観測ログ40:落と撃

次の日、ヴォイドは《落星棍》改め《星降る杖》の本格的な実験を行うため、適当な討伐依頼を受け、王都外れの森へと足を運んでいた。


依頼内容はゴブリンの討伐。

火や水の魔法を撃ち出して対処すること自体は容易だったが、連戦になるにつれてMPの消費が無視できないことが分かってきた。


――このままでは効率が悪い。

もっとMPを抑えられる方法はないか。


思考の末、ヴォイドはライフル状に変化させた星降る杖の弾倉に相当する部分にブラックホールを接続するイメージを組み上げ、周囲に転がっていた石を放り込んだ。


ブラックホール内部で弾丸として使用することを前提に観測し、形状を固定する。

生成されたのは、細長い円錐状の弾だった。


それを撃ち出す。


――成功だ。


石の弾は、ゴブリンの胸元に直撃した。

鈍い音と共に、体が大きく仰け反る。

骨は折れただろうが、死んではいないだろう。


「……なるほど。

即死はさせられないが威力は充分だな。」


物理弾を射出する方式であれば、魔法を直接放つよりも明らかにMP消費が少ない。

これなら長期戦にも耐えられる。


だが、ここでヴォイドは一つの疑問を抱いた。


――素材を変えたらどうなる?


次に彼は土から鉄を抽出し、同様に弾へと加工して射出した。

石弾と比べ、発射時の感触はわずかに軽い。

消費MPも少なく感じられる一方、着弾時の破壊力は明らかに上だった。


命中した瞬間、乾いた衝撃音が響く。


ゴブリンの体は、ほとんど抵抗を見せずに貫かれ、

そのまま地面に崩れ落ちた。


ここで、単純な比例関係ではないことに気づく。


消費MPが多ければ威力が上がる、というわけではない。

素材によって、そもそも「撃ちやすさ」と「威力効率」が異なっている。


この差は、おそらく弾体の導魔性――魔力の通りやすさによるものだろう。

魔力をよく通す素材ほど、発射時の抵抗が少なく、結果として少ないMPで高い威力を引き出せる。


つまり、星降る杖において重要なのは、

単なる魔力の総量ではなく、

「どの素材に、どの形で、どれだけ魔力を流すか」だ。



◆ ◆ ◆



「……よし。

星降る杖の銃形態は――《撃星銃》(げきせいじゅう)にしよう」


名前を口にした瞬間、

手にした銃が、ほんの一瞬だけ微かに震えた……ような気がした。


気のせいかもしれない。

だが、ヴォイドはそのまま構え直す。


周囲の空気が、わずかに揺らぐ。


そして、それきり何も起こらなかった。


――撃星銃。


ただ静かに、この世界に”確定“した。


「……さて」


ヴォイドは思考を切り替える。


もっと導魔性の高い素材を使えばどうなるだろう。

鉄よりも魔力を通す金属。

例えば銀、あるいはミスリル。


試してみたい気持ちはあるが、

さすがにその辺に転がっているものではない。


「今はまだ無理だな」


そう呟き、撃星銃をなでる。


その後はブラックホール内部に弾を量産し、

実験と称して森で見つけたゴブリンを狩り続けた。


成果は上々。

動作は安定し、消費MPも想定内。


機嫌よく森を後にしたヴォイドは、

そのままクランハウスへと戻っていった。

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