第29話 マクシミリアン様からの手紙

 リゼット様からのお手紙には、私は社交シーズン中に侯爵家の事を色々学ばせて頂いたので、週に一度両親の元に帰らせてもらえましたし、お友達とお茶会をしたり勿論社交の場でお会いすることも出来ました。時にはサミュエル様と観劇やディナーに出かけたりもさせて貰たので、時間にも気持ちにも余裕がありました。アドリーヌ様が大変な思いをしていらっしゃるのを気付かずに申し訳ない事です。その上結婚前から領地の為にアイデアを出せるなんて凄いです!お義母様と一緒に領地と貴女の為により良い方法で発展させていきますので楽しみにしていてください。

 なんか大絶賛って感じでこちらが恐縮してしまう。でも皆さん好意的に受け止めて下さって、なんとかうまくやっていけそうだ。


 そして最後に婚約者であるマクシミリアン様からのお手紙だ。一つだけ大きな封筒で、手紙以外に何かは言って良そうなのでつい後回しにしてしまった。普通婚約者からの手紙を一番最初に開けるものかもしれないけれど、少し嫌な予感もするので開けたくないのが本音だ。でもそうは言ってられないので封を切る。


 まずは手紙から読むことにする。

 内容は、婚約者に書くものではないよね。でもこれが本音なんだろう。取り繕っているより良いのかもしれないけれど、せめてあって面と向かって言って欲しかったかも・・・。物語にあるような『お前を愛することは無い』とか、『白い結婚にしよう』とか言われたら、お飾りの妻は決定だろうと覚悟はしているから『小説みたい!』と内心喜べたかもしれないのにね。


 まぁ、手紙に書いてあることを私なりに解釈すると、親友の第一王子殿下から、女性嫌いで結婚もしたくないと思っているのを知っているのに婚約の話を伝えられたことにショックを受けた。これが王子としての命令ならまだよかったのに親友として告げられたので受け入れられなくなってしまっている(子供か!)

 

 女性嫌いなのは色々原因がありそうなので、後でセバスチャンさん達に聞いてみましょうかね。詳しい事は書いてはいないけれど根は深そうですから。貴女が原因となっている女性の方とは違うと理解はしても、受け入れられるかは分からないのでこんな私とはやっていけないと思ったら私有責でかまわないので婚約破棄をしてもらって構わないなんて、重症だよね。


 前世の記憶を思い出す前なら、泣いて実家に帰ったかもしれませんねー。いくら限られた時間の中で書いたとしてももう少しこちらを思いやった書き方が出来なかったのかしら。今まで、家族以外に思いやってあげようという女性がいなかったのかもしれませんが、騎士様なら女性が嫌いでも守らないといけない場面も多々あったと思うのですがね。それに、白騎士様として人気があったマクシミリアン様が、多くの女性に囲まれているのを見たこともありましてよ。私も少しは素敵だなぁと思っておりましたのに、実は仕事だから仕方なくいやいや相手をしておられたのですね。


 まぁお飾りの妻決定という事で割り切って行きましょう。では最後に封筒の中に残ったものですわね。嫌がらせの品物とかだったらどうしましょう。まぁそこまでは子供ではないでしょうが...そう思って取り出してみると、とても綺麗な小瓶でしたの。カードも付いていました。こちらを先に見ていたら、手紙の感想も少し違ったものになったかもしれませんね。


 お飾りの妻改め、手紙に書いてあったように一緒に領地の事を考える同志と言う位置づけが良いかもしれません。そう思わせる程、役に立たない屑宝石を入れた小瓶は私にとっても意味あるものに思えたのでした。


 そして夕食の時に、マクシミリアン様が女性嫌いになったあれこれを聞いてみました。

 それは初等部の頃から始まったそうです。最初は『お友達になってください』という可愛いものから始まり、『皆と一緒のお友達じゃ嫌です。私は特別ですよね』とエスカレートして、それを断ると何人かの女生徒に囲まれて触られたり髪の毛を抜かれたりしたそうです。そんな時に同じクラスだった第一王子殿下に一緒に行動しようと言ってもらって被害は少なくなったのだとか。中等部に入って社交が始まると、学生だけではなくその家族との交流もあるので、休憩室に連れ込まれそうになったりもしたそうです。一番ひどかったのは部屋に入ると、破落戸らしき五~六人に囲まれ檻に閉じ込められそうになった事ですって。その頃には剣の鍛錬も進み手加減しなくていい相手なら負けることは無かったそうなので、返り討ちにして事なきを得たようです。依頼主の女性は自分に好意を持ってくれないならペットのように飼いならそうと思ったそうです。


 大変ですわ、それは女性嫌いいえ、女性恐怖症になるレベルですわね。でも本当にそんな人がいるのですね。既成事実を作ろうという人は前世にも居ましたしこちらにも一定数いるのでしょう。たとえ貴族でもそういう考えに陥る人がいるのですねー。でも檻に閉じ込めようとするなんて、病んでいますわね。そういう方はお話の中ではたまにいましたれど実際にいらっしゃるとは思いませんでした。


 


 

 

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