【5話】#1〜#3 : 幽霊?そんなのいた??
●──#1
夜の学校は…なんかちょっと怖いよね。雰囲気が怖いって言うのかな?不気味だよねー。クラスメイトを止めるためとはいえ、なんかちょっとワクワクしている自分がいる。でもやっぱり少し悲しいかな。肝試しってやっぱり友人が居てこそ楽しいのにさ、一人で来たって怖いだけだよね、これ……
そんなことを呑気に考えながら校舎を歩きクラスメイトを探す。
……いやさ。現実逃避して目を背けてきたけどやっぱり、今のこの学校やっぱりおかしいよね!?夜の学校とはいえ空気が一変してるよ?
もうすぐ夏場だというのに凍えるような校舎の空気。背中を這うような気持ちの悪さ。時々、空が歪むように軋んでいる、…ような気がする。けして言葉には言い表せない奇妙な感覚、霊感0の俺でさえ分かる。この学校には異常が起きていると──。
そういえばどうして彼らはこの学校で肝試しをしようと思ったのだろうか?この世界が霊能バトル漫画の世界であるということが発覚したあの時から物語に
「はぁ、嫌だ嫌だ。関わりたくない、関わりたくないよ」
まじでめんどくさい。しかしそうと言ってられないのがこの現状。
「こうなったら…」
最速でクラスメイトを見つける!まずはこの部屋だ!俺は近くの空き教室の引き戸を勢いよく開けた。
「ひっ」
すると小さかったが、蚊の鳴くような声の悲鳴が確かに聞こえた気がした。
「誰かいかないか!」
俺はその声の人物に望みをかけて問いかけた。
「……もしかして、学級委員長?」
「やっぱり」
声の主は俺に肝試しの許可をしにきた名畑さんだった。さっそくクラスメイトの一人を見つけてしまったな流石幸運だけが取り柄の俺!……ん?まて、
「他の奴らはどうした?」
「あ、えっと…はぐれちゃって…」
……名畑さんの様子がおかしい。先程から俺が入ってきた方をチラチラと見ては何かに怯えているような…
「…そうか」
俺は入ってきた入口から周囲を見渡す。当然ながら誰もいない。
彼女が怯えているものとはなんだ?彼女は友人と肝試しをすると言っていた。学校の異変、そしてはぐれたクラスメイト……彼女は
「あの、学級委員長…」
「どうした」
「どうして学級委員長がここに?」
「……」
やっべ、考えてきてなかった!
馬鹿正直に”この世界で肝試しダメ絶対”って言えたらよかったのだが、彼女たちからしたら”なんで?”ってなるわ。ここは適当に…
「い、嫌な予感がしてだな…」
「そうなんですね!」
……すげぇチョロいなこの子。逆に心配なるわ素直すぎて!
「立てるか?」
「あ、うん」
俺は手を差し伸べ名畑さんを立ち上がらせる。
「学級委員長、これからどうするの?」
「…はぐれた君の友人たちを探すんだ」
「えっ!?」
俺がそういうと途端に名畑さんは青ざめる。
「で、でも、学校には、ば…化け物がいるんですよ?!」
「化け物?」
え?なにそれ怖い。
「学級委員長は…化け物を見てないんですか?」
「……いや、すまん。見てないな」
おそらく運良く鉢合わせなかったか、ただただ俺が霊感0だから見えてないだけかも知れない。彼女が嘘をついている可能性もあるが、この様子だとマジで居そうだな…
「お前たちは肝試しに来たんだろう?この学校に一体何が起きたんだ?」
「それは…」
「話しにくいだろうが、教えてくれ。歩きながら話そう」
「…分かりました」
俺ははぐれたクラスメイトを探しながら名畑さんから話を聞いた。
●──#2
名畑さんとその友人、笹木さんと高橋さんはこの学校に眠る怪談に興味が湧き肝試しをすることにしたそうだ。
──その怪談は『サトコの壺』というらしい。
その怪談に出てくる学校の倉庫の地下を本当に見つけてしまった名畑さんたちは、実際に地下の階段を降りて件の”壺”を発見し好奇心で固く閉ざされていた壺の蓋を開けてしまったようだ。
…この世界でなんてことをするんだ!怖いもの知らずにも程があるわ!と、世界の真実を知る俺は思った。というかこの学校に怪談あったんだね。オカルト掲示板で囁かれていたなんて気づかなかったよ。
名畑さんの話は続き──
「壺を開けたら黒いモヤがかかった人型が鎌を持って襲いかかってきたんです!ごめんなさいと謝罪を言いながら…!」
おお、凄い感情的だな名畑さん。それにしても黒いモヤがかかった鎌を持った化け物か、…なんだそれ普通にゲロ怖いじゃないか!夜にトイレ行けなくなったらどうしてくれるんだよ!
