【1分弱で読める物語詩】「そこには誰がいるかしら」

kesuka_Yumeno

鉄の斧を選んだあなたへ

ひとしずくの涙が泉に落ちる。


そうねぇ、私はずっと誰かを待ってる泉の底の女神かもしれないね?




静かな水面。


深く澄んだ泉の底。


誰にも気づかれず、でも確かにそこにいる女神。


笑っているけど、目はまっすぐに「誰か」を見つめてる。


ずっと泉の底で、

息を潜めて、優しく微笑んで、

「気づいてくれるのを待ってる」んだよね。


それは泉から差し出された、さざ波みたいな祈りだろうか。


あなたが、落としたのは金の斧?

銀の斧?

そう、ただの鉄の斧をお望み?


私を望んでくれる人はいつ現れるのかしら?






あなたが、なりたかったのは、王様?

革命家?

それとも一人の人間。


私はね、

ずっと、ただの少女でいたかったの。

あの時。

父親殺しの王様でも、

国のための革命家でも、

少年にもなりたかったんじゃないの。


助けて欲しかったのかなぁ?

誰も助けてくれないから、私は私を助けた。

よくわからないよ。

自由に、なりたかっただけ。

でも、それには女の子はいらなかったから。

ここに置き去りにした。


でも。

何もかも失って。

何もかも手に入れたなら。

寂しくて、そこは寂しくて仕方なかった。


使えるならなんでもよかった。

望みを全て叶えてあげた。


じゃあ。

私が叶えたかった、ことってなんなの。


私は泉の底にいる。

今日もまた、誰かが斧を落とす。

金か銀かと問うたとき、皆、決まって正直に言う。

「鉄です」と。


……でも、誰も、私を望まない。

私でさえも。


私を沈めたのは、他でもない私よね?

孤独な王様?


だって、そうしないと生きていけない。

だから、死んであげたの。


なのに。

どうして、あなたが死にそうなの?


私達は——

縁の“そこ”にもいたいし、

底の“そこ”にもいたい。


でも。

本当はここではない、どこかにずっと——


“そこ”は、泉の“縁”か、それとも“底”か——

 答えは、読み終えたあなたの心の中に。


Fin?


Continue? Yes/No

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【1分弱で読める物語詩】「そこには誰がいるかしら」 kesuka_Yumeno @kesuka_Yumeno

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