③:今、何してますか。
明智くんは、男女限らず友達が多い。
校内で一人で過ごしているような姿を、私は今まで見たことがない。
いつも誰かしらと一緒にいて誰とでも仲良くなれるタイプだから、私にもたまに話しかけてくれるんだと思っていた。
でも…
「……ちがったんだ」
独りぼっちのお昼休み。
他にはだれもいない、屋上へ繋がる階段でご飯を食べている私は、昨日のこともあって明智くんのことを考えては独りそう呟いた。
実に慣れない困った展開になってしまった。
そもそも、明智くんは何の面白みもない私なんかのどこを好きだと思っているのだろう。
聞いてみたい気もするが、恥ずかしすぎてトーク画面ですら文字を打てそうもない。
私はため息混じりにスマホを閉じると、お弁当の卵焼きを口に含んだ。
「…はぁ」
どうせなら、昨日のあの告白された時に聞いておけばよかった。
明智くんは、こんな私なんかのどこを、いつからどんな風に好きなんだろうって。
素直な明智くんなら躊躇せずに答えてくれるかもしれないし……あ、でも、その前にそれを目の前で聴く私が恥ずかしすぎて死ぬ。
…明智くんは、返事はいつでもいいって言ったけど。
あんまり待たせるわけにもいかないかな。
私はそう思うと、再びスマホを手に取った。
しかし。
手に取った瞬間、明智くんから着信がかかってきた。
「!」
その突然の着信に、一瞬出ようかスルー使用可迷ったが、ここで出なければ後で電話をかけ直さなければならないことになってしまう。
告白をされる前の私ならそのくらい簡単にできたかもしれないが、告白をされた今では状況が違う。
よって、情けないことにスルーすることができなかった私は、少し迷った末に何ともぎこちない声でその着信に出た。
「…も、もしもし」
思わず呟くようにそう言いながら、明智くんの声が聞こえてくるのを待つ。
すると、そんなに間が空かないタイミングで明智くんの声が聞こえてきた。
「もしもし。…あー、と…今お話ししてもいいですか?」
「は、い。…どうぞ」
…普段話すときはお互い敬語なんて使わないクセに、明智くんも緊張しているのだろうか。
その緊張が、何だか私にも伝わってくるようで、余計に心臓がうるさくなる。
「今、何してますか?」
「えと…お弁当を、食べてます」
「どこ?空き教室とか?」
「いや、あの…西棟の、屋上に続く階段で」
「屋上の…あ、化学準備室の隣のとこね」
明智くんの言葉に、私も「そうよ」とやっと敬語をやめていつもの話し方に戻した。明智くんから電話なんて、今までは滅多にかかってこなかったのに。
私がそう思っていたら、明智くんが意を決したように言った。
「…俺も今からそっちに行っていい?」
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