⑦:どうして来ないの。
周りの視線が、なんとなく気になってきた。
もうどれくらいもの長い間、ここにいるんだろう。
一度待ち合わせ場所を見下ろせるカフェに入っては明智くんからの連絡を待っていたけれど、14時になっても15時になっても一切の連絡が付かない。
もしかして、最初から全部「嘘」だったんだろうか。
時刻がなんと18時を回ってしまった頃、私はそこでようやくそのことに気が付いた。
明智くんは、私とは違って男女関係なく友達が多い。
それなのに、わざわざ他に友達のいない私に告白なんて、よくよく考えてみればおかしな話だったのかもしれない。
前にたまたま読んだ漫画で、女子高生がクラスの男の子に告白をされて、付き合うのをOKしたのはいいものの、あとからその告白が「罰ゲームだった」なんて話、あったっけ。
その時は「そんな告白、なんで最初からそんな簡単に信じちゃうんだろう」と思ったけど、まさか自分が同じ目に遭うなんて…。
……そろそろ寒くなってきたな。
明智くんのことが心配だけど、今日はこのまま帰っちゃおうかな。
私はそう思うと、ため息混じりにベンチから立ち上がった。
…────だけど、立ち上がった時だった。
「望月さん!」
「!」
不意に少し離れた場所から、聞き慣れた声が聞こえた気がした。
私がその声に辺りを見渡すと、数十メートルくらい離れたその先には、息切れをしながらこちらを見ている「明智くん」の姿があった。
「明智くん…!」
一瞬見間違いかとは思ったし、髪もぼさぼさになってしまっているが、よく見れば明智くんで間違いない。
どうして…。
まさか今頃明智くんがこんなところに現れてくれるなんて思ってもみなかった私は、驚いたように少し目を見開いて明智くんの前に駆け寄った。
「あの、明智くん、どうし」
「っ、ごめん!!!」
「!」
どうしたの?と聞こうとしたら、それを遮るように明智くんが勢いよく私に頭を下げた。
そんな明智くんに言葉を詰まらせていると、その間に明智くんが頭を下げたまま言う。
「ごめん、自分から誘っておいて待ち合わせ時間に現れなくて!すっごい不安だったでしょ!?もちろん、不安なんかにさせるつもりは無かったんだけど……いや、言い訳はしない。何時間も平気で待たせて、本当にごめん!!」
「…」
明智くんはそう言ったあと、なかなか顔を上げようとしない。
…明智くん、体が少し震えてる。
思わずいつもの調子で上から「こんなに待たせるなんてどういう神経してるの」なんて言いかけたが、今日は一応「デート」なので我慢した。
「……今日はもう来ないかと思ってたよ」
「…?」
「デートの約束も全部ウソで、私、明智くんに騙されたのかと思っちゃった」
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