昌の肩に赤いボディのロボットが状態で顕現した。


「も、もしかして──」


「紹介するぜ、おれの相棒──デストロイヤーだ!」


『ヨロシクタノム』


 ガシャンと駆動音を立てて、デストロイヤーは小さく頭を下げた。その姿を見て俺は、思わず涙腺が緩む。


「よかったな、大昌……ようやくお前のところにもビーストが来てくれたんだな……」


「ほんっとうに嬉しかったぜ、コイツが来てくれた時はさ……! まあ、お前らに迷惑かけたせいだから、ちょっとだけ喜びづれーけど……」


 大昌の話をまとめるとこうだ。

 入院中のある夜。ボーッとデッキを眺めていると、突然超破壊ロボ MAX・デストロイヤーのカードが光り、彼が現れたのだと。


『我ガスピリット ソノ一片ガ制御不能ニナリ 気ニナッテ元凶ヲ見ニ来タ。マスタート話シ 彼ガ主ニ相応シイト判断』


「ちなみに、どの辺が相応しいと思ったんだ?」


『感情ノ強サ。正モ負モ 感情ハ全テヲ破壊デキル可能性ヲ秘メテイル。ワタシガ現レタ際モマスターハ感情ヲ露ワニシ──』


「おい、恥ずかしいからその話はやめろ!!」


 顔を真っ赤にして、大昌はデストロイヤーの口(?)を塞いだ。

 なるほど。概ね、相棒がビーストのになったことで興奮し、自分の想いや感情をぶつけて口説き落としたのだろう。いいじゃん、青春って感じで。


「ゴホン──違ぇんだよ! デストロイヤーのことを話したかったのもあったけど、メインは違くて!」


 わざとらしい咳払いをしてから、大昌は一息置いて続けた。


「……おれに、お前らのやってることを手伝わせてほしい。入院してた時に、あの《機関》とかいう人たちからはある程度聞いたからよ」


「……それは駄目だ。闇札案件ダークカードパターンは、マジで命懸けなんだよ。大昌の時はマッドデッキケースだったから入院程度で済んだけど、たかが一回のスピストで、本当に命を失うことだってある。俺は、耀や草汰が付いてくるのだって、正直やめてほしいと思ってる」


 主人公オレの周りにいる以上巻き込まれるのは必然なのかもしれないが、好んで首を突っ込んでほしいわけじゃない。

 現実は、取り返しがつかないんだから。


「わかってる──おれだって、死にたい訳じゃねェよ。でも、許せねーんだ。あの時欲望に負けた俺も、それで迷惑をかけたことも、おれを唆したフードのヤロウも。何より、スピストで悪いことしようってのが一番許せねー!!」


「龍一、いいんじゃない? 仲間に入れてあげれば」


「そもそも人手が足りてなかったからね。彼はちゃんと実力者だし、力になってくれるはずだよ」


「お前ら話聞いてた?? そもそもお前らを巻き込むのだって俺は嫌なんだけど──」


「しょうがないじゃない、龍一が勝手に巻き込まれるんだから。それを助けてあげるのが、仲間ってモンでしょ?」


 ここぞとばかりにウィンクされてしまえば、俺は何も言えない。


「……なら、本気で鍛えるからな?」


「の、臨む所だよ!」


 ここぞとばかりに翔は力強く返事した。

 突き放したところで、どうせコイツらは首を突っ込んでしまう。それだったら、一緒に研鑽を積んだ方がマシだろう。

 そうなると、一度環境を整えた方がいいか……


「お前ら、このあと時間はあるよな?」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る