第3話 ロシアンブルー


碧月と別れたあと、俺は猫カフェでしこたま遊びまくって帰宅した。ベッドに体を放り投げ、天井をみあげる。


さて、夕飯までゲームでもするかな。


一軒家である俺の家は、二階建てで、その二階に俺の部屋がある。いつも夕飯ができると妹がラインで知らせてくれるので、それまで部屋で遊んでいる。


家族は俺と妹、父の三人家族。ペットはいない。昔一匹猫を飼っていたが、その子が亡くなってからはもう何も飼ってはいない。あの別れの辛さはもう二度と味わいたくないから。


とはいえ、猫は大好きだ。だからほとんど毎日のように猫カフェへと通い、猫吸いをしてキマる日々を過ごしている。


「みゃあ」


その時、ふいに猫の声が聞こえた気がした。いや、気の所為だろう。家に猫はもういないし、ここ二階だし。猫吸いでキマり過ぎたか?幻聴きこえた?


「みゃーあ」


再び猫の声。もしや幻聴ではない?


俺はカーテンをあけた。


「……え!?」


「みゃあぁ!」


するとそこにはなんと猫がいた。


「ま、マジで!?」


「みゃ!」


驚いた。確かに猫は高いところに登ることはあるけれど、家の二階までの高さは結構あるし、いままでこんなこと無かったから。


それにもう一つ驚いた事があった。それは、


「この子、あきらかに野良じゃないぞ」


「みゃ」


そう、どうみても野良猫ではない。毛並みが青く綺麗で目もまた青い宝石のような瞳をしていた。ロシアンブルーという猫。野良では絶対にいない猫だ。


「……これ、ひょっとして幻覚か?」


めをごしごしとこする。しかし、窓の外のロシアンブルーが消えることは無かった。……幻覚じゃない。俺の頭はどうやらまだ正常だったようだ。


「みゃあ」


また鳴いた。さっきからすげえ鳴くな。まるで何かを訴えかけてるような。とりあえず中に入れようか……放ってはおけないし。


俺はガラガラと窓をあけた。するとロシアンブルーは部屋の中へと普通に入ってきた。


「……おお」


そして俺の手に頭を擦り付ける。撫でろとでもいうように。


「いいのか、撫でて」


「みゃぁーあ」


俺の問いに答えるかのような鳴き声。


「まじで?いいの?じゃ、お言葉に甘えて」


なでなでと頭を撫でる。するとロシアンブルーは気持ちよさそうに、さらに俺の手に頭をつよく当ててくる。めちゃくちゃ人懐っこいなこいつ!可愛いいい!!


「ふにゃう」


ぐるぐると喉を鳴らすロシアンブルー。あの、初対面ですよね?ロシアンブルーってこんな人懐っこかったか?てか、よく喋るな……こんなに鳴く猫じゃないはずなのに。


きらきらのお目々を細め幸せそうに「にゃあにゃあ」と鳴く。瞳が青いということは、まだ子供だな。ロシアンブルーは成長するとエメラルドグリーンになるはずだから。


「……せっかくだから、ちょっと遊ぶか?」


「みゃあ」


昔飼っていた猫のおもちゃで遊ぼうか。机のおくにしまっていた小さな箱を取り出す。これには猫じゃらしとか色々な玩具が入っている。


「いま玩具だすからな。待ってろよ」


そうして箱を開けようとした時、


「みゃう、ぐるぐる」


と、俺の太ももにのってごろんごろんと腹をみせ甘え始めた。なんだこいつ、クソ可愛い……。


思わず箱を横において腹を撫でる俺。すべすべの毛並みが心地よい。


「ほんとに可愛いな、お前」


「みゃあーあぁ」


腹を撫でながら俺はふと気がつく。……この子雌か。


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