お隣のツンデレ厨二美少女は、俺の『一番』を目指したい

空依明希

第1話 瞬間、心重なる

 入学式直後の一年生教室、そこは戦場である。


 担任の藍上あいうえ先生曰く、『五十音順で席を決めるのは職員の怠慢であり、許されざる悪行』という主張から始まった席替えで、俺……直枝なおえ佳希よしきは窓側一番後ろという主人公席を勝ち取った。


 いや、負け取ったのかもしれない。


 主人公席は角だ。なので周りの席は当然少ない。前、右隣、右斜め前の3つだけ。


 この教室に知り合いは女の子が1人。ひとり暮らしをしているマンションで隣に住んでいる若松さんだけだ。


 だから、男友達を作りたい。そしてそれは近い席の人から――そう思っていたのだけれど。


「……あれ? これ詰んでね?」


 右席は女子なので、男子は前に居る1人のみ。そして、その男は違う席の知り合いのところで『WAYーWAY』騒いでる。共通の話題は、ちょっとなさそうだ。


 俺は友達作りとか苦手だ。中学時代も人に合わせてばかりで、居ても居なくても変わらないヤツという印象だったはずだし、そんな環境を変えたくてこの街に引っ越してきた。


 心からの〝繋がり〟が欲しい……そう思っていたけれど、これじゃ変わらないな。


 ため息をついても、胸の重さが抜けない。そんな時だった――



「まるで混沌カオスね……」



 隣で呟く声が聞こえた。


「……え?」


 カオスって言った? そんなワードを独り言で口にすることある?


 隣を見ると、派手な見た目の美少女が不機嫌そうに頬杖をついていた。


 ベージュの長い髪にはウェーブがかかり、狐を連想するツリ目の瞳。制服は皺ひとつなく、かっちりと着こなしている。


 目立つけど、真面目――そんな冷たい雰囲気を持った少女に目が吸い寄せられる。


「……なに? ジロジロ見ないでほしいんだけど」


 鋭い視線と、冷たい声。え、初対面のクラスメイトをそんな風に見る? 怖いんだけど。


 見てたのは悪かったけど……一瞬じゃん。


「あ……えっと、俺は直枝佳希。よろしく」

武岩たけいわ奈那なな


 ぶっきら棒な物言いだけど、応えてはくれる。


 会話が成立するなら良かった。無視されたらどうしようかと思った……。


「さっきなんか言った? 声が聞こえてきたような……」

「忘れなさい」

「あ、はい」


 会話終了。どうしよう、いろいろ振る話題は考えていたのに何も出てこない。この子話しかけるなオーラ凄くない……?


 救いを求めるように、遠くの席に居る若松さんを見た。隣人の彼女は見た目は清楚美少女。人当たり抜群で明るい子だ。


 話しかけている男の子に『そうなの! かっこいい! イケメンが息してる!』なんて良く分からない返事をしていた。


 名も知らぬ男子よ、若松さんは中身のあることなにも言ってないぞ? 鼻伸ばしてる場合じゃないって。


「……ああいう子がタイプなんだ?」


 若松さんをボーっと眺めていたことに気が付いたのか、武岩さんが話しかけてきた。


 すごいツンとしてるから話したくないのかと思ったけど……そうじゃないのかな?


「あ――いや、あの子は知り合いだから。今日も元気だなと思って」

「そうなの。可愛い子ね――アンタには勿体ないって思っちゃう」


 いきなり棘をぶっ刺してくるスタイル。けれど、そんなことで怒って空気を悪くしないのが俺なのよ……。


「初めて会った時は衝撃を受けたね。可愛すぎて」


 初対面――いや、再会したのは昨日だけど。


「ねぇ……この教室、息苦しいと思わない?」


 武岩さんがため息交じりに教室を見渡すから、つられて俺も眺めてみる。


 愛想笑いをしながら話す女の子、そわそわしながら周りを見渡す俺みたいなボッチ。若松さんにデレデレしている男達。


 誰もが皆、すがるように、誰かを求めていた。


「……確かに、みんな自然体とは程遠い……混沌カオスだね」


 俺の言葉に武岩さんに目を丸くする。なにその同士を見つけたみたいな顔。


「みんな孤独になれていないのね。群れてる方が安心するのかしら……」


 え、そんな派手めなメイクして『ぱねぇ~★』みたいな話し方しそうなのに、キャラ設定それで大丈夫?? 


 カースト上位女子に仲間だと思って話しかけられたら、どうするの??


 え、『ぱねぇ~★』は死語だって? ……ふっ。


 流行なんてそんなものだよ。それつまり――


「……全ては移り変わる。人の在り方も、また同じか」

「……ッ!!」


 隣で武岩さんが息を呑んだ。


「……あっ」


 やばい、うっかり思考が漏れた。しかも『ぱねぇ~★』くらいの厨二発言。


 これ絶対引かれてるよね……初日から隣の席の子に嫌われるとかしんどいんだが。


「……今のは、なんでも……!」

「――それはつまり、群れの形態も変わるということかしら」


 食い気味な発言。期待の籠もった瞳。あれ、これ返さないといけない系?


 任せろ。人に合わせることには自信がある――俺の仮面ペルソナを見せてやるよ。

 


「――そう。人は生きる為に群れてきた。しかし、現代社会は群れなければ命に関わる何かが起こるということもない。強く在れ――その時、孤独は孤高に変わるのだ」


 ……方向性はこれであってる? 俺は何を言ってる? 自分でも意味が分からない。



 なんか武岩さん鼻息荒くない? 大丈夫?


 


「……私達、群れを持たない孤高なる者オンリーロンリーグローリー同士――少しは話せそうね」


 そう言って、彼女はにやりと笑った。


 狼というよりは狐に似た目は、楽しそうに笑っている。


 ……突っ込みどころが多すぎて分からないけど、とりあえず――


「圧倒的強者は集団に決して劣らぬ――しかし、強者同士が手を結んではいけないという道理もあるまい」


 某ロボットアニメのゲン〇ウ司令官の如く。机の上で両手を組み、その上に顎を乗せながら語ってみる……が。


 武岩さんは冷たい目で俺を見ていた。


「はぁ? どういう顔してそんな寒いこと言ってんの? あんた馬鹿なの?」

「お前に言われたくねぇよ!!」



 笑わない厨二病ツンツン娘、武岩さんと友達になった。



『おめでとう』俺。

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