選ばれ16人
――熱狂の渦が、学園全土を包み込む。
観客席から見下ろす巨大アリーナ。その中央には、四方を囲むように設けられたバトルステージ。上空には魔力投影された巨大なスクリーン。煌びやかな演出が空を照らし、興奮の幕が上がった。
「さあぁあああ!来ました来ました来ましたァッ!!!」
魔導マイクを使った大音量の実況が、全校生徒に響き渡る。
「ここオルディナ学園にて、年に一度の大舞台――《対抗戦(レガリア・オーダー)》、いよいよ本戦開幕ですッ!!」
叫んでいるのは、3年・鳴神 雄吾(なるかみ・ゆうご)。普段は声のコードを生かして演習や大会で実況を務める名物男だ。
「さあ、熱き予選を勝ち抜いた16名が、いまここに集結しています! 栄光を掴むのは誰か!? 王者の名を継ぐのは、誰だァッ!!?」
ステージの周囲には、すでに選手たちが一列に整列していた。
1年、2年、そして3年――いずれも選び抜かれた実力者たち。
その中には、誰もが知る伝説級の生徒たちの姿もあった。
「それでは早速、組み合わせを発表していきましょうッ!」
スクリーンに映し出される、トーナメントの組み合わせ。鳴神の声が、熱を帯びる。
⸻
「第1試合! 学園最強の看板カード!!」
3
「これは……やばいッ!いきなりッ!!まさかの……まさかのッ!!!」
鳴神の声が裏返る。
「四天王の筆頭、《学園最強》の異名を持つ無敗の男・獅堂 獅音!
対するは、
昨年の覇者にあと一歩と迫った2年の頂点・久世 悠斗!!」
「栄光継承世代 vs 新時代の象徴!これはもう、決勝カードじゃねぇのかぁぁッ!?」
観客席が地鳴りのように揺れる。悲鳴、喝采、どよめき――すべてが混じり合う。
⸻
「第2試合ッ!」
1
「来ましたよ……!対抗戦最大の“伏兵”とも言われる1年生・結城燐!」
「そしてその対面に立ちはだかるのは、優雅なる舞姫――白兎 凛音!」
「ダークホース vs 女王気質の栄光継承世代!まさに正面衝突ッ!!」
⸻
「第3試合ッ!」
2
「これは堅実vs強硬!共に2年のトップ同士!実力伯仲の好カード!!」
⸻
「第4試合ッ!」
1
「うおおおぉい!? まさかの姉妹対決ーーーッ!!?」
「氷の名家・氷室家が、まさか本戦で真っ向勝負とは……!一歩も引けねぇ一戦ッ!」
⸻
「第5試合ッ!」
3
「こちらも見逃せないッ! 栄光継承世代同士の激突ですッ!」
「闇より生まれし衝情の鴉 vs 重鋼を纏う刃の猛者!これは……荒れるぞッ!!」
⸻
「第6試合ッ!」
1
「1年の猛獣vs2年の策士!未知数すぎるこの試合……一発逆転があるかもしれませんッ!」
⸻
「第7試合ッ!」
2
「物体を操る2年の謎めいた女・緋月に挑むは、
冷静沈着な3年生・颯真ッ!」
⸻
「そして第8試合ッ!」
3
「うおおおッ!ラストもまたとんでもないカードだァ!!」
「四天王のひとり、《心で全てを斬る》と称される彼女に挑むは、“力の象徴”こと嵐山鉄牙ッ!」
「剣vs 拳――これは攻めのバトル必至だあああああッ!!」
⸻
スクリーンに並ぶ16人の名前。
会場の熱気が、さらに一段階、加速する。
「さあ!出揃いました!今年の“選ばれし16人”たちッ!」
「……見てください、この顔ぶれを!」
鳴神の声が少し低くなり、重みを帯びる。
「本戦に名を連ねた3年生は、なんと全員が――」
『栄光継承世代(グローリー・ヘリテージ)』。
「その血筋、伝説、あるいは過去の功績……“王道”を名に冠する者たちだッ!!」
画面に映し出されるのは――
獅堂 獅音。
神代 紗羅。
白兎 凛音。
氷室 澪華。
久遠 銀牙。
一条 颯真。
烏羽 柩。
嵐山 鉄牙。
誰もが名を聞けば分かる存在。その風格が、立っているだけで伝わってくる。
「やはり今年も――この“世代”の年なのか……!?」
鳴神が言い切る前に、一拍おいてから、続ける。
「いや――違う!!今年は……違うッ!!!」
「その王道に、牙を剥いた若き獣たちがいるッ!!」
スクリーンに新たな名前が浮かぶ。
結城 燐。
久世 悠斗。
雷堂 虎。
綾辻 柊真。
氷室 紅。
榊 晶牙。
御門 宙。
鏡原 緋月。
「強敵揃いの上級生をなぎ倒し、血を流し、意地を貫いて這い上がった――」
「新世代! 新生・1、2年生たちが、今この舞台に立っているッ!!」
「誰が王座を掴むのか!? 新たな時代を築くのは誰なのかッ!?」
⸻
「そして特に注目すべきは――やはりこの3人……!」
「獅堂 獅音、久世 悠斗、神代 紗羅。」
「実力、カリスマ、影響力……全てを兼ね備えた“特級存在”。」
「彼らは、学園最強と讃えられ――《四天王》と呼ばれているッ!!」
鳴神の声が一瞬、震えを孕む。
「その3人のうちの2人が……この初戦で、ぶつかるんだ……!」
トーナメント表が出揃い、歓声は最高潮に達する。
その渦の中――。
誰よりも静かに、ただ前だけを見据える男がいた。
金色の瞳、たてがみのような髪。
堂々と佇むその姿は、まさに王の風格を纏っていた。
「さあ――ッ!!!」
「第1試合、獅堂 獅音 vs 久世 悠斗、いよいよ……開幕ですッ!!!」
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喧騒の中。
ステージに向かって歩き出すその背に、どこか影が差していた。
久世 悠斗。
冷静沈着、隙のない使い手。
最速最強――そう呼ばれる自分にとって、この場はただの通過点になるはずだった。
けれど、足が自然と止まりかける。
息が、少しだけ詰まる。
「……この景色、あの時と同じだ。」
入学初日。
特進生だけが集められた、選抜演習。
自分は誰よりも速く、誰よりも多く敵を倒し、満場一致で“学年トップ”と認められていた。
その時、現れたのが――
獅堂 獅音。
「最強ってのは、そう簡単じゃねぇよ。」
そう言って、自分の目の前に立ちはだかり、
自信も誇りも、打ち砕いた。
――“敗北”。
初めてそう思わせた、唯一の相手。
あれから1年。
積み重ねてきた研鑽。
悔しさを燃やすように、振るった蹴り。
あの日の自分とは、もう違う。
「……今日、勝つ。あんたに勝って、俺は……」
拳を握りしめる。震えはない。
視線を前に向けて、静かに歩き出す。
再び、あの獅子と相まみえるために。
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