第2話 つぐみ と 健太

 少しずつ打ち解けてきた。警戒心はもう無い。気さくなこの女性との時間が楽しい。


【二人で漕がないと駄目だからね。君、脚力自信ある?】


そう言われてしまうと、無いけど…


 とりあえず無難に普通と伝えておこう。もし俺が先にバテたらこの女性のこと褒めればいいし、無難に着陸するだろう。


 二人で沖に向かい全速力。早い、早過ぎる。この女性の脚力半端ない!!やはりバテるのは俺か、これは確定だな。


 水平線ってこんなにも綺麗だったのか。真夏の太陽が鮮やかさをさらに演出してくれている。


【ふー、やるじゃん!!元陸上部エースの私のペースについて来れるとはね。久々に全力で疲れちゃった…】


陸上部?先に言って欲しかった。


沖に出たけど、岸から結構離れてしまったが?


あれ?


寝ちゃった?


 何と言う警戒感の無さ。それはそれで寂しいもんだね。男として見てないのか…俺のこと。


 俺も眠くなって来た。暑いけど海風が気持ちいい。少し寝ようかな…




※ブーブー※



スマホ?



※ブーブー※



何だ?うるさいな。



※ブーブー※



着信か、せっかく気持ちよく寝ていたのに。



【はい…】



※【やっと出た、やっぱり寝てたか…】※



【いえ、ちょっと休憩で。疲れて海風が…】



※【海風?出張忘れて海行ってるのか?】※



【出張?いつですか?】



※【とにかく、出社してくれ!!代わりの社員に急遽来てもらったから。後で連絡する】※



意味が解らない、何故出張?



出張?



あっ!!しまったーーーーー!!!!!



なんて事を…今日だ!!何故忘れた?



夢だったのか?そりゃそうか。


あんなことある訳無いもんな。


これは、会社に行きづらいぞ…




【おはようございます…申し訳ございませんでした!!】



※【ははは🤣、出張忘れたんだって?部長、優しい人で良かったな。誰しも忘れることはあるが、出張忘れたのは始まって以来だ】※



 気まずい…呆れられた。怒られないだけ、何だかとても気まずい…



【はい、健太くん、目覚ましのコーヒー☕️】


社内では綺麗で優しくて、仕事が出来て、


とにかく大人気の つぐみ さんだ。


【ありがとうございます】


【どういたしまして】


怒られない職場…感謝だ。


 まぁ今のご時世怒ることが何かと問題になりがち…今回は俺が全て悪い。怒られても仕方ないが。



後で部長に謝罪の電話でも入れるか…はぁ…



定時に帰るのも気が引けるけど、


部長も多めに見てくれたし、帰るか。



【健太くん、ちょっと待って】


つぐみさんに、呼び止められた。


【はい、これ有給申請。今日分書いてね】


【いや、俺の遅刻だから…】


【いいんだってば!!ほら、書いてくれないと私が帰れない】


 つぐみさんのおかげで、有給を使ったことになった。有難い…そして、ごめんなさい。


ん?チャンスじゃないか?これ。


【夕飯ご馳走します!!】


つぐみさんは、びっくりして、


【何?びっくりしたー、どうしたの?急に】


 今回のこと事細かく説明するといい食事に。誘えたことに驚きだが、


何によせ、グッジョブ!!俺!!!



申し遅れましたが、俺の名は健太。


週末常に常に暇を持て余してる独身20歳。


高校卒業→専門学校→普通の会社に就職。


安月給で趣味は無い…


 学生時代に休みとなると海ばっかり行ってたことくらい。



 それはどうでもいいですね、憧れのつぐみさんを誘えたんだ。


で…何話すんだっけ?














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る