第一話  アイツを

「健ちゃ…結城先生!俺、アイツを、浩人を連れ戻してきます!」

亜紀斗は真っ直ぐ、健二を見つめ、真剣に言った

「でも、矢部…アイツが、如月が自分から行ってたら…」

「浩人はそんなことしねーだろっ!」

亜紀斗が怒鳴るので、健二は吃驚した

健二ははぁと溜息を吐いた

「どうなっても知らないからな」

少し寂しそうに言う

「大丈夫っすよ!俺、天才だし?」

ハハっと笑って言った

そして、亜紀斗は健二を見上げると、泣いていた

「えっ⁉︎どうして…」

亜紀斗が問いかけると健二は

「大事な、教え子が、旅立つのはぁぁぁ!」

と号泣していた

亜紀斗はどうしていいのか分からず、戸惑っていると、すぐに泣き止んだ

(結城先生、情緒不安定か…?)

「兎に角!無事に帰ってこいよ!何かあったら言えよ!すぐ駆けつけるからな!死んだも助けに行く!愛してるぞぉぉぉ!俺はお前の親友だ!歳の差なんて関係ないっ!」

すごく心配しているのは伝わるが、大袈裟だ

しかも話の路線がズレている

「わかった、わかったからって!」

亜紀斗がため息を吐いて見上げると、健二は真剣な表情をしていた

「もしかしたら、如月じゃなく、"アイツ"が居るかもしれない。何があるかも分からない。それでもいいのか」

亜紀斗はフッと微笑み、口を開いた

「上等だ」

亜紀斗は息を吸い込み、叫んだ

「俺は矢部亜紀斗!この世で最強になってやる!」

その様子を見た健二は安心したように笑った

「行ってこい!」

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