「……私たちは必死で逃げました。校門がどうしてか閉じられていたのでやむを得ず校舎に逃げ込みましたが、その間にはぐれてしまい私は…」
え、名畑さん??その説明だと校舎に入り込んでんじゃね?え、鎌持った化け物が学校を徘徊してるってこと?何それ俺普通に死ぬじゃんね。死亡フラグ立っちゃってるんじゃないの?
「とりあえず事情は分かりました」
「信じてくれるんですか?」
「とりあえずは」
俺は化け物について考える。
普通に考えればその化け物の正体はサトコさんなのかな?壺から出てきたって言ってたし。でも鎌持ってたんでしょ?サトコさんがいじめっ子であるのなら殺したいじめられっ子が鎌もってないとおかしくね?
あと、この話には欠陥がある。いじめられっ子がいじめっ子を殺した後のことが分からないのだ。そしてその話が本当に起きたことならニュースにも乗る大事件だろう。しかしこの学校にそんな事件があるとは在校生である俺も知らなかったわけだし情報元はなんといってもネットの掲示板だ。あからさまに事件が学校側によって隠されているとしか思えない。怪談の壺さえ本当にあったのだから。
しかし一般人である俺がいくら考えても真相は闇のまま、知りたいとさえ思わない。今、俺がすることといえば残りのクラスメイトを探しだし学校を脱出すること。あとは原作主人公たちが何とかしてくれるはずだ。
「笹木ちゃん、高橋くん…」
すると隣からボソッと聞こえた。
「心配か?」
「うん…私のせいで巻き込んじゃった」
……何この空気、重いわぁ…
「謝ればいいだけだろ」
「許してくれるかな…」
「その程度の友達なのか?」
「ううん。みんないい人たちだよ」
「ならきっと大丈夫だ」
在り来りだが、俺みたいな凡人にはこれが精一杯なんだ。気の利いたセリフなんて主人公がするものだからモブにそれを求めるなよ…。
「学級委員長…ありがとう」
……まぁ、ぼっちなりに頑張った方だな。
●──#3
…学級委員長は、なんというか…不思議な人だ。真面目にみえて器が大きいし、厳しそうにみえて優しい。
私が話したこと。事の発端、怪談を信じた結果、起こった地獄。普通ならまずそんなことは信じない。でも学級委員長は信じてくれた。
おそらく学級委員長は、この赤い空が見えていない。夜なのに暗くなく、異常なまでに赤い空はおぞましい程に血の色に染まっていた。そんな中で、学級委員長はスマホのライトで廊下を照らしながら私の友人を探している。
学級委員長には関係ない話だろうに駆けつけてくれた。多分本当はクラスメイト思いのいい人なのだろう。じゃあ何故、彼の周りには人がいないのだろうか?
私は学級委員長の横顔をこっそり見る。じっくり見たことはなかったけれど、意外にも顔は整っている。まるで
顔が熱くなる。……学級委員長って彼女いるのかな?
(──ッ!?いやいや私ったら何を考えて!)
きっとこの状況に緊張してるから変なことを考えてしまったんだ。私は顔を横にブンブンと降ってこの思考を切った。
すると学級委員長は足を止めた。ここは…美術室?
学級委員長は美術室の引き戸に手をかけ、一気に開けた。
「ば、化け物?!」
「く、くるなぁ!!」
突然、絵の具やらキャンバスやらが私たちに向かって投げつけられた。しかしその全てが学級委員長には当たらなかった。私は何個か当たって痛かったけど…
でも声が聞こえた。きっと笹木ちゃんと高橋くんだ!
「みんな!無事なの!?」
「そ、その声は名畑?」
私は2人の声がする方に向かった。笹木ちゃんと高橋くんは教卓の後ろに隠れていた。2人とも怪我はなかった。私は2人の無事を確認して一気に緊張の糸が途切れた。その場でへたりこみ視界が涙で溢れてくる。
「よかったぁ!生きてたぁ!ごめん、2人とも。私のせいで…こんな…!」
「いや名畑のせいじゃねぇよ。俺があの蓋取っちまったのが悪いんだ」
「そうだよー、名畑は悪くない。全部高橋が悪ーい!」
「おい!」
やっぱり皆は優しいな…、学級委員長の言う通りだった。──ん?学級委員長?
「おい、何急に3人の世界に入ってんだ」
「あー、学級委員長いたんだった…」
「「え????」」
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詰め込んだら結構長くなりました。本当は今回で終わらせるつもりだったんですが次回に持ち越します。
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