ツンデレキャット
カミトイチ@SSSランク〜書籍&漫画
第1話 ツンツンキャット
――この学校には、ツンツンキャットと呼ばれる美少女がいる。
白く薄く青みがかったショートボブの髪、海色の瞳と、雑誌モデルのような体型。肌は白く陶器のようで、スラリとスカートの下から伸びる芸術品のような美脚。
ロシア人の血を引く彼女は、まるで猫のように人に懐かず、しかし人形のような愛らしい顔をしていることから、ツンツンキャットと呼ばれていた。
(……またやってる)
多くの帰宅する生徒でごったがえしている下駄箱の前で、ツンツンキャットは一人の男に言い寄られていた。
「……お断りします」
下駄箱から靴を取り出しながら彼女は心のそこから興味のなさそうにそういった。
「頼むって、碧月!フリーなんだろ?一回くらい、ちょっとの間でいいからさ!俺の彼女になってくれよ」
「嫌です」
熱のないどころか、むしろマイナスにまで達する冷ややかな言葉を彼女は発した。
(……うお、怖え)
しかし容姿が容姿なだけにモテるよな、碧月。昨日は同級生の一年男子で一昨日は三年の女子に告白されていた。今の二年の先輩も何度断られてもくるし、告白する場所も所構わず……ほんと碧月も大変だな。
「わかった!じゃあ一緒に帰ろうぜ?待ってろ、いま俺も靴履き替えるからよ」
「嫌だっていってるでしょ、さよなら」
足早に玄関の扉を開き出ていく碧月。出ていく時、彼女は眉をまげ睨んだが先輩は意に介さずといった感じだった。
「待てって!逃さねえぞ、碧月!靴、靴〜っと……」
ツンツン塩対応で有名な碧月。その態度から、冷血だとかいわれクラスメイトからも敬遠されている。けど、彼女の身になればその性格にも頷けるはずだ。
ただ人よりも綺麗な容姿をしているだけで、これほどまでの面倒事を引き起こしてしまう。これがもし、笑顔を振りまき周囲に気を使うような優しい性格だったなら、勘違いした生徒が多発し今と比にならないほどの面倒な事態になるだろう。
多分、あれは碧月なりの防衛行動なのだ。
「……って、アレ!?俺の外靴は!?なくなってる!?く、くそ、もうこのまま上履きで……って、あ!もう碧月が居ねえ!?くそが!!」
先輩の姿が校内へ消えていった。靴を探しにいったのだろう。俺は後ろ手に隠し持っていた先輩の探し物を靴箱へと戻す。彼が一緒に帰ろうと切り出したとき靴箱から取り出し持っておいた。
(……これで逃げ切れたろ、碧月)
俺は依然からこうして碧月のフォローを密かにしている。別に好きとかそういう恋愛感情はない。ただ、ひとりで孤独に奮闘するあの子をなんとなく放ってはおけなかった。望んでああなったわけでもないのに、不幸になっていくツンデレキャットを少しでも生きやすくしてやりたかったのだ。
(……ネコ好きだしな)
さて、帰りに猫カフェで一杯ひっかけてくか。今日もモカちゃん元気かなぁ。
「……ねえ」
「え?」
校門を出て少し歩いたところで、唐突に声をかけられた。
「君、同じクラスの
「……あ、ああ」
いかにも。俺の名は鈴木 想助。ただの猫好きの高校生男子一年である。そして、そういうあなたは、
「なんだ、碧月」
碧月さんだった。いや帰ったんじゃなかったのかよ。なんでこんなところにいるんだ……?
彼女は腕を組み、こちらをじっと睨むように見ている。ちなみに彼女とはこれまで直接会話をしたこともなく、話すのはこれが初めてだった。
……た、対面すると威圧感すげえ。
俺の問かけからやや間があって、碧月の表情がわずかに揺らいぎ口を開いた。
「君、さっき私のこと庇ったでしょ」
「……!」
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